第547話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――二番―――」


 二番打者が打席に立つ。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷く。

 打者と陸雄がそれぞれ構える。


(雨の野球は初めてだ―――振り始めの前に抑えねぇと!)


 セットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 真ん中にボールが飛んでいく。

 打者がスイングする。

 打者手前でボールが右に曲がりながら落ちる。


(マズい! リクオの球威も制球も落ち始めている―――打者たちはもう目が慣れいる)


 ハインの不安は金属音でかき消される。

 ボールがバットの軸に当たり―――レフト方向に飛んでいく。

 レフトの錦が前進してボールを追う。

 打者がバットを捨てて、走る。

 切間が二塁へ向かう。

 錦がボールが落ちる前にジャンピングキャッチで捕球する。


「―――アウト!」


 審判が宣言する。

 切間が一塁に戻っていく。

 錦が送球する。

 切間が一塁を踏み上げる。

 星川が捕球する。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 星川が陸雄に送球する。


(錦先輩の援護に助けられたな―――次は三岳か―――)


 陸雄がネクストバッターサークルを見る。

 三岳が打席に移動する。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――三番―――レフト―――三岳君―――」


 三岳が左打席に立つ。


(切間が出塁している以上―――ここで俺と次の佐伯が点を取らねばな―――最悪五番打者の先輩で1点取り返したいところだ)


 三岳が構える。


(ミタケには外角のスライダーとカーブは危険だ―――悔しいが球威が落ちた今のリクオではその変化球では制球も含めて厳しい―――ここは―――)


 ハインがサインを送る。

 頷いた陸雄が構える。

 そのままセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。


「そのリードは詠んでいた―――!」


 三岳がスイングする。

 打者手前でボールが一個分落ちる。

 バットの軸にボールが当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。

 切間が二塁へ走る。

 ボールはセンター方向に飛んでいく。

 バットを捨てた三岳が一塁に走っていく―――。

 センターの灰田が後方に走る。

 外野フェンスにボールがぶつかり、地面に落ちる。

 灰田がボールを捕り、送球する。

 切間が余裕を持って、二塁を踏む。

 セカンドの九衛が捕球体制に入る。

 ボールがグローブにボールが入る時―――。

 三岳も一塁を踏む。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 セカンドの九衛がそのまま陸雄に送球する。

 陸雄が捕球して、息を整える。


「落ち着け。落ち着くんだ―――まずはそれからだ―――!」


 陸雄が暗示のようにそう言って、打席を見る。




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