第536話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――五番―――」


 五番打者が打席に立つ。


(どうするハイン? かなりマズい流れだぜ?)


 陸雄が構える。


(リクオ―――調子が戻っているとは言っても相手も目が慣れ始めている―――ここは―――)


 ハインがサインを出す。

 陸雄が頷く。

 打者が構えるとセットポジションで投げ込む。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。

 打者がタイミングを合わせて、スイングする。

 打者手前でボールが一個分落ちる。

 打者がバットの下のボールを目で追う。

 そのままハインのミットにボールが入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに118キロの球速が表示される

 ハインが返球する。


(よし! チェンジアップがここに来て効いたな。流石ハインだぜ!」


 陸雄がホッとして、捕球する。

 打者がバットを戻して、構える。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷き、投球モーションに入る。

 打者がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 内角低めにボールが飛んでいく。


(早い! スライダー? いや違う!)


 打者がタイミングを合わせて、スイングする。

 バットの軸にボールが当たる。 


(―――ストレートだ!)


 カキンッと言う金属音と共にボールが低く飛ぶ。

 ボールは一、二塁間を抜ける。

 三塁の三岳がホームベースに走る。

 センターの灰田が横に走る。

 ライトとファーストの中間にボールがバウンドする。

 打者が既にバットを捨てて、一塁に走る。

 佐拍も二塁に走っていく。

 灰田がボールに追いつき―――グローブですくい上げる。

 そのまま一塁に送球する。

 佐伯が二塁を踏む。

 そして―――。


「追加点を頂くよ―――」


 そう言って、三岳がホームベースを踏む。

 香月高校に9点目が入る。

 星川がボールを捕球する前に―――。

 打者が一塁を蹴り上げる。


「―――セーフ!」


 捕球後に塁審が宣言する。

 三塁側スタンドから歓声が上がる。

 ノーアウトでランナーが一、二塁で3点差―――。

 星川が陸雄にかける言葉が見つからずに送球する。

 陸雄が捕球して、背中を向ける。





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