第491話


 ハインが考え込む。


(打たせて追い込ませ、調子を無理やりにでも戻そうとしたが、そうはいかないか―――)


 陸雄が捕球して、キャッチャーボックスを見る。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――六番―――」


 六番打者が打席に立つ。

 監督のサインを見て、打者が構える。

 二塁ランナーがリードを少しとる。

 一塁の三岳が陸雄を見る。


(二球ストレート―――打たせる配球のようだが、ピッチャーが不調なのか?)


 そう思い、僅かにリードを取る。

 ハインがサインを送る。

 陸雄がそのサインに驚き、その後に頷く。

 そして投球モーションに入る。

 打者がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 真ん中高めにボールが飛んでいく。

 六番打者がスイングする。


(変化しない。ストレートなら―――振る!)


 バットの軸にボールが当たる。

 カキンッと言う金属音と共にボールが飛ぶ。

 ピッチャー上空にボールが飛んでいく。

 センターの灰田が走る。

 ランナー達が走る。

 二塁ランナーが三塁に向かい―――三岳は二塁に走る。

 打者もバットを捨てて、一塁に走る。

 灰田が後方に走り、ボールの位置まで予測する。

 ハインが立ち上がる。


(やはり中途半端な速度のストレートだ。リクオの調子は今日は本当に悪い―――不味い流れだな)


 二塁ランナーが三塁を蹴り上げる。

 三岳が二塁を踏む。

 一塁に打者が着く。

 そのまま三塁ランナーがホームベースに向かう。


「2点目を取りに行く気ですか!?」


 ファーストの星川が声を出す。

 センターの灰田が外野フェンスよりやや手前の落ちるボールを捕りに行く。


「―――させっかよ!」


 灰田がグローブを上げて、ボールをキャッチする。

 三塁ランナーがホームベースを踏む前にアウトとなる。


「―――アウト! チェンジ!」


 審判が宣言する。

 ハインがベンチに戻る。


「次の守備で下位打線相手にリクオがいつもの取り戻すしか手はないか―――」


 灰田がそのままセカンドの九衛に中継する。

 九衛が捕球して、陸雄に送球する。


「チェリー! そんな気の抜けた投球じゃ五回戦負けだぞ!」


「わーてるよ。援護ありがとうな」


 陸雄が捕球して、言葉を返す。

 そのままマウンドにボールを置く。

 メンバー達がベンチに戻っていく。

 一回裏が終わり―――3対1の点差―――。

 大森高校の優勢で終わる。





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