弱小野球部の名誉挽回

第490話

　ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

「香月高校―――五番―――」

　五番打者が打席に立つ。

　陸雄が構える。

　打者も監督のサインを見て、構える。

(クリンナップ打線とはいえ、陸雄の後半戦の為にも―――ここは基本から―――)

　ハインがサインを送る。

　陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

　打者がジッと観察する。

　指先からボールが離れる。

　真ん中低めにボールが飛んでいく。

　打者がスイングする。

　ボールが変化せずにバットの軸上に当たる。

「―――いっ！」

　陸雄がギクッとする。

　カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。

　三塁側を越えて、白線の外に切れていく。

　スタンドにボールが入る。

　―――ファールだった。

　ウグイス嬢のアナウンスが流れる。

「―――ご来場の皆様はファールボールにご注意ください―――」

「やっぱ真ん中下とは言え、中央のストレートはヒヤヒヤするぜ」

　マウンドの陸雄がそう言って。呼吸を整える。

　審判から新しいボールをハインが貰う。

(まだ球速が足りない。速球を投ろとリードはしたが―――)

　ハインが陸雄に送球する。

　陸雄がキャッチすする。

　打者が構え直す。

(このイニングではまだ厳しいか―――なら、ここは―――)

　ハインが座り込み―――サインを送る。

　陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

　打者がジッと見る。

　指先からボールが離れる。

　内角高めにボールが飛んでいく。

　打者がタイミングを合わせて、スイングする。

　打者手前でボールが変化せずにバットの軸にボールが当たる。

「やっぱ打たれたか！」

　陸雄が声を漏らす。

　カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。

　打球はレフト方向に飛んでいく。

　錦が走り、ボールを捕りに行く。

　外野フェンスの近くで錦がボールを捕球する。

「―――アウト！」

　審判が宣言する。

　錦がショートの紫崎に中継する。

　陸雄がホッとする。

「や、やっとツーアウト。二球ともストレートだもんな。ハインは何考えているんだ」

　その間に捕球した紫崎が陸雄に送球する。