第485話
そのまま各校がベンチに戻っていく。
マウンドに置かれた白球だけが残るグラウンドで一回表が終わる。
3対0で大森高校の優勢のまま攻撃が終わる。
※
大森高校のメンバーが守備位置に着き―――。
一回裏が始まる。
陸雄がマウンドでロージンバックを握って、地面に置く。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「一回の裏―――香月高校の攻撃です。一番―――ピッチャー、切間君―――」
切間が右打席に立つ。
(投手で一番打者かよ。こいつも二刀流―――九衛がこの前言った俺の上位互換って言葉がそのまま当てはまるなぁ。来年はこの打席に入らねぇとな)
陸雄が構える。
ハインがサインを送る。
切間が構える。
陸雄が頷いて、セットポジションに入る。
(この猿。俺と同じ投球モーションで得意球もデータによれば似ているんだったな。俺の劣化コピーかよ―――鼻に着くやつだ)
切間がジッと観察する。
指先からボールが離れる。
外角低めにボールが飛んでいく。
切間がタイミングを合わせて、スイングする。
バットの軸にボールが当たる。
「俺の全力ストレートを当てやがった!」
陸雄が声を漏らす。
カキンッと言う金属音と共にボールが一、二塁間を抜ける。
バットを捨てて、切間が一塁に走る。
センターの灰田がライト方向に走る。
ライトの駒島はボケッと狸の置物のように突っ立っている。
灰田が舌打ちして、バウンドするボールをグローブで拾う。
切間が一塁を蹴り上げる。
灰田がファーストの星川に送球する。
「っち! 長野のキモデブの穴が向こうから筒抜けなのはボール回しの時に解ってたけどよ。きつくなってきたな」
灰田がそう言って、駒島を睨む。
駒島は動揺して、発汗していた。
星川がボールを捕球する。
「―――セーフ!」
塁審が宣言する。
「陸雄君。まだ3点リードあるんだし、一回が始まったばかりです。落ち着いて行きましょう!」
星川がそう言って、送球する。
陸雄が捕球して―――頷く。
(リクオ―――初球から力を入れすぎだ。まずは選手の攻略よりも陸雄の今日の調子を見るべきか―――)
ハインが冷静に考え、ミットを構える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます