第486話


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「香月高校―――二番―――」


 二番打者が打席に立つ。

 陸雄が構える。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、セットポジションで投げ込む。

 二番打者がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 内角高めにボールが飛んでいく。

 打者が見送る。

 打者手前でボールが手元で遅く落ちる。

 ハインが捕球する。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに116キロの球速が表示される。


(リクオの今日のチェンジアップはいまいち調子が悪いな―――制球力が少し危うい、か―――)


 ハインが返球する。

 陸雄がキャッチャして、構える。

 二番打者が構え直す。


(なら、緩急込みの直球から組み立てて、調子を少しでも上げるしかないか―――)


 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

 打者がジッと観察する。

 一塁にいる切間がリードを取っていく。

 その間に―――指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。


(さっきと同じで高い! 速さから見てストレート、か?)


 そう直感した打者がタイミングを合わせて、スイングする。

 バットの軸にボールが当たる。


「やばっ! ちょっと遅めだったのが、不味ったか!」


 陸雄が声を漏らす。

 カキンッと言う金属音と共にボールが二遊間をやや高めで抜ける。


「チェリーのアホ! ストレート打たれやがって!」


 ボールに届かなかった九衛が陸雄を睨む。

 センターの灰田が前進する。

 その間に一塁の切間と二番打者が各塁に走る。

 走る灰田の手前でボールが落ちる。

 フェアになり、そのまま灰田がグローブをボールに向ける。

 余裕を持って、切間が二塁を踏む。

 灰田が捕球して、一塁に送球する。

 星川が塁を踏んで、捕球体制に入る。

 打者が一塁を蹴り上げた時―――。

 星川のグローブにボールが入る。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 三塁側ベンチとスタンドから歓声が上がる。

 ノーアウトでランナーが一、二塁にいる。




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