第476話


 一塁側ベンチの大森高校が円陣を組む。

 打順の書かれた紙を片手に中野監督が読み上げ―――それぞれの選手を見る。


「一番―――キャッチャー、ハイン!」


「はいっ!」


「二番! ショート・紫崎!」


「はい! フッ、勝ちに行きますよ」


「三番! セカンド・九衞!」


「はいっす! 試合の流れは俺様に任せてください」


「四番! レフト・錦」


「―――はい!」


「五番! ピッチャー・岸田!」


「……はい! 完投で行きます!」


「六番! ファースト・星川!」


「はい! しっかり打ちますよ!」


「七番! センター・朋也様!」


「…………」


「朋也様―――返事しないならこのままチューするぞ」


 中野監督が灰田に顔を近づける。


「止めろよ! ああ、もう! はい! 今回は外野手と打者の仕事だけ集中するって! 中野―――顔近づけんな! 息当たるから!」


「よし、解った。後は―――」


 円陣を組まない二人のメンバーに声をかける。


「八番! サード・大城!」


「メンソーレ!」


「九番! ライト・駒島!」


「―――うむっ!」


 その後に円陣を組んだメンバーに視線を戻す。


「控えに松渡!」


「は~い」


「ブルペンと伝令は坂崎!」


「は、はい」


 メンバーが円陣を解く。


「さぁ! 夏の県大会も折り返しだ! ―――ノックをしたら、整列後に試合が始まるぞ!」


 中野監督がそう言って、金属バットを持つ。


「「はいっ!」」


 メンバーが声を出して、グラウンドに移動する。

 円陣を組んでいない錦以外の二年メンバーはベンチに座りっぱなしだった。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「先攻の大森高校、ノックをお願いします。時間はボール回しを含めて七分です」


 中野監督が守備位置に着いたメンバーにノックを行う。

 七分経過して、ノックが終わり―――メンバーがキャッチャーボックスに集合する。


「「したっ!」」


 帽子を脱いで一礼して、ベンチに戻る。

 三塁側ベンチの香月高校の監督がリラックスして、バットを持つ。


「守備の穴はライトとサードか―――さぁ、お前達、兵庫四強の実力を見せるぞ」


「「はいっ!」」


 香月高校野球部のメンバーがグラウンドに移動する。




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