第393話


 ボールはセンターとレフトの定位置の間に落ちる。

 久遠寺が一塁を蹴り上げる。

 そのまま二塁に向かう。

 錦がバウンドするボールを捕球する。

 そのまま九衛のいるセカンドに送球する。

 久遠寺が二塁ベースにスライディングする。

 セカンドの九衛が塁を踏んで、捕球体制に入る。

 久遠寺が塁に触れるとほぼ同時にボールがグローブに入る。


「―――セーフ!」


 塁審が宣言する。

 僅かに遅れての捕球だった。

 久遠寺がここでもツーベースヒットを残す。

 三塁側スタンドが騒ぐ。


「ありゃ~。対策されたのかも~?」


 松渡が脱力して、独り言を言う。

 セカンドの九衛が松渡に送球する。

 松渡が捕球して、打席を見る。

 ハインが考え込む。


(完全にフォークボールが読まれていた。ハジメにフォークボールの調整ができるとはいえ、このイニングで控えておくか―――)


 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「白石高校―――二番―――」


 二番打者が打席に立つ。

 ハインがサインを送る。

 松渡が頷いて、投球モーションに入る。

 速水で練習していたのか、相手はサウスポーに対して慣れがあった。

 指先からボールが離れる。

 外角低めにボールが飛んでいく。

 二番打者がスイングする。

 バットの軸にボールが当たる。


「フォーシームのストレートが打たれちゃった~!」


 松渡が声を漏らす。

 カキンッという金属音と共にボールがショートライナーに飛ぶ。

 相手校の速水の父親である監督が怒鳴る。


「コラッ! せっかくの追加点チャンスにあんな球に手を出すな!」


 そのまま紫崎がショートライナーのボールを捕球する。


「―――アウト!」


 塁審が宣言する。

 紫崎が松渡に送球する。


「フッ、まだ点が入っていない。落ち着いていけ」


 松渡が捕球して、頷く。

 そして打席を見る。



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