弱小野球部の名誉挽回

第392話

　松渡が投球モーションに入る。

　久遠寺が構える。

　サウスポー独特のフォームで投げる腕を上げる足で隠す。

　足をマウンドに踏んだ瞬間―――指先からボールが離れる。

　外角高めにボールが飛んでいく。

　久遠寺が見送る。

　ハインのミットにボールが収まる。

「―――ストライク！」

　球審が宣言する。

　スコアボードに１３５キロの球速が表示される。

　久遠寺が松渡のストレートに関心する。

(なるほど、キャプテンと同じサウスポーでありながらタイミングがとりにくい―――おそらく次は―――)

　久遠寺が構え直す。

　ハインが返球する。

　松渡が捕球する。

(ハイン～。次どうする～？)

　ハインが松渡の気持ちに答えてサインを送る。

　松渡が頷いて、投球モーションに入る。

　指先からボールが離れる。

　外角やや高めにボールが飛んでいく。

　久遠寺がタイミングを合わせて、スイングする。

　打者手前でボールが左に曲がりながら沈んでいく。

　久遠寺がバットのやや下にスイングして、空振る。

　―――サイドスピンのシュートだった。

　ハインのミットにボールが収まる。

「―――ストライク！」

　球審が宣言する。

　スコアボードに１３１キロの球速が表示される。

(相手のクオンジはハジメのシュートにタイミングを合わせてきた。初見にしちゃ良いスイングだ―――おそらく目が良いのだろうな)

　ハインが返球する。

　松渡が捕球する。

　久遠寺が構え直す。

　ハインがサインを送る。

(なるほど～。今度はそれでいくんだね～)

　松渡が頷く。

　久遠寺が一呼吸置く。

(二回戦の松渡さんのデータは見ていた。僕達は短い期間で練習して来たけど、今こそ成果を見せるときですね)

　久遠寺がジッと観察する。

　松渡がサウスポー独特のフォームで投げ込む。

　指先からボールが離れる。

　真ん中高めにボールが飛んでいく。

　久遠寺がタイミングを合わせて、フルスイングする。

　打者手前でボールが二個分落ちていく。

(―――そのフォークは対策済みです！)

　久遠寺のバットの芯にボールが当たる。

　カキンッという金属音と共にボールが左中間に飛んでいく。

「―――打たれた！　トモヤ！」

　立ち上がったハインが叫ぶ。

　レフトの錦とセンターの灰田がボールを追う。

　久遠寺がバットを捨てて、一塁に走る。