第364話
球場内で両校がベンチに入る。
一塁側ベンチに大森高校が入る。
一年生マネージャーの柊は野球規約上において、マネージャーは一人しか入れないのでスタンド席で座る。
「陸雄君達。今日も勝ってくれるかな? なんかスコアブック書きたいけど古川先輩任せだしなぁ。来年になったらベンチで書くのかぁ」
柊がそんなことをボヤキながら、フェンス近くに座る。
同じく高校の生徒や保護者などが一塁側のスタンドに入り―――雑談しながら座る。
一方その下のベンチでは―――。
二年生マネージャーで記録係の古川が机付きの椅子に座る。
三塁側ベンチに白石高校(しらいしこうこう)とその方向のスタンド席にチアガールがスタンバイしていた。
真ん中に各校の偵察部隊がカメラをタオルで上に被せて撮影の準備を始める。
バックネット裏には両校のキャプテンが教諭と共に審判の前に集まる。
「それでは先攻後攻を決めるじゃんけんを始めてください。終わった後にメンバー表の提示をお願いします」
審判の声と共に駒島と相手校の速水がじゃんけんを始める。
(俺はいつもじゃんけんは八割方グーを出すと決めている―――そう俺の出すべきジャンケン・モーション……それはグー……)
じゃんけんで速水がグーを出そうとする。
駒島がタイミングを合わせて、パーを出す。
(ワシの集めたデータ通り―――相手のキャプテンはグー厨だ。圧倒的にパーで攻略可能!攻略本でシュミレーションゲームを解いていく感覚に近い。ぬぅん、ゲーマー脳のエクスタシーじゃあ…………!)
じゃんけんは駒島の勝ちで終わる。
駒島が鉄山先生に言われた通りに審判に宣言する。
「ワシは……いえ、大森高校は後攻でお願いします。二重の意味でこうこうです」
駒島がそう言って、審判にメンバー表を渡す。
「……冗談じゃねぇ……。こんなバカ丸出しの滑るjoke(ジョーク)を吐くキモデブに行動を読まれていた……メンバー表をjudge(ジャッジ)にtake(テイク)するさ……」
速水が悔し気にメンバー表を審判に渡す。
駒島が顔を真っ赤にして、反論する。
「judgeは裁判官って意味だろ! バカかこのクソポエマー! ワシを舐めんな!?」
「駒島。メンバー表を渡したんだからもう戻りなさい。私語を慎むように」
鉄山先生がそう言って、ブツブツと小言を言う駒島を連れていく。
それぞれがベンチに戻っていく。
(じゃんけんをして後攻を取る。今日のワシの仕事は終わった。後は守備で怪我しないように立ってて、打席でたまにやる気出して―――無駄のないスイングをたまにしてカロリーを適度に消費するだけだ。声優脳の宮古島のアホ大城とは違い―――長野の天才球児のワシはその辺がもう違うのだ)
駒島が豚のように頬を膨らませて、笑いを押させる仕草をする。
その際に駒島の屁が出て、速水が不快に思い三塁側ベンチに去っていく。
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