第363話
「―――それは残念でしたね 俺達のチーム―――良い野球部ですよ」
「そうさ、解ってる……次のお前の相手は俺さ…… news(ニュース)やtelevision(テレビジョン)でhot spot(ホットスポット)な話題になっているようだが……勘違いするんじゃあない……! お前はpierrot(ピエロ)さ……」
その言葉に陸雄がムッとする。
「最初の試合は名も無い一年チームのコールド勝ち……この二回目の試合は他の投手のコールド勝ち……。この前の三回戦の試合は投手があの真伊已誠也(まいのみせいや)が相手だったとは言え、錦の活躍で得た運が良いだけの勝利に過ぎない……cool(クール)な勝負じゃなくcold(コールド)さ……試合が都会と同じで冷めちまってる……」
「―――何が、言いたいんですか?」
「……試合はマウンドに立てば……俺に投手戦で負ける。同じpitcher(投手)でも―――性能と容姿は……俺の方が上だからさ……」
「……はい? 負けませんよ。俺達は―――」
陸雄がムスッとした顔で答える。
「……お前達の今回のgame(試合)は俺を勝たせて……気持ち良くさせることさ。―――せいぜいenjoyさせろ。holly(ホーリー) lonely(ロンリー) LOOSER(ルーザー)…………」
陸雄が我慢できないのか、反論する。
「―――勘違いもここまでくると芸術だな」
「……なんだと―――その意味はどうなってる……?」
速水が意外そうにシリアスな表情のまま話す。
「あんた負けるぜ―――個人主義の思考はチームを潰す―――リトルリーグからやり直してくるんだな」
「売り言葉に買い言葉でbaseball(野球)は始まる。それは挨拶代わりのbattle ticket(バトルチケット)さ……」
二人がにらみ合う。
その中で柊が胸を揺らしながら、陸雄の元に走ってくる。
「陸雄君。そろそろ試合だよ? 監督が呼んで来いって怒ってたよ」
「ああ、悪い。すぐ行くよ」
速水の元に同じく一年生の選手がやってくる。
「速水さん探しましたよ。突然いなくなるから監督怒ってましたよ。あれ? 陸雄さん?」
ジェンダーレスの髪型の綺麗な女性顔の久遠寺が陸雄を見て、驚く。
速水は柊の胸と顔を見て、陸雄に怒り声で話す。
「……IKEMEN(イケメン)の俺にさえ彼女がlost(いない)のに……冗談じゃねぇ……!」
「ま、マネジャーだよ 野球とは関係ないだろ!」
陸雄が慌てて、返答する。
柊と久遠寺がそのやり取りに「あー」と言って、呆れる。
「……今日の試合で返してやる。覚えとけ。それと―――キミ……可愛いから……address(アドレス)をpresent(プレゼント)してほしいさ……」
「えぇ……困ります。一応彼氏いるんで」
柊は秒単位でそう答える。
ショックそうな深刻な表情をする速水に陸雄が話す。
「もうチーム場所に戻れよ! 今日は勝つからな!」
「……冗談じゃねぇ……! この野郎―――今のcommunication(コミュニケーション)……brain(ブレイン)に焼き付く……! ……許さない……! メモったからな! ……試合で百倍返しッ……!」
「キャプテン。あんまりここにいると監督さんに罰練習込みで怒鳴られますよ」
久遠寺が速水をなだめて、一緒に歩いて離れる。
「……perfect Lose(パーフェクトルーズ)……それがお前のdestiny(運命)……! そろそろ時間か……お前……good luck(グッドラック)だな……!」
そう言って、速水は久遠寺のペースを考えずに走っていく。
「なんなんだ あいつ……」
久遠寺が帽子を脱いでペコリと一礼する。
陸雄もつい頭を軽く下げる。
(久遠寺―――勝たせてやりたいけど、全力で勝ちに行く。登板したら勝負したいな)
陸雄が柊と一緒に歩く。
「トイレが長いよーって、怒ってる中野監督が待ってるよ。私は先にクラスのみんなとスタンドの席に座るね。マネージャーはスコアブック書く古川先輩以外入れないしね」
「悪いな、柊。スタンドで無理せずに座っててくれよ。マネージャーの仕事してくれるおかげで、古川マネージャーも楽に投球練習量が増えて助かってるさ」
「別にいいよー。学校の時みたいに試合中に倒れたりしないでね」
「解ってるって! あんなヘマはもうしねーよ」
二人が中野監督のいるチームの元に戻る。
「柊―――スタンドに入って良いぞ。それと岸田。トイレは朝に済ましておけ」
「うっす! すいません」
「じゃあ、球場に入るぞ」
中野監督の言葉で両校が球場に入っていく。
試合は今まさに始まろうとしていた。
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