第234話
「淳爛高等学校―――三番―――」
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
三番打者が打席に立つ。
(トモヤ。三年間のブランクを埋めるため練習以外で実戦で鍛えてもらう)
ハインがサインを送る。
(せっかくのクイックだぜ? 一塁アウトにしてカウント稼がないか?)
灰田が太ももを軽く触って、サインを送り返す。
ハインがそれは駄目だっとサインを返す。
(わーたよ! ―――んじゃ、投げるぜ)
灰田がクイックで投球する。
指先からボールが離れる。
三番打者が一瞬振ろうとするが、見送る。
内角低めのボールがミットに収まる。
「―――ボール!」
球審が宣言する。
スコアボードに131キロの球速が表示される。
(球速が伸びてるが、120キロ代じゃないとボール球なのは練習と同じか―――)
そう思ったハインが返球する。
灰田が捕球する。
(ストレートに力が入っちまったか。内角低めのコースからボール二個分ズレちゃダメだな)
悔しがる灰田がハインを見る。
ハインは次のサインを出す。
(わーたよ。球速落として緩急だろ?)
三番打者が構える。
灰田が投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
内角高めにボールが飛んでいく。
相手の打者が見送る。
内角高めのボールをハインが捕球する。
誘い球だった。
「―――ボール!」
球審が宣言する。
スコアボードに113キロの球速が表示される。
(誘いに乗ってこないか―――制球はともかく、トモヤの緩急の調整は出来てきているな)
ハインが返球する。
セカンドの陸雄がウズウズしている。
(くぅ~! 代わってやりたいけど、中継ぎまでこらえろ)
紫崎がそんな陸雄を見て、フッと笑う。
(まるでおもちゃを欲しがる子供の様な顔だな。灰田の成長の為だ―――陸雄、堪えろよ?)
紫崎が陸雄から視線を外し、守備に集中する。
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