第221話


 星川がその話題に乗る。


「坂崎君の言う通りです。夏休みの宿題は家に帰ったら、毎日やりましょう。解らないところはコミュニティで聞き合いましょうね」


「星川君、ナイス提案だね~。これもある意味チームワークだね~。陸雄~、彼女に書き写しとかは駄目だよ~?」


 ハインの隣を歩く松渡が顔を向けて、そう言う。

 彼女―――。

 陸雄が清香の姿を浮かべたのか、顔を赤らめる。


「ばっ! バカ! 清香は……彼女とかそんなんじゃねぇよ。ただ家が隣で昔からの幼馴染みで……勉強教えてくれる優しい女の子なだけだよ!」


「そうですか。彼女さんはやはり清香さんでしたか。隣の家の幼馴染みで優しくて―――成績優秀で綺麗な人ですもんね。親公認ですから、将来安泰ですね―――陸雄さん。夏イベントはしっかりデートでアピールしないとバッドエンドで結婚出ませんよ?」


 星川がニコニコしながら話す。


「なっ―――!」


 陸雄の言葉が詰まる。


「「わっはっはっは!」」


 一同が爆笑する。


「だ・か・ら! 彼女じゃなくて幼馴染なの! バッドエンドって、何だよ? 恋愛ゲームじゃあるまいし、ってか―――ハインまで笑うことはないだろ?」


「ソーリー。ツバキが珍しくユニークなことを話すものだから―――リクオ」


「な、なんだよ。真剣な表情しちゃって?」


「お前はムードメーカーで重い雰囲気だって変えられる。きっと良いキャプテンになれる」


 突然の言葉に陸雄が別の意味で驚く。

 ハインがそんなことを野球人生で一度も言ったことが無いからだ。

 メンバー達が何も言わずに―――その言葉をしみじみと認めるように優しい顔になる。

 気付けば駅前に着いていた。


「んじゃあ、解散すっか! 試合が近いんだ。夜更かしすんなよ」


 灰田の言葉でメンバーが返事をして、駅組と地元組に別れて解散する。

 星川と一緒に電車に乗った時に陸雄はふと思った。


(今日の古川さんのこと―――みんな気にしてたけど、話題にしなかったな。何かあるとは思うんだけど―――)


「デッドボール、か―――」


「陸雄君、何か言いましたか?」


 星川が小声で呟いた陸雄に話す。


「あ、いや、なんでもねぇ。夏祭り清香と行こうっと思っただけだよ」


 陸雄が咄嗟にごまかす。


「それなら僕らは夏祭りで二人を見かけても知らないふりしておきますね」


「いや、星川君。そういう時は普通に話して良いから、幼馴染みなだけですから、ええ、はい。そりゃあもう……」


「わかりましたよ。あっ、そういえばこの前の新作ゲームが宣伝動画として出てましたよ。これです―――」


 電車が揺れる中で、二人はその後にスマホを見せたりして、高校生らしい話題で話し合う。

 三回戦はそんな中で迫りつつあった―――。


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