第129話
「西晋高校―――九番―――」
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
相手の打者が右打席に立つ。
ハインがサインを出す。
松渡が頷く。
投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
ボールは真ん中に飛んでいく。
打者がスイングする。
ボールが打者手前で二個分落ちる。
フォークボールだった。
打者がボールにバットが当たらずに空振りする。
ハインのミットにボールが収まる。
「―――ストライク!」
球審が宣言する。
(あんなバレバレな変化球を振るなよ~! 守備上手いからってレギュラー成りたての一年坊めぇー)
三塁の戸枝がしょんぼりする。
ハインが返球する。
松渡がボールを受け取る。
スコアボードに121キロの球速が表示される。
打者がバットを構え直す。
ハインがサインを送る。
松渡がゆっくりと頷く。
そしてボールを強めに握り、投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
真ん中高めにボールが飛んでいく。
戸枝がじっと見る。
(ボール球ギリギリの誘い球だ! 一年坊、振るなよ。振るなよー!)
九番打者がスイングする。
バットのやや上の軸にボールが当たる。
そのままファーストの頭上を越えて、白線を越えてファールになる。
(ああっ! だから簡単に追い込まれんなよー!)
戸枝が俯く。
ハインが審判からボールを受け取る。
(ハジメ。相手は三球三振で来ると思っている。ここで決めるぞ)
ハインが返球して、その後にサインを送る。
頷いた松渡が投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
外角低めにボールが飛ぶ。
相手の打者がフルスイングする。
外角低めのボール球がバットの先端上部に当たる。
高く浮いたボールがそのままキャッチャーフライになる。
ハインが立ち上がって、ゆっくり落ちてくるボールをキャッチする。
「―――バッターアウト! チェンジ!」
球審が宣言する。
二回表が終わり、松渡達がベンチに移動する。
三塁の戸枝もトボトボとベンチに戻る。
※
二回裏―――5対2で優勢の大森高校の攻撃。
「二回裏―――大森高校の攻撃です。一番―――キャッチャー、ハイン君」
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
ハインが右打席に立つ。
(ハジメに楽をさせるためにも点を多めに取らなくてはな)
中野監督がサインを送る。
ハインがヘルメットに手を当てる。
「―――プレイ!」
審判が宣言する。
戸枝がロージンバッグをマウンドに落とす。
捕手がサインを送る。
戸枝がボールを握り、投球モーションに入る。
ハインがジッと観察する。
指先からボールが離れる。
真ん中やや低めにボールが飛ぶ。
(そのシンカーは打つとゴロ球になるからな―――)
ハインが見送る。
ボールが打者手前で左に曲がりながら落ちていく。
捕手のミットにボールが入る。
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