第109話

 打順の書かれた紙を片手に中野監督が読み上げ―――それぞれの選手を見る。


「一番! キャッチャー・ハイン!」


「はいっ!」


「二番! ショート・紫崎!」


「はい!」


「三番! セカンド・九衞!」


「はいっす!」


「四番! レフト・錦」


「―――はい!」


「五番! ファースト・星川!」


「はいっ!」


「六番! ピッチャー・松渡!」


「は~い」


「七番! !センター・朋也様!」


「……うっす!」


 灰田が恥ずかしいのか小声で答える。


「声が小さいぞ。朋也様! ちゃんと言わないと夜の特別なお仕置きだぞ!」


 灰田が何かを想像したのか、恥ずかしさを消していつもの声のトーンになる。


「はい! はい! もういい加減試合場でもそう言われるの慣れますよ!」


 灰田がヤケクソ気味に答える。


「八番! サード・大城!」


「メンソーレ!」


「九番! ライト・駒島!」


「―――うむっ」


「最後に坂崎はベンチだが、万が一のこともある。その時は野手として参加するように」


「は、はい!」


 その時にアナウンスが流れる。

 中野監督がスタメンを発表した後に、ボール回しでノックをしている西晋高校を見る。

 相手校の監督が野球経験者なのか、ノックは普通だった。


「よし、今は西晋高校が ボール回しをしている。すぐに終わるだろうから準備しておけ!」


「「はいっ!」」


 駒島と大城以外のメンバーが声をあげる。



「さぁ! 二回戦の始まりだ―――ノックをしたら、整列後に試合が始まるぞ!」


「「はいっ!」」


 アナウンスが流れる。


「それでは西晋高校の先攻で試合を始めます」


 戸枝達レギュラーがグラウンドの守備位置に移動する。

 松渡達は―――相手ベンチのメンバーを見る。

 西晋高校のメンバーは控えも含めて二十人いた。


(うおっ! やっぱ上級生も含めると一回戦より多いなぁ―――)


 灰田がボール回しをしている西晋高校野球部を見る。

 中野監督が西晋高校のノックを見る。

 高天原高校の時は違い、しっかりとした隙のない動きだった。

 ノックが終わり、ベンチにメンバーが戻っていく。

 アナウンスが流れる。


「後攻の大森高校、ノックをお願いします。時間はボール回しを含めて七分です」


「よし! 守備位置につけ! 難しいコースを打って、イレギュラーに慣れさせてやる!」


 中野監督が金属バットを持つ。


「「はいっ!」」


 メンバーが早足で守備位置に着く。

 駒島と大城は徒歩なので、遅延行為だった。

 気にせずに中野監督がノックをそれぞれ綺麗に行う。

 駒島と大城のみボールが回って来るも取り損ねる。


(なるほど、弱点はサードとライトか)


 戸枝が大森高校のノックを見て、分析する。


(ウチの高校の監督は野球畑の監督だ。この試合に勝って、少しでもブランド力を上げなきゃな!)


 戸枝がノックの終わった大森高校をじっと見る。


「「したっ!」」


 ボール回しが終わった大森高校のメンバーが―――帽子を脱いで、一礼する。

 ベンチに戻っていく中で―――松渡は自分のスタンドの観客席を見る。


(前の一回戦が嘘のような人数だな~。陸雄にも見せてあげたいけど、ちゃんと勝って、次の三回戦になったら見せてあげよう~)


 ベンチに戻ったメンバーがグローブなどをすぐに外す。



 両校が整列する。


「「お願いします!」」


 両校が頭を下げる。

 試合開始の合図だった。




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