第100話 火花を散らす?2人

「ああ、それはね、ユリアは今何者かに命を狙われているからその護衛騎士として雇われたから一緒に暮らしているんだよ?」


「何だって?命を狙われているだってっ?!うん…そう言えば言われてみればそんな気がするが…」


ベルナルド王子は腕組みをしながらしきりに首を傾げている。するとセラフィムが小声で耳打ちしてきた。


「どうやら王子の記憶を操作し過ぎてしまったかもしれない。かなり混乱しているようだよ。」


「仕方ないわ。なるようになるわよ」


「おいっ!そこの2人!距離が近いっ!」


ベルナルド王子が私とセラフィムを交互に指差す。


「ところで…ベルナルド王子。何故私を迎えにいらしたのですか?」


何故王子は今日もここに来たのだろう?


「それはお前と一緒に登校する為だろう?」


「何故ですか?」


「うぐっ!そ、それは…そう!お前が何者かに命を狙われているからだ!」


「それならもう大丈夫です。ほら、この通り私には心強い護衛騎士がついておりますから」


隣に座るセラフィムを見る。そして黙って頷くセラフィム。


「い、いや!だが…この馬車は安全だぞ?少々の魔法攻撃くらいではびくともしないからな」


「僕なら馬車全体に防御壁を張れるから特殊馬車じゃなくても大丈夫だよ」


セラフィムの言葉にベルナルド王子の眉がぴくりと上がる。


「ふははっはは…そ、そうか。なかなかお前は腕に覚えがあるのだな?」


「当然だよ。ユリアの護衛騎士をしているんだからね」


「ほ〜う。そうか…すごい自信だな」


「まあね。実際僕は腕に自信はあるからね」


…何故だろう?先程からこの馬車の中に殺伐とした雰囲気が流れている。それにセラフィムとベルナルド王子が火花を散らしているようにも感じる。けれど、私がベルナルド王子に関わるのは非常に宜しくない。何しろ私の命を狙っているのはノリーンで間違いないはずだから。


「ベルナルド王子。私を心配して下さるお気持ちは嬉しいのですが、もうお迎えに来て頂かなくて結構ですからね。いえ、と言うかはっきり申し上げれば…逆に迷惑なので私にもう関わらないで頂けないしょうか?お願いします」


私はベルナルド王子に言った。


「な、何だってっ?!お、お前…本気でそんな事言ってるのか?何故俺が迷惑なんだよっ!」


「それは王子のせいで恨みを買いたくないからです」


「一体どういう事なのだっ?!」


「それはですね…」


そこまで言いかけた時、御者が声を掛けてきた。


「あの〜…学園に到着しているのですが…」


「なに?もう着いていたのか?!よし、降りるぞ」


ベルナルド王子に続いて私が降りようとすると王子が手を差し出してきた。


「…ほら、つかまれ」


まさか…エスコートするつもりなのだろうか?


「いいえ、結構です。1人で降りれますから」


冗談じゃない、こんな所ノリーンに見つかりでもしたら…。


するとセラフィムが言った。


「ほら、ユリア。つかまりなよ」


セラフィムが手を差し出してきた。


「ありがとう」


セラフィムの手につかまり、一緒に馬車を下りると明らかに不機嫌そうな目で王子が私を睨みつけている。


「おい、お前…一体どういうつもりだ?」


「別に、ユリアが僕のエスコートが良さそうだったからさ」


「何だって…?」


再び火花を散らす2人。…もうあの2人は放っておこう。


私は睨み合う2人をその場に残し、1人教室へと向かった。


そう、彼女と話をつけるために―。



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