第10話 2日目経過

「ちょっと!どうして私とジョンの部屋が繋がっているのよ?!それに…メイドの姿に扮しなくていいの?!」


部屋の壁に取り付けてある扉から私の部屋に侵入してきたジョンに抗議した。ま、まさか…!私に夜這いを…っ?!


するとジョンが白けた目で私を見た。


「ユリアお嬢様…ひょっとして私が貴女の部屋に夜這いに来たとでも思っていませんか?」


「え、ええっ!そ、そうよ…。な、何よ。もしおかしな真似をしようものなら…」


「はぁ~…」


すると大袈裟な位、ジョンがため息をつくと言った。


「勘弁して下さい…私にだって選ぶ権利はあるのですから」


「な、何よ…その選ぶ権利というのは…」


「つまり、何があってもユリアお嬢様だけは夜這い対象にはなり得ないと言う事です。第一…頼まれたとしてもお断りですよ…」


ジョンは小声で言ったのだろうが、生憎私の耳にはばっちり彼の言葉がきこえていた。…少しだけ女としての自分を馬鹿にされたような気になってくる。


「それなら、一体どういうつもりで私の隣の部屋に貴方がいるの?それに何故ノックも無しに勝手も私の部屋に入って来るのよ?」


「簡単な事です。今日の事でユリアお嬢様が命を狙われていると言う事がはっきりしたので、何かあった時にすぐに駆けつけられるように公爵様にお願いして、ユリアお嬢様の隣のお部屋で暮らす事にしたからです。ノックをしないのは単にそのような習慣が私に無かったからです。しかし、確かに…仮にユリアお嬢様の着替えの場に入ってしまった場合は余計な物を見させられてしまう可能性があるので今後はノックをする事に致します」


ジョンの言葉に苛立ちを感じながらも私は言った。


「ええ、そうね。お互い嫌な思いをしなくてすむように、今後はノックをして頂戴ね?」


「ええ。全くその通りです。それでユリアお嬢様のお部屋に伺ったのは明日の事について大切なお話があったからです」


「大切な話…?」


「はい、そうです。明日から私とユリアお嬢様は一緒に登校する事になりますが、私達は遠縁の親戚という設定でいきますので、屋敷内と学校内では口調を変える事をご了承願います」


「何?大切な話って…そんな事だったの?ええ、別に全然こちらは構わないわよ。ところで…学校へ行くと言う話だけど…ジョンも私と同じ18歳だったの?」


「いえ、26歳ですけど?」


「え?26歳…?」


「はい、そうです」


「え…ええ~っ?!あ、貴方…26歳だったのっ?!し、信じられない…!まだ精々20歳くらいだと思っていたけど…!」


「ええ、私は人よりも童顔ですから…それでは今夜はこれで失礼致します」


ジョンはそれだけ言い残すと、すぐに自分の部屋に戻ると扉を閉めてしまった。


「…ひょっとして…童顔と思われてショックを受けたのかしら…?ハハッまさかね…」


そこまで言いかけた時、大きな欠伸が出てしまった。


「フワアァァ…眠くなってきたわ…そろそろ寝ましょう」


結局何も記憶が戻らないまま2日が経過してしまった。明かりを消してベッドに潜り込もうとした時…。


「あら…?」


本棚に並べられた1冊の本がキラキラと光っている。


「え?何故光っているのかしら?」


本棚に近付いてみると、先程は気付かなかったが本の奥に何かがはいりこんでしまっていたようだった。早速、取り出してみるとそれは日記帳だった。


「日記帳…っ!」


急いでページをめくり…。


「な、何よ…これ…」


日記帳にはこう書かれていた。



『9月11日 2日目経過』


と―。

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