音楽あれば貴族共を黙らせれるかもしれない・・・

酒杯樽

序曲 クズ男、亡くなる

現在時刻 13:25

その男、神崎和葉はあくびをしながら起き上がる。枕元に置いた携帯

新着メッセージ99+ 不在着信62件

この間にもまた、着信音がなる。ちなみにこの男の携帯の着信音はボカロ曲である。


「・・・もぉしもーし」

「フェルメールさん!いつまで寝てるんですか!」


実はこの男、現在ネット上で活動しているそこそこ有名な音楽家である。動画配信サイト、Muyubeのチャンネル登録者は100万人を超える。ドラマやアニメに音楽提供もしている所謂大物と言われるやつの一人であった。

この男のメインは弦楽器。主にヴァイオリンとヴィオラ、たまにセロやコントラバスを弾く。そして動画にはしないがギター系列もそれなりに嗜み、カンテレを弾く。

しかしこいつにはもう一つの強みが在る。ピアノだ。この男、街に出ては有名ピアニストと連弾をしている。しかも目隠しをしながらだったり後ろ向きで完璧に弾ききるようなことを平然とやりきるため「天才」と呼ばれている。


音楽においては右に出る者がいないほど天才的なセンスを持つ彼なのだが・・・


「マネさんには関係無いっしょ。別にもう新作の件だったりセカンドアルバムだったりは終わってるんですから〜」

「そういう問題じゃない!生活習慣を治しなさい!」


生活習慣はゴミ中のゴミである。

13時起きはいい方。下手すれば13時は寝る時間だったりする。3日に1食出前サービス、用事があるとき以外は風呂にも入らない。撮影用の部屋以外はゴミ袋がアチラコチラ。


「あ、じゃあ今からゲームするんで、要件だけ手短に〜」

「はあ、要件は携帯に送っておきましたので、それ見といてください。じゃあ私は切るので、くれぐれも体長にはお気をつけて」


電話を切られると同時に耳からスマホを離し、そのままゲームを起動する。ちなみにこいつのキャッシュカードは月初めの3日ぐらいで2枚止まる。すべてゲームに消えていくのだ。


 数分立ったところでいきなりの睡魔が襲ってきた。


(・・・何だ?急に眠気?まあ、もう一回寝るとするか・・・)

「おやすみ〜」


その一言が彼、神崎和葉の最後の言葉となった。


 目を覚ますと男の視界には群青の空が広がった。地面が硬い。


「・・・どこだ?ここ」

「あなたは死にました」

「・・・は?」


突然聞こえたそのこえはいきなり不思議なことを言ってきた。上半身だけ起き上がると目の前にその声の主たる女性が立っていた。


「ここはどこなんだ?俺はどうなったんだ?」

「ここは円環の間。私、円環の女神が住まう場所です。そしてあなたは死にました」


もう死んだことについてはなるほどなで受け流す。それよりも・・・


「ちなみに俺はどんな死因で?」

「肝臓癌ですね〜。残念でした。」


なるほどだからどこにも痛みが出なかった。そう男は解釈した。


「あなたねえ、もう少し生活習慣ちゃんとしてればよかったのに・・・ほんっとだらしないったらありゃしない」

「うるせえ!俺がそれで良かったんだからいいだろ!!」


口論になった。呆れる女神と食いつく男。


「そんなんだから27の童貞で死ぬんですよ。」

「結果論じゃねえか。あと、別に童貞でもいいだろ!」

「知らないですねえ〜。」


罵倒と食らいつきの不毛な闘いが続く。


「じゃあお前は俺を矯正するためになんかやるのかよ」

「だったら、私の手下として働きますか?自由はありませんが。」

「なっそんなn」

「それとも私の趣味で生成した体でもう一度、一から人生を始めるか。選びなさい」


前者は一生楽できない。しかしまだ後者は女神の趣味にさえ耐えれば自由に暮らせる。もちろん男の答えは決まっていた。


「後者だ。まだ自由にできるのでな。」

「フフフフフ。いいでしょう。では、もう一度人生を楽しんでくださいね?もちろん途中で投げ出すなんてできませんので・・・」


女神が不気味に笑い、魔法陣を展開する。視界がわけもわからない色彩に包まれ、男の意識はなくなった。



現在時刻 4時少し過ぎ

布団がガバッとめくりあげられる。めくりあげた者の勢いでベッドのマットレスが大きくはね、その拍子でベッドの骨組みの一部がバキンと音を立てて壊れた。

 ベッドで眠っていた少女、フレデリカ・レイランは真っ暗な部屋の中でベッドが壊れたことすら気にせず


「はあぁぁぁぁぁ!?!?」


そう大きく叫んだ。


ガチャン!!

「静かにしなさいフレデリカ!!何時だと思ってるの!!」



・・・・・・・これは一人の転生音楽少女の話である・・・・・・・

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