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「ふぇっ?」
しのぶにとっては、全く予想外の提案だった。
「……ふう」2杯目の麦茶を飲み干してから、絵里香はしのぶに向き直る。「だってさ、シノとタクのペアがうまくいってないのって、シノがタクのことを意識しすぎてるからでしょう? 私とならそういうのはないから、うまくいくんじゃないかなって思ってさ」
「……」
しのぶは絵里香の観察眼に舌を巻く。
”すごい、エリー……町田さんから言われてわたしもようやく気づいたのに……ちゃんと原因を見抜いてるんだ……”
「やっぱりエリーは、すごいね……わたしのこと、そんなにわかっちゃうんだ」
「そりゃそうよ。だって、ほぼ24時間一緒にいるんだもの。シノのタクに対する気持ちも知ってるし」
「うん……わたし、タクと一緒だとすごく意識しちゃうの。でも……エリーはジョーと組んでも、全然そんなことないんだね」
「え、どうして? 私、別にジョーのこと何とも思ってないよ」
「ええっ、そうなの? でもエリー、タクよりもジョーの方が好きって言ってたよね?」
「そりゃ、タクと比べたらジョーの方が好みに近い、っていうだけよ。だからと言ってジョーに恋愛感情があるわけじゃない。むしろ、どっちかと言うと……私はジョーよりもシノの方が好きだな」
そう言って、絵里香は意味ありげな視線をしのぶに送る。
「……ふぇっ?!」しのぶの背筋がビクン、と伸びる。
”そう言えば、この前わたし、エリーにハグされちゃったっけ……もしかして、エリー……ソッチの世界の人なの……? それじゃエリーじゃなくて、ユリーだよ……”
「あはは、ウッソー」絵里香が笑って手を振る。「シノのことはかわいいとは思うけど、さすがにそういう気持ちはないから」
「……」そう言われて心の底からほっとしている自分に、しのぶは気づく。
真顔に戻り、絵里香は続けた。
「だけど、あなたはガチでタクのことが好きなんだもんね。彼とペアを組んでいたら、やっぱり意識しちゃうよね……いっそのこと、告白しちゃったら? そうしたら気が楽になるかも。それとも……私がタクにあなたの気持ち、伝えようか?」
「ダメ!」しのぶは首を激しく横に振る。「どっちも、絶対ダメ……」
しのぶにも、今自分の思いを伝えたところで巧也を混乱させてしまうだけなのはよく分かっていた。
「そっか……だったら、やっぱり私と組む?」
「でも……エリーとジョーってすごく息が合ってるじゃない……わたし、エリーはジョーと組むべきだと思う……」
「……うーん」絵里香は困った顔になる。「それは……そうなんだよね……」
確かに、絵里香は譲との相性の良さに自分でも驚いていた。DFでは彼と組んだことはなかったが、組んでいたらランキングトップを狙えたかもしれない。
「だけど、私にとってはシノも大事な仲間だから……もし苦しんでいたら、助けてあげたいって思ってる」
「ありがとう」しのぶの笑顔が輝く。「でもね、わたし、もう少しタクの
「……」
絵里香はしばらくしのぶを見つめていたが、やがて、小さくため息をついた。
「わかった。でも、どうしてもうまくいかなかったら、いつでも言ってね」
「うん。ありがとう、エリー」
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