第六章 建国編
閑話 わからせる
話の途中に入れる必要がある挿話です。
時間系列的には282話当たり、まだなにも起きてなかった頃です。
前回までの空気とあまりにも温度差が激しいため風邪を引かないように気を付けてお読みください。(真剣)
―――――――――――――――
「カレンさん」
「? なによぉ」
「そろそろ君にお仕置きをしようと思います」
マスターズを立ち上げ、苦楽を共にし。恋人関係でもあるユイトとカレンの二人は密室で、妙な空気の中にあった。
カレンは不可解そうに首を捻った。
「お仕置きって何よ。あたしなんかしたっけ?」
「俺が伐毛洗髄の際にエッチなことをするという噂を流したことへのおしおきです」
「そういえばそうだったわね……」
カレンは天井を仰いだ。
言われてみればあの噂のせいでユイトはレオナに誤解され、大変困っていた。結局はロリババアのアルイーに出張を頼んで問題ないように手間暇を掛けて解決していたと思い出す。
だがカレンはちょっと妖し気に笑った。
「でぇ? なにすんのさ。二人きりの密室で変態なことすんのぉ♡?」
挑発的に微笑み八重歯を覗かせ、ねっとりとした目でユイトを舐めまわすような目を向けた。
カレンとしてはそろそろ関係を次の段階に進ませてみたいところ。風車村で出会った頃からずっと気持ちを寄せていた相手なのだ。そういう関係になろうと後悔はない。むしろウェルカムであった。自分の舌に指を這わせて嫣然と笑う。
だがそんな感じのカレンにユイトは真顔で答える。
「お仕置きといってもエッチなものじゃないぞ」
「ちぇー、じゃあなによ」
「
カレンはなんだか大変嫌な予感を感じた。
あまりエッチなことになりそうにない言葉に身を引く。ベッドの上に腰かけて遠ざかろうとする。
が、無駄。
真面目な顔をしているがカレンのせいで伐毛洗髄の意味が破廉恥な内容に誤解をされ、おかげでユイトは大変だったのである。ちょっとぐらいひどい目に遭ってもらわないと我慢できないのだった。
「ちょっと!」
迫るユイトの接近を拒もうとカレンは足の底で相手を蹴りだそうと動いたが……それこそが一番の悪手。
足の裏にある秘穴の中に一つ、そこを抑えて陽氣を注ぎ込むとまるで全身のあちこちを産毛でくすぐられているような強烈なむず痒さが襲い掛かるのだ。
ユイトはカレンの事を愛しているからもちろん痛めつけるようなおしおきなど論外。
だがそれはそうとして、今回の一件は困り果てたので一度お灸をすえておく必要はあった。靴と靴下を脱がせ、親指を彼女の土踏まずあたりに押し当て……。
※ここからはダイジェスト版でお送りします。
「あ、ひぃっ……んふぅ、あはははぁちょっとや、やめなさいよユイトぉ!」
「さっきから脇も足の裏も全身までくすぐったくて……んふぅ~……」
「く、くるしっ。息するのも、ふふふっ♡」
「こ、殺す♡ ほんと、もうだめ♡ あとで覚えてっ……」
「ふぇーん♡ も、やだぁっ、あっー!」
「やめ、やめろって、やめろって言って……やめてぇぇぇっ♡」
「あっー! も、やめてぇっ♡ ごめんっごめんなさぁい、ごめんなさぁーいぃ!」
「も。もうあんなこといわないからゆるしてぇー♡」
「あ、あやまったのにぃ……あやまったのにぃ~♡」
「ふぇ、えーん……えぇぇん、ふぇえぇん……♡」
「ふー……ふー……♡」
「……やりすぎてしまった…………」
お仕置きは終わった。
終わったがユイトは悶々としていた。無理もないが。
カレンのほうは体力尽き果てた様子でベッドにうつぶせになっている。
なおえっちなことは何一つなかった。
信じてほしい。
本当に足の秘穴を突いて氣を流してくすぐりまくっただけである。
アルイーお婆ちゃんから聞いたお仕置きは天罰覿面であった。
「……ちょっと水風呂行くか」
しかしユイトの股間は現在紳士から野獣になってしまった。
教えてくれたお婆ちゃんが「二人きりの時で恋人同士のみでやるんじゃよ。ええの」と念押しした理由が今更ながらわかってしまう。
そんな風に思ったユイトの服の袖を、カレンの手が掴んだ。
顔はまだ真っ赤。豊満な胸元は大きく上下し、息も絶え絶えだった状況から回復しようと何度も呼吸を繰り返している。
美貌を怒りと羞恥心で燃え上がらせ、カレンは叫んだ。
「うそつき!」
「嘘ついた覚えはないけど」
「明らかにえっちなおしおきだったじゃないの!」
「そんな事言うけど、単にくすぐったかっただけで怒られましても」
「ユイト……自分の股間に誓って言えるの? さっきのはエッチじゃないおしおきだって」
「言えませんね!!」
今まさに水風呂に入って股間の野獣を紳士に戻そうとしていたところである。明確な証拠がある以上、カレンの追及から逃れるすべはなかった。
とりゃー、と声を上げてユイトにのしかかるカレン。
恋人を無理やり引き剥がすこともできず、ユイトはそのままベッドの上に押しつぶされる格好に。
背中におっぱいが当たって気持ちいいんですが、と抵抗しようとするユイトの耳朶に……カレンの唇が舐めるような至近距離で触れる。熱っぽく、熱く潤んだ吐息がくすぐったく、まるで耳朶を通って脳そのものを舐られるような囁きが耳に這う。
「ねぇユイト……」
「ななななんだよ……」
「そろそろお詫びしたいんだけど……」
お詫び? ユイトは首を捻る。
そんな彼にカレンは言葉をつづけた。
「あんたを手助けできなかった時の……お詫びよ。
あとでおっぱい揉んでいいからって言ったじゃない」(265話)
ユイトはちょっと黙った。
股間の野獣が最終形態へと変化しているのを自覚する。あからさまなエッチなお誘いを前にして心臓が耳元に引っ越したかのようにやかましい。
確かに。
確かにそういう事は言った。だがそのお詫びを受け取ってしまったらもうそのまま行き着くところまで行ってしまいそうで……。
「あんたとあたし、恋人同士じゃないの。
いいのよ。別に、あんたとなら」
その躊躇いを押し切るカレンの囁きに、ユイトはとうとう我慢することをやめた。
そして。
まぁなんだ。
そういうことになった。
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