英雄堂〜古物・珍品・アーティファクト扱ってます〜

遊遊

第1話 英雄堂

英雄堂えいゆうどう、東京都内にある珍しい物から古い物までを扱っているお店である。


 その店主はまだ23歳らしいが、品を見る目は世界一と囁かれているほどなのだが…


「今日はどんな品がやってくるかな」


明仁あきひと様、先日入荷した壷ですが、ケイサン電気の会長から欲しいと連絡を貰いました。」


「1000と伝えておいてくれ、レティス」


「かしこまりました。」


 この英雄堂には店主の明仁あきひとと助手のレティス2人で切り盛りしている。


 年商で言えば数十億と、かなりものなのだが明仁自体はあまり贅沢な暮らしには、興味を持ってはいないのでお金にはかなり余裕を持って生活をしていた。


 そして扉が開く音と共にチリッンチリンとベルの音が店に響くと本日最初のお客様がやってきたのだ。


「いらっしゃいませ〜」


「いらっしゃいませ。」


「あの…こちらの品を見ていただきたいのですが」


「鑑定ですね、買取もいたしますか?」


「まず鑑定をお願いします」


「かしこまりました…(鑑定)」


==============================


名称:日本刀(脇差)

製作者:千子村正

その切れ味と表裏揃った美しい刃は人を魅了する程の存在感を放つ。


保存状態がとても良い


==============================


「なるほど…失礼ですがどう言った経緯で?」


「私のお爺ちゃんが昔から受け継いでいた物で」


「その様な品を買取するのは…」


「そのお爺ちゃんも亡くなって、両親もいない私に売って生活しないさいと…遺書、に」


「…すいません、嫌な事を思い出させてしまって」


「いえ…それでどの様な物なんですか?日本刀なんてよくわからないけど高いんですよね?」


「ええ、鑑定結果ですが千子村正という方の脇差でほぼ間違いないと」


「?それって有名な人なんですか?」


「村正の日本刀と言えば数ある中でも最上級の業物でそのほとんどが重要刀剣、特別保存刀剣に登録される程の物になってます」


「つ、つまり?」


「博物館や一部のお金持ちしか持っていない代物で値段もかなり」


「そんな凄い物だったんですか!」


「ええ…勿論こちらで引き取る事は可能ですが、本当によろしいのですか?」


「……でも私一人で生活できないし」



 見たところ女性の年齢は20歳くらいに思えたが、大学生くらいにいきなり生活しろと、言うのも確かに難しいと思った明仁は、


「宜しかったらお仕事を紹介する事も出来ますよ?」


「えっ!そ、そんな私が働けて生活に困らないし、仕事って」


「いかがですか?」


「だ、ダメです!嫌です!知らないお、男の人とそんな事するなんて!」


「えっ…」


「明仁様、この方15歳の様ですよ?」


「はっ?!」



 とりあえず取り乱して警察に連絡しようとしている彼女をレティスは宥め、明仁は静かに見守るのであった。


「……お客様すいませんでした」


「オーナーもこう言っているので許していただけませんか?」


「い、いえ…わ、私も勘違いしてしまって…よく大人に見られてしまうので、そのすいません…実は今年から高校生になります」


「お詫びという訳ではないですが、この刀をこちらで無料で保管、保存させていただき…大人になられたら改めてどうするか決めて頂くのはいかがでしょ?」


「でも…」


「この店でバイトをしませんか?レティス、一人欲しいって言ってたな?」


「そうですね、私はよろしいかと」


「どうかな?こんな店でもそれなりに儲かってるからバイト代も期待していいし、時間も融通する。仕事内容は店内の掃除とお客様が来たら接客して取り次いで貰う事かな」



 その女性は訝しげに明仁を見ながら


「え、エッチな事はダメですよ!」


「誓ってそんな事はしない」


「わかりました…お爺ちゃんのご先祖様からずっと大切にしてる物で私も思う所があったのでお願いします!」


「とりあえずバイトに入って貰う前にこれ、しばらくの生活費」


 そこには1束のお札が置かれた、普通こんな渡し方はどうかと思うが明仁も少し金銭感覚がおかしくなっていたのでちょっとお小遣いを渡す感覚で1束渡してしまった。


「こっ、これって100万円!ですか?!」


「んっ?あっ…」


「明仁様、普通この様にお金を渡すのは良くないかと」


「あ〜、すまん。口座に振り込むから教えてくれ」


「明仁様…すいません、私が振り込ませていただきますので後ほど」


「えっ、とレティスさん?」


「一緒に働くので慣れて頂くしか」


「なるほど…わ、私水無月みなづき まいって言います!よろしくお願いします!レティスさん!…お、オーナー」


「あっ、普段は明仁でいいよ」


「…オーナーよろしくお願いします」


 レティスは笑いながら明仁にだけ聴こえる小声で


「警戒されてしまいましたね明仁様」


「徐々に誤解を解くしかないか」

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