第20話 炎の術師 風を呼ぶ

青嵐は、不思議な子だった。阿と吽が疲れ果て、地に横なっている間に、火を起こし、紫鳳を介抱していた。そばに連れている馬も、青嵐を信頼している様子が見てとれた。その青嵐が、いきなり瑠璃光の名前を出してきた。名の響きに、一瞬、紫鳳の耳が動くのを、青嵐は、見逃さなかった。

「知っているんだね」

うっすらと目を閉じる紫鳳の肩を掴み、語気を強めた。

「ずーっと探しているんだ。」

紫鳳は、面倒臭そうに、薄めで、こちらを見ている。

「会いたいんだ。瑠璃光が、三華の塔に現れるって聞いて、ここまで来たんだ」

「俺らも、その瑠璃光を探していて。。」

慣れない嘘に、阿は、ドギマギしている。

「どうして、会わなきゃ行けないの?」

吽が優しげに聞いた。

「それは。。。あの。」

青嵐は、口ごもった。四人の間で、炎だけがゆらゆらと揺れている。

「噂に聞いたんだ。大陸に凄い魔導士がいるって。香を扱い、他人にもなれるって」

「そんな噂あてに、ならないよ」

紫鳳は、口を開いた。

「今、この地にいるかなんて、わからないし、他人になるなんて話聞かない」

阿は、すぐ、紫鳳と瑠璃光が入れ替わる事かと、思ったが、黙った。

「瑠璃光が、お前に興味を持てば別だけど」

阿は、繁々と青嵐を眺めた。どう見ても、瑠璃光が気に入った紫鳳とは、対照的でやや野性味が強い。女性に近い美貌の瑠璃光とは、ますますかけ離れた容姿だった。

「興味を持つって?」

「子供は、知らなくていいの」

阿は、自分の容姿を忘れて声を上げた。

「そういうお前も、子供だろう」

「ほら。。。」

紫鳳は、頭を抱えた。雨は、一向に止む気配もなく、紫鳳達は、眠りにつく事にした。皆が、闇の中で、眠りについている間、炎だけが、輝き、縦や横に形を変えていた。青嵐の掌で、小さな炎が、幾つも踊り、形を変えていた。まるで、意思がそこにあるかの様に。

「気づいている?紫鳳?」

そっと吽が聞いた。紫鳳は、答える代わりに寝返りを打った。

「何か、厄介な拾い物したかもよ」

結構な術師。炎を操り、瑠璃光に会いたがる。それぞれに、嫌な予感があり、隙を見て、青嵐から逃げようと考えていた。

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