30話 徹と奏斗
30話 徹と奏斗
みんなは、夏が過ぎたと感じるのはいつだろうか。体感温度的に涼しくなれば夏が過ぎたと思うだろう。夏と秋の境目にはきっと定義もある。
僕が考える夏と秋の境目は「ファミレスのメニューからかき氷が無くなった日」だと思う。いつも食べていた宇治金時のかき氷が無くなって寂しさを感じる今日。
「すみません。もう宇治金時のかき氷は終わっておりまして、今日から秋メニューになっております」
店員と僕、お互い気まずくなる。唾液が宇治金時を求める以上、その味覚命令をすぐに変更できる訳もない。
「じゃ、とりあえずドリンクバーで」
「はい、分かりました」
店員は「ごゆっくり」と言って、厨房の方へと向かう。ため息をして窓の外を見る。中学生ぐらいの男女が二人で歩いている。女の子は笑顔で話しかけるが、男の子は周りをキョロキョロしている。付き合って間もないのだろう。
「あの、席無いので前いいですか?」
いやいや、席空いてるでしょ。と僕は顔を上げる。女性ならまだしもなぜ男性?と僕はその人を見る。そして、目を見開く。
僕の名前を呼ぶ男の人。その人は完璧なほどまでの和かな笑顔を創っていた。
「大池徹だよね。ここ座ってもいい?」
なんで、なんで。
そこには、
・・・・・・・・
「奏斗」
「それ、もしかしてパズホラ?僕もパズホラやってるんだ。最近協力プレイのアプデ来たからやらない?」
滝本奏斗。僕と異なるクラスであり、直接的な関係はないが、清水萌衣の彼氏である。そして奏斗と萌衣の関係性はただの彼氏彼女の関係でないことは美穂から聞いている。
萌衣の好きな人が僕であることは美穂から聞いて知った。そして美穂との別れ話の際には萌衣の気持ちを聞いて欲しいと言われた。だけど僕は萌衣の気持ちを優先させることなく自分の想いだけを話そうとした。
【パズホラをやりたくて】僕に話しかけてきた訳では無いだろう。だけど誘われたからにはやらない訳にはいかない。僕は渋々パズホラを開いた。
・・・・・・・・・
~1 時間後~
・・・・・・・・・
「おりゃゃゃゃ、奏斗やっちまえぇぇぇ」
「徹、任せろ!僕の必殺技発動!time the would!おりぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕と奏斗は完全に仲良くなっていた。奏斗はものすごいスピードでパズルを組んでいく。
僕もまだクリアしていない、最も難易度の高いボスに攻撃を加える。そして画面からボスが消えて虹色に光り輝くタマゴが落ちる。
「か、」
「か、」
「「勝ったぁぁぁぁ」」
約一時間の激闘の末、ギリギリ勝つ。ハイタッチをして周囲の目線も気にせず喜び合う。そこに店員が注意をしに来た。
「あの、すみません。ほかのお客様の迷惑になりますので」
「「あ、すみません」」
僕と奏斗、他のお客様に頭を下げる。そして静かに席に座り目を合わせて笑い合う。
「やっぱりパズホラ面白いな、でさ奏斗の話したいことって何?」
「あ、そうだった。単刀直入に言っていい?萌衣ともう一度話をして欲しい。そのチャンスは僕が作る」
これが僕と奏斗の連立方程式が交わった瞬間だった。
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