第10話 四人での帰り道


 その後、私達は一緒に学校を出て帰ることになった。

 初めてのメンバーだからどんな感じになるんだろう、と思っていたけど……。


「誠也くん、健吾と友達なんてやめた方がいいよー。一緒にいるだけで疲れちゃうし、人を不幸にするオーラが出てるって有名なんだよ」

「今市さん、奈央と友達なんてやめた方がいいぜ。何考えてるか全くわからない奴だし、人を不幸にして楽しむような奴だ」


 ……まだ二人が言い争いをしていた。

 私は一年生の時に奈央と一緒に過ごしてきたけど、こんな奈央は初めて見る。


 もともとどこか掴めない子で、全部本音を話しているわけじゃないんだろうなぁ、みたいなことは思っていた。

 だけどそれでも一緒にいて楽しいし、奈央も私以上に仲良くしている友達はいないみたいだったので、勝手に私は親友だと思っている。


 奈央はモテるけど、男の子と一線を超えて仲良くしているところは見たことがない。

 話しかければ誰とでも態度を変えることなく喋るし、いつも楽しそうに話すのだが、自分から男子に話しかけているのを見たことがない。


 さらに男子が奈央のことを下の名前を呼び捨てで呼んだ時は、


『いきなり馴れ馴れしい感じを出す人は好きじゃないなぁ』


 と言って、完全に一線を引く。

 それを言われた時の男子が青褪めながら軽く謝っていたのは覚えている。


 もちろん奈央からも名前の呼び捨てをすることはなかったのだけれど……。


「健吾、あそこにペットショップがあるよ。健吾みたいな猿につける首輪があればいいんだけどねぇ」

「誰が猿だよ。お前みたいな生意気でかまってちゃんの猫の首輪ならあるんじゃないか?」

「うわー、女の子に首輪をつけたいとか、変態だぁ。さすが非モテ君、妄想を拗らせてるね」

「妄想を拗らせてるのはお前の方だろ、奈央」


 ……めちゃくちゃ名前で呼び合ってるわね。

 ここまで毒を吐く奈央を見るのも初めてだし、二年生になって早々に新しい一面を見た。


「……二人は仲が良いのか? 悪いのか?」


 今までのやりとりを見ていた誠也が、そんな問いかけをした。

 奈央と小林くんが前を歩いていて、私と誠也がその後ろを歩いている状態だ。


 小林くんがその問いかけにすぐに振り返って答えてくる。


「もちろん、仲良いわけないだろ。奈央とは中学からの腐れ縁ってだけだ」

「そうだよー、誠也くん。健吾と私が仲良いなんて、そんなことが広まったら寒気がしちゃうね」

「俺の台詞だよ」

「……仲良いみたいだな!」

「「だから悪いって」」


 奈央と小林くんは同時にそう言って、台詞が被った瞬間にお互いに睨み合っていた。

 うん、私から見ても仲良いとは思うけど、言わない方がいいわね。


「しかし、香澄ちゃんと同じクラスになれたのはすごく嬉しかったが、まさか健吾とも一緒とは思わなかったぞ」

「なんだよ、俺が一緒だと嫌なのか?」

「そんなわけないだろ? さらに嬉しいってことだよ」

「っ、本当にお前は……真っ直ぐな奴だよな」


 小林くんが少し照れたように笑った。

 そう、誠也はこういう真っ直ぐなところが長所でもあり短所でもある。


 ……私はすごい長所だと思っているけど。


 だって私は、そんな真っ直ぐに想いを伝えることは出来ないから。


「やっぱり誠也くんはすごい人だね。そんな真っ直ぐなところがカッコいいよね」

「なんだ、奈央は誠也が好きなのか? ははっ、やめとけよ。お前じゃ今市さんには絶対に勝てねえよ」

「別に誠也くんはいい人だけど、香澄がいるから別に狙ってないしねー。健吾も誠也くんに勝てるわけないんだから、香澄に恋しない方がいいよー」

「何!? 健吾、お前、香澄ちゃんのことが好きなのか!?」

「ちげえよ! どう聞いてたらそうなるんだよ!」


 二人のやりとりにバカな誠也が入ってしまった。

 ……だけど今のやりとり、なんか違和感があったというか。


 奈央も小林くんも、どっちも「この人のことを好きになるなよ」と注意してる感じが、よくある恋愛漫画みたいなものを感じた。


 気のせいかな? 最近そういう漫画を読みすぎているだけかもしれない。


 そんなことを話しながら私達はそれぞれの家へと帰った。




――――――――


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