真冬のチューリップ

山下 巳花

➀序章

 温かな人工の風が、窓に吊るしたピンク地のカーテンを揺らした。

 そこに咲き乱れる季節にそぐわない赤いチューリップは、まるで今のあたしのキモチを知っているかのように、はらはらと波打っていた。


 喧嘩するつもりなんて、いつもさらさらない。

 あたしは、ただ、杏士きょうじと一緒にいたいだけ。

 ただそれだけなのに・・・逢えば、いつも喧嘩ばかり。

 キッカケは些細な事なのだけれど、最後には決まって無言になってしまって。

 そのうち、杏士がこの部屋から出て行ってしまう。

 だけど。

 次の週の土曜になると、彼は何事もなかったかのようにココにやって来る。

 そして、些細な事でまた喧嘩・・・。


 こんな状態が、もう3~4ヶ月も続いていた。

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