「34」友達の友達

「あー、白井じゃん。やっほー」

 俺に付きっ切りの白井だが、流石に友人くらいは居るのであろう。三二五教室に入るとすぐに、他の女学生たちが白井に気が付いて声を掛けてきた。

「え……白井、また太蔵と一緒なわけ?」

 ジトーッと女学生たちから冷ややかな目を向けられる。まるで俺が邪魔者みたいだ。

「まーね」

 白井は素っ気なく返事をする。


 ムスッとした白井の態度に、女学生たちは茶化すように笑った。

「本当に白井って、太蔵のこと好きだよねー」

「もういっそのこと付き合っちゃえばいいじゃん。太蔵と白井のカップル……想像したら笑えるわ」

 勝手な想像で小馬鹿にされて、白井は苦笑いを浮かべた。

「もう、やめてよ。明海!」

「そーだよ、明海。さすがに、太蔵とくっつかせるなんて白井に悪いわよ」


──何たる言い草だ!

 冗談とは分かっているが、なんだか馬鹿にされているようで腹立たしい。


 明海と呼ばれた女学生はケラケラと笑う。

「でも、まんざらでもないんじゃないかなー。私、小学校一緒だったけど、太蔵は太蔵で随分と白井にお熱だったみたいだし。遠出してプレゼント用意してきたりとかさぁ……」

「もう、やめてってば! 明海!」

 白井は何とか話を静めようと躍起になっていた。

 余程、恥ずかしいのだろう。


──ん?


 だが、そこで俺は女学生たちとのやり取りに違和感を覚えていた。


──なんだろう?

 何かが引っ掛かる。


「あー。講義始まるわー。またね、白井!」

 三二五教室に姿を現した教授の姿を見て、女学生たちは話を打ち切った。そして、予め席取りしていたらしい荷物が置かれた壁際の席へと向かって行った。


 そんな女学生たちを目で追いながら、俺は違和感の正体を探ろうと必死に考えを巡らせたのであった。

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