第2話
「……1日って早いな」
家に着く頃には完全に日が沈んでいた。
車庫にバイクを止めると重い足取りで玄関のドアを開けていった。
「ただいま」
「お、やっと帰ってきたな」
奥のリビングから父親の声が聞こえてきた。
玄関の収納箱にヘルメットとグローブをしまい、リビングに向かい
ドアを開けると父親とその隣に1人の女性が座っていた。
「本屋にいくだけでどれだけ時間かかっているんだ?」
「思いがけない事態に遭遇したんだよ」
父親はまったとくぼやきながら椅子に座るように促してきた
部屋に戻りたかったが仕方なく俺は父親の対面の椅子に座る。
「前にも話したと思うが、こちらは深月(みづき)さん。会社で俺の部下として働いているんだ」
「深月です。これからよろしくね、悠弥くん」
父親が隣に座る女性を紹介すると深月さんは俺の方を向いて頭を下げていた。
俺の父親は色々あって一昨年に母親と離婚した。
どちらについていくのか決めていいと言われていたので俺は父親を選んだ。
理由はたった1つ、母親と1秒たりとも一緒にいたくなかったからだ。
離婚が決まってから1年ほど、父親と2人で暮らしていたが、
突然父親から再婚する話を聞かされた。
「親父の好きにすればいいんじゃない?」
当時の俺はこんな感じに答えたと思う。
その後に再婚することが決まり、何度か顔合わせとかあると言われていたが、
気分が乗らず一度も出ることがなかった。
なので、先ほど紹介された深月さんとは初めて会う。
「……佐倉悠弥です」
自分の名前を名乗りながら改めて深月さんを見ると
スラっとした長い黒髪が目についた。
見た感じ父親よりも若く見えた。
「深月さんにも子供がいるんだ、えっと悠弥よりも年上だっけ?」
「えぇ。4月から高3ですね。一応悠弥くんのお姉さんになるのかな? まったく頼りにならないと思うけど」
俺が4月に2年になるからたしかに1つ上になる。
それよりも気になるのが、お姉さんってことはもちろん女だよな。
まあ、必要以上に接して来なければいいんだけど。
俺もするつもりもないし。
「それにしてもあの子何をしているのかしら」
「もしかして道に迷っているかな? 迎えにいった方がいい?」
「ちょっと電話してみますね」
深月さんがカバンからスマホを取り出して電話をかけようとしていた
その時、玄関が開く音が聞こえた。
深月さんがスマホを持ちながら玄関に向かっていった。
「もう! 遅かったじゃない、何をしてたのよ!」
「ごめーん! 住所メモった紙なくしちゃってー」
リビングのドアが閉まっているいるせいか
声までは聞こえないが、どうやら深月さんの娘が来たようだ。
「これでやっと新しい家族での生活がはじまるな……」
目の前に座っている父親が感慨深い表情で呟いていた。
俺は何も反応せずテーブルの上に肘をつき、ぼーっとしていた。
「ほんとごめんなさいね……もうあの子ったら」
深月さんがリビングのドアを開けるとすぐに後ろを振り向き
「もう何やってるの、和彦さんと悠弥くん待ってるわよ」
「急かなさいでよー! ブーツが脱ぐの大変なんだから!」
(……あれ? どっかで聞いたことある声)
すぐに廊下を慌てて歩く足音が聞こえきた。
そして、足音の主がリビングに姿を現した。
「あ、カズさん今日からよろしくお願いします!」
「そんなにかしこまらなくていいんだよ、家族なんだから」
父親と入ってきた人物が話す中、俺は自分でもわかるぐらい
驚いた表情をしていた……と思う。
それもそのはず……。
リビングに入ってきたのは……。
「さっきぶりだね」
本屋で俺を逆ナンしてさっきまで一緒にいた深愛だった。
「改めまして、『佐倉』深愛です! これからよろしくね悠弥」
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