第4話 接触
俺は死神・タナトス。
人間界で亡くなったものの霊体を天界に連れていく者だ。
と、言っても、俺はもうすでに何万年と生きているから、人の死というものに対して立ち会ったことは数多と言うべきかもしれない。
それに今はこの日本の
そのある日に出会ったのが、この相沢美琴という女の子だった。
高校1年になってそれほど間もない時に友人である神林翔和に突き飛ばされて、走ってきたトラックに轢き殺される。
しかし、警察は偶発的な事故死と断定した。まあ、証拠不十分とはこういうことだ。
俺たちの目からははっきりと見えているというのに……。伝えようもないからな。
両親も乗り物関係で事故死を遂げており、つくづく乗り物に縁のない家族なのだろうか……。
その女からの申し出は、
「アイツに恐怖を味わってもらいながら、ずっと私の本来あるべきだった人生分を
正直、初めて聞いた時は本当に頭がおかしい女なのかと思っていた。しかし、そういうわけではないようだ。
怨恨が原因ではあるものの、生きている人間を呪い殺すつもりはないという。
それ以上に突き飛ばした相手を呪ったまま恐怖を味合わせつつ、生かし続けるとか……。
気に入ってしまった―――。
俺は天界のエロ玩具屋で購入してちょうど持っていた奴隷用ブレスレットを付けさせ、美琴を管理しつつ、相手の強い思いを成し遂げてやることにした。
とはいえ、悲しきかな、そこは相手は霊体。
霊力なるものをほぼほぼ持ち合わせていない。
そこで俺が提唱したのが【直接的接触】による霊力を譲るという方法。
手を握るだけでも、良いわけだが、この女はどうやら勘違いをしているようだ。
この【直接的接触】という言葉がいけないのかもしれないが、どうやら卑猥な言葉と勘違いしたようである。
突如顔を赤らめている。
あからさまに恥ずかしがっているのが伝わるのが、俺と視線すら合わせられないのはどういうことだろうか。
そして、極めつけが―――、
「た、タナトス!」
「ん? どうした?」
「わ、私とキスをして、霊力を分けて頂戴!!」
と来たもんだ。どういう脳回路していれば、そういう方向に持っていけるんだろうか。
まあ、別にキスによって霊力を譲ることは可能だ。いや、むしろ粘膜による接触を行っているから効率的でもある。
「じゃあ、早速、キスをするか?」
「あ、はい!? で、でも、恥ずかしいので、真正面からは少し無理……」
「じゃあ、これでいいだろう……」
そう言って、俺は美琴を後ろからそっと抱きしめてあげる。
美琴は身体を小刻みに震わせていた。
そっか……。この子……処女か……? それともトラウマか何かが……?
こういう経験がない中で、霊力が欲しいとはいえ、勇気を出してお願いをしたんだな……。
そこは敬意を払って優しくキスすることにした。
美琴の耳をそっと甘嚙みすると、「ひあっ♡」と可愛く鳴いた。
思わず自分の中の何かがゾクリと震えたがこの際、置いておこう。
美琴を優しく包み込むようにして、俺は美琴の唇に自分のものを重ねた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
き、急に耳を甘噛みされるなんて聞いてない!
ちょっぴりエッチな声が出ちゃったじゃないの!
タナトスは私を後ろからそっと抱きしめて、私の唇に重ねてきた。
ちゅ………
あ、これがキスなんだ。
何だか、身体が少し熱くなるような感じがする。
これって霊力が私に流れ込んできているってこと?
すっごく優し………うぐぅ!?
刹那、私の初キスは後悔することになる。
タナトスは舌を私の口内にちゅるりと入り込んでくる。
私は不意を突かれ、思わず驚きとともに口を大きく開いてしまう。
そこに暴走したタナトスの舌が私の舌に絡みつくようにちゅるちゅると絡まり、そしてしごき始める。
「―――――――!?!?」
「うーん。美味だよ。美琴は本当に可愛い」
後ろから抱きしめられているから離れられないし、いつのまにか腕の力も強くなっていて、絶対に逃がしてくれない様相だ。
すっごく荒々しい! 怖い! でも、凄くキスが熱い!
霊力が流れ込んでくる! 熱い! 熱い! すごく熱いよ――――――っ!!
「――――――♡♡♡♡」
ビクンビクンビクン!!!
ちょ、ちょっと待って……!? 私、キスで何だか気持ちよくなってるんだけど……。
あり得ない。こんなのあり得ない!
初めてなのと、緊張の中で荒っぽくされて吃驚しちゃっただけよ!
私は呆けていた。顔の火照りを落ち着かせるために少しの間、ボーっとさせてほしかった。
これがキス―――。
ていうか、コイツには言いたくないけど、普通、初キスで感じたりしちゃう!?
てか、バレてるだろうなぁ……。ちょっと痙攣して仰け反っちゃったし……。
いや、普通に無いでしょ、こんなキス。
てか、何てエロ死神なんだ。
今後、霊力を分けてもらうためには、これを繰り返さないといけないのかと思うと、何だか複雑な気持ちだわ。
「美琴が気持ちよさそうに小さく痙攣しているから、体内にいっぱい注いであげたよ。漏れ出ちゃうくらいにね」
「ちょ、ちょっと!? 言い方ってものがあるでしょう!? 言い方が卑猥過ぎよ!」
「ん? 何が?」
「い、いや、何でもないわ……」
「まだ、美琴は初めてだから、あ、やっぱりもう漏れ出てる感じだね」
「だーかーらー! 言い方! 何だか本当に卑猥なんだけど! それにタナトスのキスの仕方がエロ過ぎるっていうか、慣れ過ぎてるっていうか……! 何だか、愛人レベルの粗雑な扱いをされたような気がするんだけど!」
「もう少し、お姫様っぽいのが良かったってことかい?」
ひぃぃぃぃぃぃぃっ!?
コイツ、イケメン過ぎるから、私の顔を覗き込んできたりするのは明らかにルール違反でしょう!?
本当に私がやってたハーレムゲームの攻略対象みたいなんだもん!
「と、とにかく、あんまり激しいのは止めてよね!」
「美琴がイっちゃうからかい?」
ボッ!!!
突如、顔から湯気が出た。と、同時に、タナトスの頬を
「あ、ああ、ごめんなさい!」
「俺こそごめんね。ちょっと悪戯が過ぎたね」
ニッコリと微笑む死神さん。
いや、怖いって、すぐにでも首ちょん切られそうな気分なんだけど……。
「じゃあ、霊力も充填されたことだし、翔和の家に行くわ!」
私は気分を入れ替えて、嬉々として翔和の部屋に向かうことにした。
すでに時刻は午前2時ごろ。
翔和も翌日の授業に向けて、就寝しているところだろう。
私は翔和を目の前にして、腕組みをする。
「ん? ここまで来て悩み事かい?」
「いえ、まあ、今日は存在を知ってもらおうと思うんだけど、それほど私の霊力がないんだから大袈裟なことはできないんだろうなぁ…と思ってね」
「じゃあ、金縛りと残像でも見せればいいんじゃないの?」
「それ、どうやってするの?」
「まずは相手の手足を押さえつけて、霊力を手足に集中することで押さえつけることが可能となるんだよ。そして、目を覚ました時に、自身の霊体を浮遊させることで、相手に残像として思念伝達が出来るから」
「そんな方法があるんだ」
私は早速、翔和に馬乗りになるようにして、手足を拘束する。
そして、霊力を込め始めると、翔和は何やら苦しそうな表情をする。
あー、これが金縛りの起こり始めってやつか……。
私は何だか超常現象の裏側を知れて、ワクワクしてしまう。
「く、苦しい……」
翔和が呻き始めて、うっすらと
このタイミングで霊体を浮遊させればいいのね―――。
「―――――!?」
翔和はありえないものを目撃した表情をする。
翔和から私はどう見えているのかは分からない。
「……み、美琴……!?」
そう翔和から言われた後、私は何かを言おうとするが、浮遊させた霊体がサラサラと砂のように消え始める。
あ、もしかして、霊力切れですかね……。
翔和を押さえつけていた力も失われ、翔和は解放された。
「くそっ! もう少し、恐怖を植え付けたかったのに……」
私は舌打ちをするが、タナトスは首を横に振る。
「その必要はない。霊的現象と言うのははっきりと分からない方が恐怖を受け付ける。だから、今さっきの最後消えていくように美琴が見えなくなっていくのは、アイツにとって恐怖でしかなかったと思うけどね……」
そっか。そんなもんなのか。
これで翔和が私を認識し始めてくれれば、最初の作戦は成功なんだけど……。
まあ、まずはどうやって翔和とともに生きていくのかが楽しみになってきたわ……。
―――――――――――――――――――――――――――――
作品をお読みいただきありがとうございます!
少しでもいいな、続きが読みたいな、と思っていただけたなら、ブクマよろしくお願いいたします。
評価もお待ちしております。
コメントやレビューを書いていただくと作者、泣いて喜びます!
―――――――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます