怪奇!真夏の夜のババア

@maxyamada

第1話

これは私が小学6年生のときに体験した実話です。

私の田舎は福島県の浜通りにあり、夏になると毎年2泊3日で帰省するのが恒例でした。

海、山、川、子供にとっての三種の神器が全て揃った田舎はとても魅力的で毎年親戚の子供達と遊びまわったものです…

日中は僕らを照らす太陽が眩しいくらいに燦々と輝いていましたが、夜になると辺りは一変して暗闇の中に落ちます。

田畑を切る風の音が誰かの叫びに聞こえたり、遠くで船が鳴らす汽笛が怪物の鳴き声に変貌するのです。

一日目の夜、田舎の従兄弟達と蚊帳の中で布団を並べて怪談百物語をしました。

懐中電灯を蝋燭に見立て、一つ話すとライトを消して次の人にライトを回す

それを百まで繰り返すのですが、いつも途中で寝てしまいます。

その年は従兄弟の太郎がこんなことを言うのです

同級生が夜に畑を歩いていると、ライトの先に人がしゃがんでいたそうです。

何しているのかと顔を照らすと口元から血を滴らせ、何かの肉片をむ貪っていたそうです。

怖くなってすぐに走って逃げてしまったけどあれは人間じゃなかったと話しているそうです

その畑の近くには線路があり、毎年少なからず事故が起こる路線だそうで、その線路は私の田舎のすぐ真横も走っているのです…


その日はいつもの様に寝落ちてしまい、気づいた時には次の日の朝。

昨夜のことなどすっかり忘れて一日中を遊びに使いやし、夕方にはもう寝落ちてしまいました。


ふと目が覚めたときは辺りは真っ暗。

辛うじて蚊帳の中で他の子供達が寝ているのが分かる程度の夜目しか利きません

近くにあるはずのライトを手探りで見つけ、スイッチを押すと眩しいほどの閃光が天井を映し出します。

自分の立ち位置が確認できるとホッとすると同時に時計を確認。

すると時間は夜の10時を回ったところでブルブルと尿意を覚えた私はライトを手にしたまま玄関に向かいます

田舎の便所は家の中には無く、田畑の間を突き抜けた先にポツンと離れになって立っているのです

田舎では畑に肥溜めを利用する為、大して珍しい作りではないのですが、都会育ちで慣れてない私の恐怖を演出するには十分なシチュエーションでした

ライトを手にしながら小走りで田畑を駆けていると、ふと目の前に人影が飛び込んで来ます…

こんな時間に畑に人が…?

冴え切らない頭でそんなことを考えていると真横を終電と思われる鉄道が轟音を立てて通り過ぎます

鉄道の強烈な光が田畑に向けてしゃがみ込む人物を鮮明に照らし出すと…

映し出されたのは祖母の着物でした…


鉄道が遠方に去り、静けさが戻ってくるまでの間に、私は昨夜の太郎の話しを思い出していました。

まったく同じシチュエーション…

まさか太郎の友達が見たのもおばあちゃん??

そんな疑念が頭を過ぎりましたが、もはや逃げ場もないと意を決した私は、その人物にライトを向けて話しかけました。


「だ、誰だ!こんな時間に何をしている!」


するとその人物はゆっくりとこちらを振り向きます…

完全にこちらを向いた目線がギロリと私を突き刺しますが…

どう見てもおばあちゃんです

そして口元から血のような赤い汁を滴らせています


「ばあちゃんじゃないか!いったい何を食べているんだ!」


と手元を照らすとそこには食べかけのトマトが!


だってお腹すいちゃったんだもんとキョトンとしながら語るババアに殺意を覚えたところで畑からぞろぞろ出てきた家族からドッキリのネタばらし

これにはターゲットも思わず苦笑い


都会育ちの僕を楽しませようとドッキリまで仕掛けて貰ってサンキューでした♪

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