第18話.精霊達の力と一筋の涙
テントを出ると、オニ達からは少し距離を取る。
「みんな悪いな、付き合わせてしまって」
クオンは、耳レーダーが動いてはいるが久しぶりの外を満喫しているようだ。
ルーク達は、俺の周りを旋回している。進化した姿と力を発揮したくて張りきっている。
ムーアは、らしくない。自分の蒔いた種に少し気まずそうで、俺と視線は合わせない。
ブロッサは、助けられた時と違ってドッシリ構えている。自己アピールする絶好の機会なんだろう。
「誰が一番、分かってる」
クオンの冷たい声に、精霊達の全員が頷く。
今、完全に俺の精霊達の関係性が構築された。今後、俺の精霊達はクオンを頂点に構成されていくの・・・だろう。
「問題ない」
「お、おうっ」
クオンの言葉に現実に戻される。
「クオンとルーク達は分かるけど、ムーアとブロッサの実力が分からない。ムーアから見た、俺達の実力を教えてくれ!」
『私が言っていいの?』
「思う事を言うのが契約だろ、違ったか?この世界の強さの基準が俺は分からない。俺達とオニやゴブリンを比べたら、どれくらいなんだ?実力が分からなければ戦えないだろ!」
『そうね、分かったわ』
「らしい顔に戻ったな!」
『煩いわね。普通に戦えば、ゴブリンよりオニの方が強いわ。ただゴブリンを組織する個体が居れば大きく変わるわ。隠れる場所が多い草むらや森で、組織されたオニ族は不利ね。数も3倍以上だったら絶望的よ!』
「俺達となら?」
『普通に戦えば負ける事はないわ。私もブロッサも中位の精霊。クオンは中位の下。ウィスプ達は下位の上くらいの力はあるの。魔法の力の差は大きいのよ。下位のゴブリン相手なら問題ないわ!』
「だけど、ブロッサはゴブリンに捕まってんだろ?」
『相手に上位種がいて、ブロッサが頭が悪いからに決まってるでしょ!』
「違ウ、私ハ頭悪ク・・・」
「時間、貴重」
クオンが瞬時に脱線した話を、元に戻す。
「それじゃあ、何が問題になる?」
『問題はオニ族ね。オニ族をカバーしながら戦える?私達は貴方から離れれば、魔力切れの可能性が出てくるのよ』
「俺の近くで集まって戦えば魔力切れは起こさない。だけどオニ達は助からないって事か」
『そういう事ね!』
「クオン、ゴブリンの様子はどうだ?」
「東の森から40、北の草から40、さらに後方に20」
「ゴブリンを倒す必要はない。動けない程度に無力化して、東側を突破出来ないか?」
『出来るかもしれないけど、今回は下位魔物で体の小さなゴブリンが相手って事を忘れないでね!』
ムーアの話では、どれだけ効率良くゴブリンを無力化するかがポイントになる。ウィスプ達の場合、元々カンテは広範囲攻撃が得意で、サンダーボルトを拡散していった結果、広範囲型のサンダーストームの魔法になった。
メーンは、カンテとは逆でサンダーボルトをより集中していった結界、射程範囲が広く貫通性のあるビーム状なった。
ルークは、更に集中する事に特化し、サンダーボルトのエネルギーを身に纏った。接近戦では破壊力は1番。
それぞれの個性はあるものの、得意不得意の問題でサンダーボルトは使える。カンテ程ではないが、少し拡散してサンダーボルトを打つとこは可能みたいだ。
ムーアの場合、直接攻撃するような魔法ではなく、相手の精神状態に働きかける間接魔法になる。
アルコール摂取量や進度に応じた変化に近く、軽い程度なら“士気高揚”。程度が重くなるに連れ“狂喜乱舞”、“酔歩蹣跚”、“酔眼朦朧”となる。
程度の軽い狂喜乱舞なら広範囲で、程度が重くなるに連れ範囲は狭くなる。無力化させるなら、狂喜乱舞で十分に効果があるのは、前回のゴブリン戦で確認している。
ブロッサの場合、今回の作戦では一番向いているタイプになる。魔法による攻撃は、主に“ポイズンボム”、“ポイズンブレス”、“ポイズンミスト”の3種類。
ポイズンボムは1番効果は高いが範囲は狭く、ポイズンミストは効果は低いが範囲が広い。毒の強さはブロッサが自由に変えれる。
今回の戦いでは、ポイズンミストが鍵を握る。毒の霧はゴブリンを無力化するだけでなく、追ってくるゴブリンの侵入を防ぐ役割も果たす。また森の中なので毒の霧が飛散しにくい。
『ゴブリンを突破して逃げる事は可能だと思うわ。もちろんクオンの探知がなかったら無理な話よ。相手の位置が丸分かりなんてチートね、チート!』
「それで、俺の力はどれくらいなんだ?」
『契約して分かったけど、貴方の持っている魔力は化物ね。全体量が全く見えないし、融合している精霊も把握すら出来ないわ!』
「それは分かったから、俺の実力はどうなんだ?」
『何でも言うって契約ではないでしょう。忖度って知ってる?』
「・・・・・・」
俺は仲間達の中で1番弱いのか・・・。今は黙って受け止めるしかない。
俺は静かに振り返る。涙は見せない。
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