第12話.ソーギョクと酒の精霊

 2時間後、本隊のソーギョクが率いる30人の部隊が到着する。


 風の部族が10人

 土の部族が10人

 水の部族が3人

 火の部族が5人

 ソーギョクの側近が2人の合計30人の集団になる。


 風と土の部族は、和弓を持ち腰には矢筒とショートソードを帯剣している。水の部族は杖を持ち、帯剣はしていない。火の部族はショートソードを帯刀し、背中には大きな荷物を背負っている。


 火の部族はヒケンの森では不向きな存在で、下手な魔法を使えば山火事を引き起こしてしまう為に、特に森での活動の場は限定される。

 ただ何もしなければ活躍の場もなくなり、部族の立場も弱くなってしまう為、下働きが中心となってしまう。


 その集団の中から、1人のオニが進み出てくる。他のオニ達と比べると頭1つ低いが、金色の角が中央と左右の3本あり、光属性のソーギョクである事は間違いない。髪の色も金髪で、真っ直ぐな髪は腰まで伸びており、どうやら女性であるようだ。


 ソーショウがソーギョクの前に跪き、何か報告をした後、ソーギョクとソーショウが俺の所に近づいてくる。


「私はソーギョク、ヒケンの森オニ族の族長になる。今回は、命を助けられたと聞いている、礼を言うぞ」


 跪く必要があるのかどうか、一瞬だけ悩む。臣下ではないが相手の立場もある。そこに続けてソーギョクが話しかけてくる。


「気にする必要はない。臣下でもないし、千人程度の部族の族長で、力や影響力のある部族でもない。村長くらいと思って接して良い」


「いえ、大したことはしてないので。ソーショウ殿だけでも、十分に対処出来たと思います」


「何が起こるかは分からんし、助けられた事は変わらん。礼をしたいが、村に戻らねば・・・」


 そこに目覚めたソーキが乱入してくる。


「忌み子のせいで失敗しかけましたぞ。ソーショウ、どう責任を取るのだ!」


「ソーキ、命の恩人の前で失礼だぞ。控えよ!」


「私は原因を見つけたのですぞ!」


「話を続けて下さい。俺の話は、村に戻ってからという事で構いませんので」


 そこに、ソーショウが割って入ってくる。


「それなら、カショウ様も一緒に話を聞いてもらってはいかがでしょうか?カショウ様は、私よりも強い。後で正式に依頼するにしても、同じ話をする訳ですし、大差は無いと思いますが」


「そこまでに強いか?」


「部外者は信用出来んわ!」


 ソーキが大きな声を出す。


「ソーキ様、命を助けられたのですよ」


「忌み子のせいじゃ!それと忌み子が連れてきた者のせいじゃ!」


「それなら、私から依頼しようかしら?」


 ソーギョクの後ろから、赤髪の女が現れる。


「うっ、だ、誰だ、お前は!捕まえろ!」


 その瞬間、ソーキの顔面が吹き飛ぶ。地面に叩き付けられた頭はボールのように弾み、やがて動かなくなる。

 体は痙攣しているので、生きてはいるのだと思う。この衝撃からすれば、確かにゴブリンの矢ぐらいは大丈夫なのかもしれない。


「その痴れ者を、片付けておけ!」


 ソーギョクの言葉に、ソーキが連れていかれる。


 それを見届けると、ソーギョクが赤髪の女に向き直り畏まる。


「精霊様、それはどう言う事でしょうか?」


「私もいろいろあってね。周りがうるさくて、新し物を探してるのさ」


 精霊が俺に近づいてくる。


「カショウといったかな。私は酒の精霊。貴方、精霊を探しているのでしょう。私の依頼を受けてくれれば、契約してあげてもイイわよ」


「依頼内容すら聞いていない。それに、全然知らないあなたの依頼を受けろ言われても・・・」


「酒の精霊の魅力を教えてあげるわよ。ソーキを連れてきて」


 引きずられて連れていかれたソーキが、再び引きずられて戻ってくる。


 精霊がソーキに手をかざすと、小さなうめき声を上げて目を覚ます。さらに手をかざし続けると、ソーキの顔が緩み目がうつろになる。


「ソーキ、湖の水質悪化の原因は何かしら?」


「ゴブリンが湖に毒を流している。詳しくは分からない。ゴブリンに見つかった」


 精霊が手を外すと、ソーキは口から泡を吹いて意識を失う。


「どう、私の力は分かったかしら」

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