トレーニング歴999年の新人ハンター、モンスターあふれる現世で駆逐していく

ハーーナ殿下@コミカライズ連載中

プロローグ

 高層ビルの立ち並ぶ中、巨大な飛行生命体ドラゴンが空を覆っていた。


 それに対するのは自動小銃と近未来的なハードスーツを着込んだハンターたち。


 ――――バッ、バッ、バッバッ!


 彼の銃から発射される弾丸が、魔力が込められた特別製。

 通常の銃火器の十倍以上の威力で発射されていく。


 ――――カン! カン! カン!


 だが特殊な魔の加護を有する異世界のモンスター。その中でも上位種であるドラゴンの頑丈な鱗に弾かれてしまう。


「くそっ……この徹甲弾でもダメなのか⁉」

「もっと大口径の武器はないのか⁉」

「せめてAランクのハンターがいてくれたら……」


 今回ゲートから突然出現したドラゴンは、モンスターランクA以上の強敵。彼らBランクのハンターではダメージすら与えられないのだ。


『ギャラララァアア!』


 勝利を確信したドラゴンは咆哮を上げる。口元に《火炎息ブレス》を発射しようしているのだ。


「くそっ……ここまでか……」

「このままでは……」


 Bランクハンターの誰もが足を止めてしまう。どうしようもない絶望感に打ちひしがれているのだ。


 ――――だがそんな時だった。


 ――――シュン!


 どこからともなく一発の弾丸が飛来。


 バギン!


 ドラゴンの首元にある逆鱗、急所を貫く。


『ガ⁉……ガルル……』


 攻撃態勢に入っていたドラゴンは、最後の咆哮も上げられずに落ちていく。


 ――――ドッ、スン!


 急所と体内の魔核を貫かれて絶命したのだ。


「な……⁉」

「……い、一撃だと⁉」

「……そんな馬鹿な……⁉」


 Bランクのハンターたちは言葉を失う。

 何しろ強力な魔加護を有するモンスターは、数回の攻撃に分けて魔加護を破壊。

 徐々にダメージを与えて倒すのがセオリーなのだ。


 それなのに今は一発だけの弾丸で、何者かがドラゴンを仕留めたのだ。


 ――――スタッ。


 ドラゴンを仕留めたハンターが姿を現す。

 そのハンタースーツの腕章を見て、Bランクのハンターは更に声を上げる。


「ば、馬鹿な……Dランクハンターだと⁉」

「ど、どういうことだ⁉」

「Dランクハンターが一撃で⁉」


 自分たちよりも遥かに下のDランクハンターが、一撃でドラゴンを駆逐。

 何が起きたか誰も理解できないのだ。


「いや、一発ではない」


 Bランクハンターのざわめきが聞こえたのだろう。黒髪ハンターは無表情で答えてくる。


「三発でコイツを仕留めた」


「さ、三発だと⁉」

「だが発射音は一回だけしかなかったぞ⁉」

「そのドラゴンの弾痕も一発分だけだぞ⁉」


 彼らも救わたとはいえ上位Bランクハンター。発射音と弾痕の間違えるはずはないのだ。


 そんなハンターたちに青年は無表情で答える。


「0.1秒の間で三発を打った。同じ弾道で。だから勘違いするのも無理はない」


「「「――――っな⁉」」」


 誰もが絶句する。

 青年が平然と答えたが、セミオートのライフル銃で自力での三連射。

 そんな神業はSランクハンターでも不可能に近い。


「あ、あんた何者だ……?」

「いったい……?」

「どうやって、そんな神業の習得を……?」


 ハンターたちはようやく気がつく。

 目の前の男が普通のハンターでないことを。


「俺は新人ハンターの鉄山リュウジ。事情があって999年ほど基礎トレーニングを積んできただけだ」


 こうして規格外の新人ハンターであるリュウジは、シミュレーションマシンに閉じ込められていた5年間のことを、体感で999年間の基礎トレーニングのことを思い出すのであった。

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