第34話 女騎士チョロすぎ完堕ち♥
決着はあっけなかった。
全てが初めての経験のアクメルには自分を自分で無くしてしまうような破壊力を秘めていた。
「や、やはりだめだ! これ以上我を辱めるな……くっ、殺せ!」
「生かしてイカす!」
「ふぁぁぁあああ~~~♥♥♥」
果てしなく飛んでいく意識の中で、アクメルはこれまでの人生が走馬灯のように駆け抜けた。
シルファン王国が誇る若き英雄。
女騎士・アクメル。
誰もがその将来を嘱望し、王国を超えて世界に轟く英雄、いや勇者にすら名を連ねるのではと夢を見た。
貴族の家系に生まれ、騎士としてのあらゆる才に恵まれ、その志しや勇猛さ、そして美しき容姿に国民が湧いた。
――そう……我は騎士……
女騎士アクメルは、そんな己自身を振り返っていた。
――我は……生まれた時から、そして物心ついてからも騎士になりたかった……民を、王を、姫様を守る……何のために?
騎士の家系に生まれたために、何の疑いも無くその道を進んできたアクメル。
だが、今まで考えたことも無かった素朴な疑問が浮かんだ。
――我はなぜ騎士になりたかったのだ……?
自分の原点。疑うことなく進んできたその道は、そもそもどうして?
――つらい鍛錬の日々……同世代の女たちが恋をしたり、おしゃれをしたり、友たちと遊んだりしている中で黙々と己を高めて脇目もふらずに今日まで駆け抜けた……なんのため?
それは生半可な道ではなかった。
つらく苦しく、何度もへこたれそうになることもあった。
同世代の娘たちが色恋や娯楽やおしゃれに時間を費やし、平和な日常を笑顔で過ごしているというのに、どうして自分は?
――幼き頃から、騎士の家系に生まれ……父上や母上の周囲の期待に応えるため……どうして応えたいと思ったのだろうな……?
歩んできた道に後悔はないが、その原点をどうしても思い出せなかったアクメル。
しかし、そんな遠のく意識の果てで唯一分かっていることもあった。
――でも、我が何のために騎士になったのか……それが今になってようやく分かった……
そう、きっかけは分からないが、それでも自分の歩んできた道の果ては何のために繋がっていたのか?
――それは……
「アクメル……まだ寝てんのか? 起きないと……キスするぞ~♪ ……ぶちゅっ!」
――エイセイと出会ってラブラブになるためだ♥♥♥
「……ふごっ!? はうぅ、んぶ!?」
呼吸が苦しくむせてしまう。
「ふふ~ん、いよぅ、目を覚ましたか? お嬢様?」
「ッ!?」
アクメルが目を覚まして真っ先に見たのは、微笑む一人の男。
その男は裸で、宿屋の安ベッドの上で自分の傍らに寄り添うように一緒に寝て、寝ている自分にキスをしていた。
「あ……エイセイ……」
それは、英成。
「ほら、お目覚めのチュウ」
「ふぁっ、ちょ、んま、あむっ……ん♥ ……ぷはっ、て、ち、違う! 貴様、なな、何をやっている!」
アクメルがポ~ッと呆けた表情をしていると、英成はさらにニタリと笑って、アクメルの顎を持ち上げて、その唇を再び塞ぐ。
その瞬間、寝ぼけていた意識が完全に覚醒したアクメルはハッとして思わず英成を突き放した。
「ききき、貴様ぁあ……」
アクメルが顔を真っ赤にして、そして騎士とは思えぬ涙目で英成を睨みつける。
思い出した。
自分の身に何があったのか。
自分たちはナニをしていたのかを。
それは、身に着けていた鎧や衣服、さらには下着までもがベッドの下に投げ捨てられて生まれたままの姿である自分自身と、今日にいたるまでずっと守り続けていた純潔を失った身体に残った痛みなどが、全て現実だとアクメルに突き付けていた。
「ね、寝ている時にするなぁ! だ、だいたい、さっきも……うぅ~~~ぐっ……」
怒りのまま立ち上がろうとしたアクメルだが、プルプル震えてしまっている。
「こ、腰が抜けて……貴様ぁ~~~!」
「カカカ、最高だったぜ~、刹華以来の全力だった♪」
「ッ!?」
だが、その英成の一言にアクメルはムカッときて、握った拳で英成に……
「貴様ぁ! わ、我と二人きりの時に、他の女の話を、す、するなと言ったであろう……」
ぽかっ、と軽く殴って、拗ねたように唇を尖らせるアクメル。
そこに、王国が誇る気高き女騎士の面影はまったくなかった。
「その……あのセツカという娘は確かに同性である我から見ても美しいと思うし、貴様が惚れているのも分かる……が……き、貴様とて我にアレだけ興奮して……その、我のことも、す、すきって言ったではないかァ~」
まるで捨てられそうになっている子供やペットのように潤んだ瞳で上目遣いでのぞき込むアクメルを、英成は思わず抱きしめた。
「か~い~なぁ! 抱きしめてチュウしてやる」
「ば、やめろぉ! キスもハグもするなぁ! さ、三回もしたのに……ま、またイチャイチャしたくなってしまうではないかァ!」
英成がギュッとハグして、頭を撫でながらアクメルの頬にキスを連射すると、アクメルは身を捩ってジタバタする。
その様子に英成は笑みが止まらず……
「じゃ~、もっとイチャイチャしようぜ?」
「だ、ダメだ、さ、流石に! こ、これ以上すると今後の仕事や私生活に支障をきたす……さ、最近、我が率いる乙女騎士団で、こ、恋人ができたと言って職務中にデレデレしている部下を叱ったことがあって……わ、我も貴様とのことを思い出して顔がニヤけてしまったり、職務中に貴様とキスしたいとか、え、エッチなことしたいとか思ってしまったら、とと、取り返しがつかなくなってしまう!」
そう、英成の笑いが止まらないのは、アクメルは英成がこれまで抱いた女の中でも間違いなくトップクラスの美貌を誇る女であり、その体を好きにできるだけでも涎が止まらないというのに、その女が英成がこれまで出会った全ての女の中でトップクラスにチョロい女だったのだ。
(レミ姉さんやファソラとまた違うタイプ……これまで恋とは無縁過ぎる生活を過ごしていたがゆえに、一度それに身をゆだねてしまうと、小学生レベルの恋愛脳で、色々と覚え始めの中学生男子みたいに盛っちまう……ここまでチョロいとはな……)
英成が時間をかけて堕としてやろうと思っていたのに、一回目で陥落し、二回目、三回目の交わりで既に完堕ちしてしまったのだ。
「その、貴様がよその国からきて……その国では一夫多妻とか、恋人複数が当然という文化とのことは分かったし、文化の違いはちゃんと受け入れようと思うが……こ、これは独占欲とかそういうことではなく、純粋にこの国では基本的に王族以外は一夫一妻なわけで……その、だ、だから、貴様にとっては普通でも、わ、我としては貴様が他の女も抱いてデレデレするのはやはり面白くないというか……」
日本でも一夫一妻が基本であるが、英成は自分が色んな女と関係を持っていることを開き直っているなかで、アクメルを納得させるためにテキトーなことを言ったら、それをアクメルが信じてしまった。
(ってか、こいつはチョロいうえに、意外とポンコツだな……ってか、嘘はバレないように、あとで刹華と口裏合わせねえと……)
そして、アッサリとアクメルは英成に夢中になってしまったのだった。
「で、おい、エイセイ……キス……しないのか? 寝てるときはダメって言ったが……わ、我、今起きてるし……」
「…………」
「あ、で、でも、舌を入れるのはダメだ! 本当にまたしてほしくなっちゃう! いや、き、貴様がどうしてもというのであれば、ま、またしてやってもいいというか、だ、抱かれてやってもよいぞ♥」
というか、堕ちすぎてしまったのだ。
ここまで来ると、英成も今はよくても、今後の扱いに困ってしまった。
「なぁ、エイセイ……初めに言ったように、我は騎士……身も心も王国に捧げた……ゆえに、貴様ただ一人だけの我になることはできぬ……し、しかしだ、職務の空いた時間とか……きゅ、休日の時とかなら、今日みたいにこれからもイチャイチャしてやってもいいし、だ、抱きたければ抱かせてやっても良いぞ……」
「……ん~……ま、いいか」
とりあえず堕ちてるし堕としたままにしておくかと、英成はニコリと笑って……
「俺にも刹華とか、他にも俺の女はたくさんいるからお前ひとりの俺になれないけど、それでも俺はお前の男だからな♪」
「うん!」
そのまま二人はまたキスして抱き合った。
(こいつの体は今回限りなんて感じで手放すのは惜しい……これからも俺のモノってことで!)
英成自身もアクメルのことを気に入った。
「あ、そ、それと、あの幼子のことなのだが……」
「ああ、別に俺の本当の子供ってわけじゃない。なんか呼ばれてるだけ」
「そ、そうか……な、ならば、別に我が愛人枠だとか、避妊の必要とかもないと……よし♥」
「……あ~、あとでお薬はお渡しする」
そのため、細かいことよりも、ただ楽しむことにした。
既に今日だけで、セツカ、レミとファソラ、そしてこのアクメルと、二桁に達するほど。
さらには、ザッコーダーの配下たちやこのアクメルとバトルにおいても力を使ったので、もはや英成自身も体力の限界。
昼食もまだだというのに今日はもうこれまでだろうと自分でも自覚しながら最後の全力ラストスパート。
「~~~~~~~♥♥♥」
「!!!!!!!!!!」
英成自身も会心満足で、もうこれ以上は何もしないし何もできないと、そのまま深い眠りにつくしかなかった。
そんな自分が寝ている間に……
「ここか! 民たちから報告のあった……」
「突入! 我ら王国乙女騎士団の名に懸けて……アクメル団長! お助けに……ふぁ!?」
「な……あ……うわぁああああああ、団長がぁぁあああ!」
「くっ、この男……この男が隊長を穢したのかぁ!」
「あ、ぁ……アクメル団長……こんな悲劇……意識を失っ……ん? なんだか幸せそうな……」
「しかし、しかし……遅かった! アクメル団長の……純潔が……」
「この男、今その首を―――」
「待て! この男をそんな簡単に処刑してはならん! 姫様の元へ連れて行き、その罪を裁いて頂かなくては!」
「ああ、その上で国民の眼前で晒してくれる!」
「とにかく、団長から早く引きはがして……ふぁっ!? お、お……ふぁあああ!?」
「わ、な、なにこ、これ……男の人の……」
「……すごい……ごくり……これが団長を……」
「って、ちょっと待って! この人……れ……レベル32!?」
「本当だ! レベル30を超えてる……ザッコーダは29なのに……って、団長のレベルって45じゃなかった?」
「あっ、あれ? 団長のレベルが49に……」
さらには、カミラや刹華が丁度いないときに、まさかそんな騒動が起ころうなど、英成にもアクメルにすらも予想外。
「あ、あの、騎士団の皆さま、その、えっと……エイセイくんは悪い人ではないといいますか……あっ、そんな! お待ちください! エイセイくんを連れて行くのは……あ!」
「ふぇーーーん、おとーさんをつれてかないでー!」
宿屋の庭でアレだけの大騒ぎをしたのだ。
ましてや、国の英雄であるアクメルが敗北し、そのままいやらしい笑みを浮かべた男に宿屋の部屋に連れ込まれてしまった。
そんな報告を受ければ国の騎士団も動くに決まっていた。
大事な仲間であるアクメルを救いに来た乙女たちは、英成とアクメルが情事を終えて安らかに眠っているところに侵入し、そのまま二人を連れて行ってしまったのだった。
そう、英成はヤリ終えて寝ている間にシルファン王国の宮殿に連行されてしまった。
――あとがき――
夜の投稿です~
本作はカクヨムコンテストに参加させていただいております!
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何卒ぉおおおおお_(꒪ཀ꒪」∠)
今後の執筆のモチベーションが高まりますので、ぜひ応援よろしくお願いします!
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