第32話 女騎士とイチャイチャするため

「つっ、……うぅ……ここは……ッ!?」


 目を覚ましたアクメル。見慣れない少しボロい天井。少しぼーっとしたが、すぐにハッとなり、体をガバッと起こす。

 簡素な部屋のベッドに寝かせられていた自分。そして傍らには……


「いよ~う。目ぇ覚めたか? 騎士様?」

「き、貴様ァッ!!」


 ベッドの傍らの椅子に座っていた英成。意地の悪い笑みを浮かべている。

 アクメルも状況を確認。衣服に特に乱れがあるわけでもない。

 変わっているのは自分の白銀の鎧が外されてベッド脇に。そこには剣も並べている。

 そして重要なのは、自分の四肢が縛られているわけでもないという事。



「ここはあんたがやってきた宿屋の一室だ。気を失ってたんで、俺らが泊まっていた部屋にとりあえず……な」


「…………」


「頭……ちょっと腫れてるけど大丈夫か?」


「…………」



 アクメルは再度自分の身を確認。体は動く。最後の頭突きの所為で額は少し痛いが、それ以外は問題ない。

 隙だらけの英成を殴って剣を取って制圧することは容易だと確認。

 それを踏まえて……


「私を介抱したのか……どういうつもりだ? 縛りもしないで」


 自分が気絶している間に何もしなかった。そのことが意外で英成に尋ねるアクメル。

 すると……


「あ? 縛る? なんで?」

「なんでって……一応、我は貴様を……その、叩きのめそうとして……」

「だから、何でだよ。もうあんたは俺の女なんだから、縛る必要もねえだろ?」

「……は?」


 キョトンとした顔で平然と言う英成の言葉に、アクメルは一瞬理解できなかった。


「は? って、おい。言っただろ? 俺があんたに勝ったら、あんたは俺の女になって、エッチなこともいっぱいさせてもらうって」

「……は……あ゛?」

「で、俺は勝っただろ? まぁ、刹華も一緒だけどな。つーわけで、あんたは今日から俺の女なんだから、縛る必要なんてねえだろ?」


 確かに、英成はそれを口にしていた。しかし、そんなことをアクメルは当然了承などしていない。

 しかし、それを当たり前のように口にする英成に、呆れを通り越して、アクメルには怒りが込み上げてきた。


「貴様……人を馬鹿にしているのか? 我に貴様の女になれ……だと?」

「ああ」

「……ざけるな……」

「ん?」

「ふざけるなぁあああああああああああ!!」


 ドンっと、宿の外まで聞こえるのではないかという怒鳴り声。

 英成も思わず耳を塞いだ。



「ったく、うるせーなぁ、オルタをレミ姉さんに任せててよかったぜ……」


「貴様は、貴様は! 騎士たる我に何たる侮辱を! この体を……貴様に? フザケルナァ! 誰が貴様なんぞに穢されるものかぁ! そんなことをするぐらいなら、今すぐに舌を噛んで死んでやるッ!! 女を性的な道具としか見ない最低最悪のクズめが!」



 まさに、誇り高き騎士としての尊厳。その身を辱められるぐらいなら死を選ぶ。

 アクメルは本気だった。

 しかし、英成は…… 



「俺はふざけてねーよ、本気さ。女を道具としてしか見ない? んなわけねーだろうが」


「貴様……この期に及んで何を……」


「だって、そうだろ? 単純にあんたとエッチなことをするだけだったら簡単だったんだぜ? だって、あんた気絶していたわけだし、寝ている間に犯せば良かったんだしよ」


「ぬっ……」


「でも、それじゃあただの最低な強姦魔だ。あんたの言うように女を性的な道具としてしか見ないな。でも、俺は違う。俺はあんたと愛し合いたいから、こうしてあんたが起きて、あんたと合意の元で和姦したいんだよ」


「………ん……んん~~~?」



 平然とストレートに開き直った発言をする英成に、アクメルは思わず反応に困ってしまった。

 そして心の中で


(な……何だ~この男は?)


 一方で英成は……

 

(こういうプライドの高そうな女は無理やりは絶対にダメだしな……メチャクチャな理論をこねくり回した上で、プライドを刺激して和姦に持ち込む!)


 全ては、アクメルと和姦に持ち込むことしか考えてなかった。



「とりあえず、俺はあんたと今からキスしたりイチャイチャしたいんだけど……ダメか?」


「……ん……って、当たり前であろうが! 誰が貴様なんぞに!」


「でも、あんた負けたじゃん」


「ま、負け……そ、そうだが、それでも負けたらそういうことをすると了承してない!」


「でも、否定しなかったじゃん」


「そ、それは、あ、あまりにもバカバカしすぎて答えるに値しなかっただけだ!」


 

 淡々と冷静にメチャクチャなことを口にする英成に対して、アクメルは怒りより混乱の方が大きくなってしまった。

 ただ、そこで英成は立ち上がり……


「はァ~、そうかい……分かったよ」


 そう言ってため息ついて立ち上がる。強引に犯すのか? と一瞬身構えたアクメルだが、英成は背を向けて部屋の扉の前に立つ。

 そして、ドアを開け……



「じゃあ、いいよ。もう分かった。さっさと家に帰りな、お嬢さん」


「……へ?」


「お家の人が心配しているぜ?」



 犯すわけではない。

 何もしないで帰らせる。

 そのあまりにも意外な展開に、アクメルは更に戸惑ってしまった。


「ど、ど、どういうことだ?」

「どういうこと? 所詮あんたは、か弱いただのわがままなお嬢様ってのが分かったから、興味が失せただけだ」

「ッッ!?」


 英成のその言葉に、アクメルは再び顔を怒りに染めて、そして立ち上がる。


「ふ、ふざけ、貴様ァ! どこまで我を愚弄する気か! 訂正しろ!」

「…………」


 気絶して敗れたものの、怪我自体はそれほどのものではないアクメル。

 再びその脅威のレベルを解放。


(うおぉ、コレは一歩間違えたらマジでぶっ殺される……が、落ち着け。あくまでクールに、つまらなそうな顔で応対……全ては、このイカした体を和姦に持ち込むため!)


 内心では英成はハラハラしていたのだが、表面では落ち着いたように見せていた。

 そして……



「俺があんたを抱きたいと思ったのは、あんたが本当に誇り高い騎士だと思ったからさ。だからこそ美しいと思った」


「な、に……?」


「曲がったことが嫌いで、まっすぐで、誇り高く、民たちからも憧れの眼差しで……俺みたいなクソやろうとは別世界の存在。だからこそ、せめて戦闘であんたに勝つぐらいのことをしてみせれば、あんたを正面から口説きに行ける……なんて思ったのさ」


「ぬぅ、あ、う……むぅ……」



 英成のストレートなアクメルに対する賞賛の言葉。アクメルも少し照れた様子。

 だが、そこで英成は……



「でも、俺の間違いだった。あんたは結局騎士がどうのこうのじゃなくて、女である我が身がかわいいだけだった」


「ッ!?」


「そんなその辺にいる、レベルが高いだけのお嬢さんのような相手に頭下げてまで口説く気はねえ。ほら、さっさと帰れよ。ザッコーダとその部下は俺のツレがとっくに換金所みてーなところに連れて行ったみたいだし、もう用もねーだろ?」




――あとがき――

夜の投稿です~


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