第29話 姉妹は両方俺のモノ♥

「すごい……エイセイくん……セツカちゃんも」

「お兄さんが……あの、アクメル様を……すごい」


 宿屋の看板姉妹のレミとファソラは惚けてしまっていた。

 途中は目の前で起こる戦闘に怯えて震えるだけだったが、今は違った。

 自分たちをベッドで抱いた男が屈服せずに吠え続け、その結果、国の英雄すらも倒してしまった。

 一国民としては、そのことに悲しんで恐怖しなければならないだろう。まさに、現在宿屋の周りにいる観衆や、自分たちに想いを伝えてくれたソーチンやカムリのように。

 しかし、女としては……


「なんて逞しいの……」

「ベッドでは、優しくて、激しくて……でも、最後は赤ちゃんみたいに甘えたりするのに……本当に強くて……」


 それは、自分に想いを伝えてくれた男たちへの後ろめたさなどどうでもよくなってしまうような衝撃だった。



「おっと、女騎士は後でゆっくり喰うとして、その前に……レミ姉さん、ファソラ」


「「ッッ!!??」」



 倒れたアクメルをそのままいやらしい笑みを浮かべたまま犯しそうな雰囲気だった英成が、突如振り返ってレミとファソラを呼んだ。

 次の瞬間、二人はビクッと震える。

 二人に振り返った英成は変わらない笑みを浮かべたまま二人へゆっくりと……


「や、やめろぉ! ファソラに……ファソラに近づくな!」

「レミさんには手出しさせないぞ!」


 危ない。そう感じたソーチンとカムリの二人が、先ほどと同じように震えながらも英成の前に立ちはだかる。

 だが、英成はケラケラ笑って……



「安心しろよ。別に俺は二人に酷いことをしようだなんて思ってねえよ……ただ、謝りたいだけだ」


「「え……」」



 その予想外の言葉に驚く二人の横を、英成が通り過ぎる。

 レミとファソラも驚いている。

 英成に怯えて、ソーチンとカムリの告白に戸惑ってしまったのは自分たちの方。

 それなのに、なぜ英成が謝るのか?

 それは……


「騒ぎを大きくして……怖がらせちまったな。レミ姉さん、ファソラ。悪かったな」


 怖がらせてしまったこと。そのことを英成は謝罪。


「お、お兄さん……」

「エイセイくん……」


 英成は優しく二人にそう伝え……そして……そのまま二人を抱き寄せて……


「ほれ、お詫びのキスだ。んじゅる」

「ふぇ……んむぅッ!?」

「……え!!??」


 まずはファソラの唇を塞ぐ。


「は? ……んなッ!? て、テメエッ!!」


 一瞬目の前で何があったか分からないソーチン。

 だが、英成は構わず……


「んちゅっ、る、じゅぶる」

「むっ、むーーーー! ぷはっ、ちょ、お兄さ、んむっ!?」

「怖がらせねえよ。キスもエッチも優しくしてやる♪」

「ッ!?」


 抱き寄せたファソラに乱暴にではなく、チロチロと優しくゆっくりとしたペースのキス。

 突然の予想外の事態に、ファソラの全身が強張り、抵抗しようとする……が……


「ファソラー! この野郎! ファソラから離れ……」

「ん、あ、ん、ちゅっ……ちゅぷ♥」

「ファ……ファソラ?」

「あ、んちゅぷ、おにいひゃん……んもう、えっちぃ……」


 一瞬だけ嫌がって抵抗しようとしたファソラだが、気づけばトロンと蕩けた表情で、ファソラの方からも英成の舌に絡めるキスをしていた。


「ぷはっ……ほら、レミ姉さんも♪」


 そんなファソラの隣で顔を真っ赤にしているレミ。

 英成は当然忘れてないと、ファソラから口を離し、まだファソラの唾液にまみれた唇を拭わずに、そのままレミにキスをした。


「ちょ、エイ……んむっ!? ちょ、人前で、ん♥ ……ん♥」

「レ……レミさん……」


 もはやレミは抵抗すらしなかった。

 自身の口内に英成の舌が侵入することを、口も歯も閉じずに自らが受け入れていた。


「ふぁ~、おとーさん、またチュッチュしてるー!」

「はぁ……相変わらず……クズですねぇ、あなたは」


 興味津々にワクワクした表情のオルタに、呆れ顔の刹華。

 そしてショックを受けて腰を抜かすソーチンとカムリ……


「「「~~~~♥♥♥」」」


 気づけば、中央に三人でトライアングルキスをしている。

 既に身も心も英成に堕ち切っていたレミとファソラは、親しい男たちの告白に一瞬我を忘れたが、すぐに元に戻った。

 もっと早くに告白していればこんなことにならなかったかもしれないが、もう―――


「や、やめろぉぉおおおお! ファソラ、離れろよぉ! お前も離れろよぉ!」

「レミさん、う、うそだ、脅されているんだろ! 分かっている、おい、君! レミさんからその汚い唇と手を……」


 二人は無理やりされている?



「ごめんなさい、お兄さん。お兄さんにあんなにかわいがってもらったのに、違う男の子に告白されちゃったぐらいで、お兄さんにおびえたり……」


「わたしも、ごめんなさい……エイセイくんに、あんなに……女に生まれてきたことを幸せだと感じれるほどシてくれたのに、私の知らなかったことを教えてくれたのに……」



 もう、二人の方から英成を求めていた。

 街でも評判の可憐な看板姉妹。それがまるで娼婦のように淫らな顔をして、一人の男に身体を擦り付けている。

 その事態に、ソーチンとカムリだけでなく、集まっていた民たちも呆然としている。



「そうだなぁ~、二人も悪いんだよなぁ。二人はもう俺の女なのに、二人を好きだって告白した男に対して思わせぶりなことをするからさ~……挙句の果てに俺のことをクソ野郎とか暴力野郎とか言うようなひどい奴らにさ~」


「ご、ごめんさい! お兄さん、もう迷わないよぉ!」


「私もだよぉ、エイセイくん、ごめんね……」



 元々初エッチで姉妹は既に征服されて堕とされていた。

 英成のエッチだけでレベルを測定できるなら、既に10階組織を名乗れるかもしれなかった。

 一瞬、身近な男たちからの告白に我に返りそうになった二人だが、もう戻らない。


「そっか~、それじゃあ二人とも……ボソボソ」

「え!?」

「ほら、ちゃんと告白の返事をしろよぉ、そうじゃないと男が可哀想だろ?」

「……う、うん」


 二人の耳もとで何かを呟く英成。

 すると英成は両脇に姉妹を侍らせながらソーチンとカムリへ向き……



「ソ、ソーチンくん、よく見てよく聞いてね……」


「ふぁ、ふぁそら……」


「私はね、今朝このお兄さんとエッチしたの」


「ッ!?」


「最初は怖かったけどね、お兄さんはすっごい優しくて蕩けるキスをしながら私を抱きしめてくれたの……ちょっと痛かったけど、途中から気持ちよくなって、お姉ちゃんも一緒で幸せだったの」


「うぁ、あ……」


「お兄さんはセツカさんとか他にもいっぱいエッチする女の子がいて、私とお姉ちゃんだけのモノになれないって言われたけど、それでもエッチなお友達、セフレ? っていうんだけど、お兄さんのセフレになったら、キスもイチャイチャもいきなりしても許されるんだって」


「な、なにいってんだよぉ……な、なに言って……」


「だから、ソーチン君が好きって言ってくれたのは驚いたけど、私はお兄さんの女になったから、ごめんね。もし昨日までに告白されちゃってたら、私はお兄さんともエッチしなかったし、ソーチン君と、だったかもだけど……」


「ふぁ、そら……目を……さま……せ……ほ、ほら、お芝居のチケット……」


「お芝居? お兄さんとエッチするから行けないし、もうソーチン君と二人きりとかで遊ぶこともできないからごめんね……」



 その瞬間、ソーチンは発狂する。


「うぐぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


 謝罪を終えたファソラは既にソーチンへの興味を失くしたように、トロ顔で英成にキスをせがむ。

 そして……


「カムリさん……」

「れ……れみ……さ……」

「以前、申し込まれた際にもお伝えしましたが……お気持ちは嬉しいのですが……もう、私たちには……」

「ッッ!?」


 ファソラとは違って、申し訳なさそうな表情でお断りするレミ。

 だが、カムリも納得できるわけがなく震えている。



「ど、どうして、そんな……そんなチンピラみたいな男を! 脅されているんだろ! き、君みたいな可憐な乙女が、そ、そんな男に卑猥なことをせがむなんて……」


「確かに……彼はとってもエッチが素敵で、私とファソラを二人同時にとても……で、でも、それだけじゃなくて……それだけではなくて……」


「ッ! こ、このおぉおおおお!」


「きゃっ!?」



 次の瞬間、カムリは涙を流しながら憤怒に染まってレミに掴みかかろうとする。



「ふざけるなぁ! じゅ、10年だぞぉ! どれだけ手があかぎれても懸命に働いて素敵な笑顔を見せてくれる君を僕が何年想い続けていたとぉ!」


「い、いやぁ!」


「昨日今日いきなり現れたようなチンピラのチ〇ポで堕とされたってのか、このクソビッチ女がぁああああ!」



 元来、純朴で誠実で真っすぐな男であったカムリが、怒り狂って汚らしくレミを罵った。

 だが……



「うるぁあ!」


「ごぶっ!?」


「人のセフ……人の女に何を上等こいてんだコラァ!」



 英成のボディーブロー一発でカムリはその場で蹲ってしまった。



「カカカカ、10年も好きなのに手も出せずに、恋人同士にもなれなかったヘタレのくせに何を嘆いてやがる。自分がその女に一番近いから……長く一緒にいた幼馴染だから……だから口を開けてりゃその女が自然と自分のモノになると思ってんのか? んなの大間違いさ」


「が、はっ、……レミさ……」


「欲しいものは称号でも女でも常にそれを奪い合って戦うもんさ。そして一度手にしたからって今度はそれを奪おうとするやつらともまた戦う。相手が最強の不良だろうと異世界の女騎士様だろうとな。だからこそ、今は俺のモノになってくれてる刹華だって、俺は常に奪われねえようにガッチリ守ってんのさ」


「う、うぅ……」


「それなのにテメエらときたら、俺から二人を守ろうと前に立ちはだかろうとしたまでは良いけど、その後すぐに女騎士に……他人に頼ろうとしてんだから、情けねぇったらねえな。相手が自分より強かろうと噛みつけねえ野郎に、俺の女は渡さねえよ」



 そう言って、英成はレミとファソラを抱き寄せながら、もう一度二人にキスをした。



「哀れな……なんと最低なのでしょうね……まぁ、それを許容して、彼に抱かれてよがる私もまた……壊れている女ですけどね」


「おとーさん、イジメはダメって言ったでしょ! んもう!」



 そんなあまりにも身勝手な英成の発言に刹華は溜息、オルタはプンプン。

 そして……



「ほんっと、最低野郎ね! でも……胸糞悪いと思いつつも、ここまで自分の欲望に忠実だと、これはこれで清々しいかも?」


「ん? あ……よう、遅かったな。お前も一緒にエッチするか?」


「……ほんとにあんたは……やっぱ、考え直そうかな……」



 ソーチンやカムリを哀れに思って苦笑しながらも、どこか機嫌よさそうなトーンでカミラが帰ってきた。




――あとがき――

主人公? クズですが何か。だからこそ開き直って何でもできますね。

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