銀座商店街新春大売り出し

抽選

　――ガランガランガランガラン

　――ぉめでとうございま～っ！

新年早々カップ麺のストックがなくなり、駅前の商店街にやってきたらやたら騒がしい。おとそ気分の客相手に生鮮食料品や生活必需品、あまり必需でない品々を売り出し始めたようだ。新春大売り出しとして福引きも併設し、購買意欲を煽っている。

という私もかなり膨らんだエコバッグを左右の手にぶら下げて、３つある福引の列の一番奥に並んでいる。ソーシャルディスタンスなにそれおいしいの状態な人混みを抜け、抽選器の前に立つ。

狙うのは……何があるんだ？仰ぎ見て景品一覧をようやく眺めた。ひときわ大きい文字で『特賞』。ほうほう、あのゲーム機か！いまだに入手困難だもんね、いいねいいね！俄然やる気がみなぎるね。その下には特別賞や商店街の店舗協賛の品々が並ぶ。当選済みのペーパーフラワーも店名の横にちらほら掲示されている。こっちでもいいかな。

ちょっと折り目のついた福引券2枚を受付係のお兄さんに渡し、抽選器のハンドルを握ってグ～ルグ～ル、ガラガラ、カツン。

　――惜しいね～。はい、参加賞～。

ポケットティッシュをもらう。って、惜しい？一瞬考え込むが勢いだろうなと思い抽選器をにらむ。

ふっ。肩慣らしだし。後１回あるし。日ごろの行いはいいし。きっとゲット。韻を踏んでも何も出てこないし。出てきて欲しいのは特賞、金色。

手汗をぬぐい、改めて抽選器のハンドルを握ってグルグルグルグルッ、ガラガラガラガラッ、カツン。

　――ガランガランガランガラン

　――ぉめでとうございま～っ！

突然の大声はやめて欲しい。ビクッとしたのを体を揺らしてごまかす。

受付係のお兄さんがベルを振り回し、大声で当たりが出たことを知らせている。うーん、なにこの色。ちょっと濃い水色だけど、何が当たったんだ？

　――と～くべ～つしょ～！エー○、エーッチ、ケー受信料、２か月無料で～っ！

　――ぉめでとうございま～っ！

　――さあここに住所とお名前をどうぞ！さあさあどうぞどうぞ！

　――無料期間が終わるころに、電気屋のご主人が契約延長の書類をもってお宅に伺いますので、どうぞどうぞ！

……。そりゃ特別賞にペーパーフラワーは１個も掲げられてないわけだ。