第92話 クマモトらぷたと用水路作り
「名前からして18禁のクマモトさん。ある意味正しい称号だと思いますよ。」
トリスが冷静に呟いた。クマモトらぷたは「え?何の事?」という表情をする。
尤も、木の幹に顔のようなものが浮かびあがっているだけなので、若干恐怖でしかないのだが。
「もしかして気付いてない?苗字にあたるクマモトをスワヒリ語に、らぷたをスペイン語で検索すれば出てきますよ。」
一定時間を待つと、木の幹全体が真っ赤に染まっていく。
「殺して、いっそ私を殺してぇぇぇぇぇぇぇぇえぇっぇえっぇっ。」
「まぁ大丈夫ですよ。私なんて18禁的な称号いくつあると思ってるんですか。数えるのも面倒なので考えるのをやめましたよ。」
宇宙に放り出された柱の男みたいな諦めを口にするマロン。
マロンの次に18禁称号を持つトリスも続いた。
その感覚からすると、アクアは幾分まともではなかろうか。
少なくとも18禁ではない。初めての……といくつかあるが、別にエロ的要素はない。
寧ろらぷたの方がピンポイントで18禁に引っかかる。
「そんならぷたさんとはせっかくなのでフレンド登録をしたいのですが。」
マロンの方から歩み寄る。昨日の敵は今日の壁、昨日の壁は今日の友というやつである。
壁というのは予選の時の事を指しているので、あくまでこの一回限りの限定である。
4人はフレンド登録を済ませると、これまでの事を秘密を除き話し合った。
女神の事とかは流石に触れる事は出来ない。
小屋の事や牧場・農場をやっている事、優勝特典でこの惑わしの森を本拠地設定にした事等は話した。
「へぇ、それじゃぁ戦争イベント等の時には森全体が本拠地設定となって面白そうですね。」
らぷたのレベルは19。森の魔物は他の地域に比べて強く経験値も美味しいためそれなりに上がり易い。
例え自ら歩く事が出来ない根っこが地面に根付いた種族だとしても。
「もしかしたらレベル20になって進化したら歩けるようになるかもね。」
などとマロンが言うものだから、らぷたのレベルを20にするため魔物をおびき寄せた。
中々にエグイもので、おち●ぽ型した触手が魔物の身体を貫いていく。
「絵面……本当にこれは大丈夫なのかね。」
口とか尻当たりを貫いている触手の状態を見ると、とてもセーフとは言い難い光景が広がっていく。
「あ、進化しました。トレントから……一択ですね。エロダートレントに。」
最初からエロかったろと思いつつも、今更誰もツッコミを入れなかった。
「あ、なんか歩行スキルが付きました。私、移動可能みたいです。」
地面を水上スキーのように流れていくエロダートレントのクマモトらぷた。
マロンはニヤソとしてその様子を見ていた。
「これで戦争イベントの手駒が増えた。」
「うわえっぐ。マロンてばフレンドを手駒扱い。」
「言い方はともかく、戦力はあっても良いと思うんだ。木を隠すなら森の中。それにもしかしたら進化先は美少女かもしれないよ。」
美少女限定な思考回路はともかく、人型になる可能性は否定出来ない。
変身能力にしろ、人型魔物……木の精霊等への進化は重々考えられる事である。
「美少女の手が触手化して相手を襲うとか面白そうじゃない?」
18禁ゲームならな……と内心で思うトリスである。
「へぇこれがその小屋ですか。」
流石に大木が小屋の中に入る事は出来ないので敷地の外となってしまうが、柵を改良しらぷたが小屋の前に入れるようにしていた。
シンシア達がらぷたの周りをまわって……
「あああああっぁあああぁぁぁぁっぁあぁぁぁっ!!!」
マーキングしていた。
「まぁ、シンシアやイノ乃達に認められたって事で。この子ら的には容赦しないんで、歓迎してると思います。」
「主、食肉用の魔物を飼育するのはアリだと思うのですが。」
唐突に話に加わって来るイノ吉。前回良かれと思って増やした子は流石に食用には出来ないので、防衛要員として育てるようにした。
やはり意思を持った、喋る魔物は何となく食し辛いというのは仕方がない。
「あ、そこの柵の中にいるのはイノ吉達が飼ってきたやつ?」
飼育スペースに囲っておいた場所に数匹のイノブタが放牧されていた。
柵の外に出すわけにはいかないので、イノ乃達が追い回す事で運動をさせていた。
食事はマロン牧場で採れた野菜を主食とデザートにしていた。
「あ、米ように田んぼを作りたいので少し広く開拓しようと思うんだ。」
小屋を中心にして、東側にはイノ吉達のスペースがあり、その隣に飼育用の牧場が広がっている。
小屋の北側には野菜を育てる菜園が広がっている。
南側にはアクア用の小さな池が用意されていた。
西側にらぷたが鎮座している。
田んぼは北に広がる菜園・畑の隣、西側に向かって作ろうと考えている。
水脈を確保する必要があった。
アクアが元居た東の湖から引っ張るのには無理がある。
途中に農業の女神を通るので現実的ではない。
「あ、そういえば北西に川があったよ。」
トリスのそんな助言を経て、工事の計画が立つ。
田んぼそのものは農家見習いの補正で、水を引くための工事は農家プラス他の見習いマスターの力を駆使して行う。
鍛冶師見習いなどのおかげで農具も少し性能がおかしい事になってる。
穴を掘ってはアクアの錬成で作った水道管を埋め込んでいく。
その間らぷたとシンシア・イノ乃に周囲の魔物警戒・討伐を行い、マロン達3人が穴掘り等を進めていく。
「堤防もいつか作った方が良いかもね。」
やる事やりたい事を増やすのはマロンの癖なのかもしれない。
用水路を掘って管を繋いで小屋の方まで繋げていく。
魔物が侵入しないよう用水路には天井を付ける事も忘れない。
コンクリートはないが、マロン達が作るものだから鉄よりも頑丈である。
また、森をマロンの本拠地化した事でその辺りの防備的なものは勝手に補正がかかってしまう面もあった。
現実よりは安心安全な用水路となる……はずである。
水路を作って、すぐそこまでというところまできたので、次は田んぼの作製に取り掛かる。
元は木が生えていた地帯であるため、土壌の改良は必須だった。
「木の精と土の精がお友達なので手伝って貰えますよ。」と言うのはらぷたである。
農業の女神の加護を得ているマロンとの共同で、土をどんどんと改良していく。
らぷたは精霊魔法見習い、魔法使い見習いをマスターし、現在精霊魔法使いと鞭使いをそれぞれ第一・第二職種としている。
使える魔法も、木・土・水の初級はマスターしておりどれも全て中級に達している。
根を張る土、水は自前の魔法、そこに太陽の光を浴びて生活をしているだけで、元来経験値は増えていた。
たまに近寄って来る魔物を倒すという行為は、あくまで纏まった経験値でしかなかった。
魔法使い系に偏るのも無理はない。自らの触手を鞭に見立てて使うため鞭使いの職種が転職可能となっていた。
「マロン印の鍬とかのおかげで一気に終わったね。」
後は水を流せるように川と直接繋げるだけとなっていた。
田んぼの方も、まだ水を流し込むには早いが使える状態にする日は近い事が窺える。
部屋の中に入れないので、らぷたが生えてる小屋の西側に全メンバーが集まる。
歓迎会という名のプチバーベキュー大会を開いていた。
らぷたに確認すると、雑食なようで飲食可能との事だった。
これまではどうしていたかというと、水のみの生活だった。
根からの水と太陽光による光合成で充分事足りるため、あえて飲食を口から摂取する事は皆無だったが。
チュートリアルの時にナビ子さんに確認したところ、口となる部分から人間と同じように摂取する事が可能だという事だった。
完全ロールプレイするなら、魔物をバリバリと砕きながら生でもイケますよ、と。
生肉とか流石に無理……と思っていたため試した事はなかったが、水魔法を直接口に入れたことはあったという。
調理された野菜や肉を人間と変わらぬ勢いで頬張る姿は、飢えた狼のようである。
「なんですか、この野菜は!この肉は!控えめに言ってサイコーです。」
らぷたは触手で巻き取った野菜や焼肉を次々に頬張る。
「イノブタと、モウモウバッファローの肉だね。イノブタってのはそこのイノ吉達の種族ね。モウモウバッファローは北の方にいた牛乳の元になりそうな牛の魔物ね。ミノタウロスとは違うのね。」
ミノ・タウロスという魔物も存在するのだが、マロン達はまだ出会っていない。
その名の通り、ミノが最高に美味い牛という事だが……捕食される日は近いだろう。
「はふはふ……今更ですけどね。私のルーツが熊本なんです。だからクマモトにしたんです。」
本当今更であるが、触手トレント・クマモトらぷたが名前命名について反論していた。
木の幹が顔のように動いて喋る姿は、どこかで見た事あるなと感じるマロン達であった。
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