第85話 ラマン一族
「このお二方はご先祖様で間違いないです。」
フォルテが先程と違い、変わり果てたミラとエレンを見てマロン達に説明をする。
ミラとエレンには兄が存在し、その兄の直系が実はフォルテ達である。
用意していたのか、フォルテは家系図を見せて説明をしていた。
フォルテはここが自らの一族が所有している事を最初から知っていた。
幽霊騒動の正体も何となく理解出来ていた。
これまで何度か訪れた事はあるが、誰にも会った事がなかった。
マロンが巫女見習いという職種になっていた事による、偶然の延長にある奇跡が引き寄せた邂逅。
元々フォルテは店舗を贈呈する事を約束していた、ミラは骨抜きにされた事もありこの建物を敷地ごと渡すと約束した。
「色々な経緯があって、ここを店舗兼工房にしようと思う。」
必要な書類をマロンは穴がない事を確認し、納得した上でサインをする。
地下1階、地上3階建てで3階にはバルコニー付き、蔵隣接しており1階の奥にある工房とは繋がっている。
庭には簡単な菜園が出来る広場があり、区画を整理するための外壁はない。
トイレは各階に設置されており、2階には風呂がある。
部屋は2階に3部屋、3階に3部屋あり、その内1部屋は倍程の広さがある。
完全に貴族や大商人の自宅である。
改装工事に7日掛かると言う。現実と違い、魔法が存在する世界であるため、早いという事には慣れるしかないのである。
3階の小さな2部屋はそれぞれミラとエレンが使うとの事だ。
幽霊に1部屋ずつ必要なのかとトリスは訊ねたが、地縛霊兼守り神のようになっているためマロンは二人に明け渡す事にした。
マロン達がここに住むわけではない。最初それについて駄々を捏ねていた姉妹幽霊は、自分の部屋を貰う事で渋々承諾したのである。
なお、それらの部屋は元々の二人の部屋なので、別に無理に追い出しても仕方ないという結論に至る。
1階は当然店舗にする。マロンがここに居る時は工房か店舗にいる事が殆どであろう。
並べる商品であるが、最初はポーションと野菜などの消費系のモノを置く事を考えていた。
こけし類はは暫くは、ラマン商会及びさくらんぼくらぶでのオプションとしてのみとなる。
アクアが居るため、冷蔵庫や冷凍庫に模したものが作れるだろうとも想定しているため、商品の売れ行き如何によっては肉の販売も考えてはいた。
改装工事はフォルテ商会が手配する。身内の建物を贈与するという事で、お礼には程遠いという事でフォルテから名乗り出ていた。
改装図面は、元の図面をコピーしそこから手直しする形で訂正していた。
ミラ達にはそれまでは職人の邪魔をしない程度に寛いでもらう。
改装の話を煮詰めた後、フォルテや幽霊姉妹達とは解散した。
「じゃぁ工事は明日からという事で、8日後に荷物を搬入するね。」
マロン達が居ない間に、ミラとエレンに処分しては困るものだけ退避させ、不要なものは蔵に一時保管する事になっている。
「もろもろレベルアップと製作の時間になるかな?改装が終了するまでは。」
「そだねー。東門以外からも外に出てみたいし、森の探索なんかもしたいしね。」
現在の3人は以下のような簡易ステータスである。
●マロン レベル25
種族:ボディコニアン(少女体)
第一職種:巫女見習い(2/10) 第二職種:裁縫師見習い(1/10)
マスター職種:治癒士(10/10)、丁稚(10/10)、木工職人見習い(10/10)
●トリス レベル25
種族:ハイエロフ
第一職種:詐欺師見習い(7/10) 第二職種:魔法使い見習い(9/10)
マスター職種:射手見習い(10/10)
●アクア レベル24
種族:水の大精霊
第一職種:精霊魔法使い(8/10) 第二職種:丁稚(5/10)
マスター職種:錬成師(10/10)
3人の方針としては現在の職種のレベルマックスが優先である。
店舗に置く商品はある程度揃っているため、最優先事項で何かを作らなければいけないわけではない。
(このまま経験回数が増えるとビッチ……いずれはビッチクイーンになりそう。)
マロンは勢いで幽霊ともシてしまったが、ミラの職種の中にビッチクイーンがあった事から容易に想像出来る。
推定ではあるが、経験50人でビッチ、100人でビッチクイーンの称号が出るのではないかとマロンは考えている。
マロンとミラで経験という項目と解釈に違いがあるのだが、現状マロンはその差異に気付いていない。
解散した後、マロン達はチョコバナナを食べた噴水の縁に座って談笑していた。
「鳶とか建築士とか大工とかが生えたら、ある意味貴重ですね。」
商人系や多様な職人系はあるのに、今アクアが言った職種は初期設定には存在しない。
自分の行ってきた行動によって職種は増えていく。
「それがね、アクア……建築士は選択可能になってるよ、改装図面を引いたからかな。」
「マロンは職種マスターになりそうだよねー。」
「触手マスター?」
「そういうボケは良いって。」
屋台で購入した焼きそばを頬張りながらトリスがツッコミを入れる。
トリスは紅ショウガ的なモノは抜きにしていた。
「せっかくだから改装、うちら手伝わない?なんとなく、鳶とか大工とかも挑戦してみたくなった。」
「最終的に匠とかなりそうで怖いわー。」
「なんということでしょう~」
マロンが意欲を見せると、トリス、アクアがリフォームをそそられそうなセリフで続いた。
「耐震偽造で逮捕とかはやめてね。」
トリスが笑いながらマロンの二の腕辺りを叩いた。
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