魅力に極振りしたら18禁ゲームみたいになった
琉水 魅希
第一章 元18禁ゲーム会社が製作したVRMMOゲーム
第1話 元18禁ゲーム会社が製作した普通のVRMMOゲーム
20年程前、とある18禁ゲーム会社があった。
しかし時代の移り変わりと共にゲーム製作のジャンルや幅を変えていき、コンシューマ版を作成するようになり、パソコンゲームやゲーム機離れにより携帯電話アプリ、スマホアプリゲーム、MMOと幅広く手を出していた。
そして現代に至り、ついにはVR技術を駆使してVRMMOゲームにまで進出する事になった。
話題性は外部委託した絵師やシナリオライターの影響かそれなりに話題を呼んでいた。元の18禁ゲームだけを販売していた頃は所謂知る人ぞ知るといったゲーム会社だったのだが。
そんな会社も、これからスタートするVRMMOゲームの新規ユーザーを獲得するために色々と画策をしてきた。
キャラクターデザイン・モンスターデザインに超有名絵師複数人、そして作成されたナビゲートキャラは複数存在し、ユーザーの選択式とする事で差別化を図る。
そしてそのナビゲートキャラには超有名声優を男女複数人登用していた。なお、ナビゲートキャラと声の組み合わせはユーザーで選択出来る仕様となっていた。
絵と声は、ユーザーを引き込むための第一印象としては効果抜群だった。
ましてや20年程前に18禁ゲームを購入していたある一定年齢層のオタクの大半からは絵と声がかなり重要視とされていた。
だからこそ、ベータテストには1万人という枠でありながら即刻殺到していた程である。
もちろん、ゲームそのものが面白くなければ直ぐにコケてしまうのは世の常ではある。
シナリオライターにも、同人ゲームで一世を風靡し、現在ではアニメを始め多用な分野で活躍をしている超有名どころを引き入れている。
全てが嚙み合えば大コケはしないはずである。
そんなゲーム会社の新ブランドである「
ピンクなローターだと色々なところに引っかかるために、ただ捩っただけという元18禁ゲーム会社のネーミングセンスは酷いものである。
このブランド初のVRMMOゲームとなる題名は「ニューワールド」
安直な名前ではあるけれど、それ故に覚えやすいその名前は日本名とした別名「新世界」とも呼ばれている。
新世界と称するように、今いる地球とは違った新しい自分と世界を自由に生きようというのがコンセプトだ。
決してドヴォ〇ザーク作曲の名曲とかは関係がない。
メインストーリーは安直かもしれないが、選んだ種族などによって異なる。
しかしその最終目的は二択に帰結する。様々な種族や魔物との共存共栄、または滅亡を目指す。
地球で例えるならば、過去に恐竜などの強者が存在していたけれど、現代では人間が生き残り我が物顔で開拓して、好き勝手に星を弄っているようなものだろうか。
人以外は劣等種と見て、牛や豚は家畜、犬や猫は愛玩動物と見做している。
悪い言い方をすれば人間至上主義である。しかしそれは仕方がない。人間と同じような知的生命体や強者が存在しないのだから。
それであれば、知的生命体や強者がいくつも存在する世界であれば、そこに生きる生物はどのような選択をしていくのか。
共存共栄か、滅亡させて独占か。
それらをゲームを通じて進化・昇華させていくのが目的である。
ニューワールドは人間が開拓した世界を基盤に、他の種族が土地を変え場所を変え人間と同じような生活をしている。
ある程度は共存出来ている状態がゲームのスタートである。
分かり易い人間VS魔族という図式ではない。同種族同士の争いも当然存在していた。
ニューワールドには複数の知的生命体が存在する。それらがゲームキャラクターやNPCとして世界中に無数に存在する。
プレイヤーはまず人間、獣人、魔族から種族を選択し、次に剣士や魔法使い等職業を選択する。
一度決定したら名前や種族は変更出来ないが、種族や職業は各種レベルアップにより進化・派生していく。
この辺りは他のゲームでもよくある設定だった。
抽選に当選した1万人による1ヶ月間のベータテストを経て、ニューワールドは本日正式稼働する。
初期ロット3万本と、1万人のベータテスターには製品版の無料配布による、合計4万人が初回盤を入手した。
初期ロット3万本も予約の段階で即完売していた。
主に男性からの予約注文が鬼のように殺到していたという。
その理由は公式による開示されている情報とは別に、ネット掲示板に残されたベータテスターからの情報開示によるものに他ならない。
女性禁制のネット掲示板に書かれていた内容により、男性ユーザーのヤる気を掴んでいたのだ。
また、所謂R12指定、R-15指定、R18指定の枠もあり、ユーザー登録にはマイナンバーが必要となる。
これによりおいそれと年齢の改竄や、ゲーム内での犯罪行為は行う事が出来ない。
もちろん課金においてもその制限の幅は出てくるので、使用出来る金額上限の設定にも関わってくる。
未成年の課金は大抵が小遣いか、親のカードだったりするが、そこまで運営は関与しない。
ゲーム内にはAIによる管理・巡回監視もあるために、プログラムにない違法的な事を行うとAIが判断してプレイヤーに注意が届く。
また、ユーザーによるGMコールも当然存在し、規約違反行為や迷惑行為には他のゲーム同様に随時対処される。
悪質な言動や行為によっては、最悪逮捕者も出る可能性が存在するわけであった。
さらに年齢による〇〇指定というのは流血等の残虐シーンをカットするというものが大きい。
ゲーム内では感じる痛みもまた存在し、上の年齢指定に上がっていく程その強さは大きくなる。
成人が一番痛みを伴うという設定だが、もちろんカット出来る幅は選択できる。
そしてもう一つ、先に述べたベータテスターによる男性のヤる気を向上させた、ある事に対するハラスメント設定である。
故意に性的とされる場所に触れる事は出来ない。
ただし、成人設定同士に対してはその制限にない。それでも現実世界と同じで、相手に対する嫌悪感等は堪っていくし、場合によっては返り討ちにあったり、ハラスメントでGMコールからのアカウント喪失までありえる。
つまりは現実と同じ倫理観は持っていなければならないという事でもある。
痴漢でBANされると当然噂にも上がるし、現実程でないにしろ今後を生きる上で不都合が生じる事になる。そのためのマイナンバー登録でもあった。
態々そんな違反や迷惑行為をする人を限りなくゼロに近付ける処置でもあった。
ただし、キャラのロールプレイに対しても許容されているため、悪質行為かの見極めは管理者によって厳正に吟味はされる。
悪役令嬢とか、NTRクソ男とかをロールプレイするプレイヤーがいないとは限らない。
S県内某所。
ここに幸運にも初期ロット3万本に当選した人物がいる。
一軒家の周りは壁で覆われており、外界から遮断しているかのような、町の孤島ともいうべきその家の中。
二階にある一つの部屋ではその人物がこのニューワールドをプレイしようと、せっせこと準備をしている。
エアコンのスイッチを入れ、一枚、また一枚と衣服を脱いでいく。
若干色白の肌が露出すると、上下下着一枚となるとVR装置のハッチを開ける。
積み円盤や積みラノベ等、積みオタクグッズに塗れた部屋の中、開いたVR装置へと入っていく。
このVR装置の良いところなのか悪いところなのかは賛否分かれるのだけれど、全裸・若しくは下着のみで中に入り起動させなければならない。
肢体の一部には白い布に覆われており、その秘密の部分は隠れて見えないけれど、断崖絶壁の身体を持つ長い黒髪の人物はVR装置の中で横になった。
VR装置自体に快適温度・湿度設定はあるものの、部屋自体もエアコンで快適環境に整えている。
首を動かした時に前髪がずれると顔が露わになる。
隙間から覗かせたその顔は、所謂中の中か中の上。
美少年とも美少女とも言えるような言えないような……悪く言えば普通過ぎて目立たないものの綺麗に整ってはいた。
身だしなみに気を配れば恋人いない歴=年齢は払拭出来る見た目であった。
VR機器に入ったのは下着で分かる通り女性である。
黒髪断崖絶壁の女性、
親の頭が若干
そのため、名前で弄られる事もしばしばあり、浪漫の交友関係は広くはない。
成人を迎えた現在に於いても恋人もおらず、学校と家を往復するだけの毎日。
その家の中でも深夜アニメとゲームにばかりに時間を費やすばかり。
しかし成績は中の中というモブっぷり。
見た目も普通過ぎて良い方にも悪い方にも引っかからない通行人Aっぷり。
浪漫は思っていた。
ゲームの中で位はモテたいと。
いや、せめて友人……フレンド10人以上は欲しいと。
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