光と闇

虫十無

1.1

 光と闇がありました。

 光はただそこにいて、ものの向こうに影を作っていました。

 闇はただそこにいて、影とは違うものでした。

 光と闇はそれぞれでありました。それぞれで在りました。

 けれどいつのことでしょう。なぜだったのでしょう。誰にも理由はわからないまま、光と闇は混じり合いました。

 影は揺れました。そうして驚きました。影にはいつしか意思があり、思考がありました。影はただ光も闇もそこにいるもので、動くものとは思っていませんでした。そうして驚いた影はそのまま消えてしまいました。光がいない場所に影はいられません。

 今はただ、何かはあるのに何もないのと変わらない、不思議なものがあるだけです。

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