第4話 レオナルド王子視点
(やっぱり、かわいい)
遠目からはきれいだと思っていた。
けれど、あの場では緊張していたのか、張りつめた表情だったミシェルは近くで見ると、とても可愛らしく感じた。でも、可愛らしさの中にも凛とした強さを感じた。
もう少し、彼女といたい。
「大丈夫じゃない。治安も悪いんだ。何かあったら、王子として立つ瀬がない」
そう告げると、後ろの男が、
「治安が悪いって、なんじゃそりゃ・・・治安は誰が守ると思っているんだよ」
と暴言を吐いた。
その言葉は耳が痛く、腹立たしかった。
「こら、アーサー。申し訳ありませんでした、レオナルド王子。護衛がご無礼を。どうか、お許しください」
俺がムッとしていると、ミシェルが頭を下げる。ミッシェルは悪くないのに。アーサーと呼ばれた男を見ると、バツの悪そうな顔をして頭を下げた。それを見て、俺は自分が王子であり、権力者であることを自覚する。
「許すには条件がある」
ずるいと思いつつも、俺はそれを利用しようと思った。
「・・・なんなりと」
俺を真っすぐ見つめるミシェル。
忠臣というのはこういうことなのではないか、と思うと同時に、その信頼を利用するようで胸が痛んだ。
「俺が街を案内する。付き合え」
俺は目を閉じながら、腕を組む。
(どうだ、どうなんだ?)
なかなか、返事がないので、恐る恐るミシェルを見るために瞼を開けると、
「では、お言葉に甘えさせていただきますわ。レオナルド王子」
その笑顔は天使だと思った。
こんなふうに、誰かといて幸せに感じたことはあっただろうか。
誰かの笑顔でこんなにも胸がときめくことがあっただろうか。
(いや、初めてだ)
「あぁ、十分に楽しむがいい」
俺は彼女の手を取った。
「なっ?」
アーサーがとても嫌そうな顔をしているが、知るものか。
それに比べて、ミシェルは驚いた顔をしているが、嫌悪を見せていない。彼女の手は甲は絹のように滑らかで、触り心地がいい。
(が、手は少し荒れている)
俺が擦ると、ミシェル俯いた。
周りの大臣達が言うように、ウォーリー伯爵の領地は領主の娘が働かなければならないほど、財政が厳しいのか。
(なんとも、嘆かわしい)
王族と貴族が働かなければならないということは余裕がないということ。本当の有事の際には何もできないということだ。聖女とは聞いていたが、自分の身を削ってまでするのは、愚者のやることだ。そう、帝王学の書には書いてあった。
(ふっ、まぁ、いい。俺が可憐な花として愛でてやろう。俺の器の広さを見て、なびかない女などいない)
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