第3話

「はいっ、発見しましたっ!!」


 私はがっつりメイドさん姿の女性を見つけた。今の私より大きい身長の女性を見つけて嬉しくなる。前世の私ならヒールの高い靴を履いた方が足が長く見えるのに履けなかった。周りからは「いいじゃん、スタイルいいんだから」なんて言われてたけれど、やっぱりヒールを履いた方が足も細く見えるし、長く見えて美しくていいなと思っていた私。こうやって自分より身長の高い人が居ればヒールが履き放題だと思うと、とても嬉しい。


「えっ、えっ、えっ」


 黒髪にショートカットメイドさんが困惑する。


「お名前は?」


「ユーフェミア様・・・長い付き合いですのに・・・・・・」


「記憶喪失になっちゃって…」


「えーーーっ!! 大変じゃないですかっ!!? すぐにご主人様に」


 あっ、今選択肢あったのかしら。ハイテンションだったし、異世界転生って簡単に上手く行くと思ったけれど、調子に乗り過ぎたようだ。私は小さな頭をフル稼働させる。確か・・・・・・


「冗談よ・・・キリエ?」


「なんで、そんな疑問形なんですか? やっぱり・・・」


 あっていたようだ。良かった。

 そう、この子はキリエ。歳は私より1つ上で優しくて、おどおどしていて、イジメたくなる性格・・・


(ん、なんだろう。このイジメたくなる衝動は・・・あれ、もしかして?)


「ねぇねぇ、キリエ」


「はい、なんでしょうか。ユーフェミア様?」


「私って、性格悪い?」


「・・・・・・っ」


(あっ、目を逸らした)


 もじもじするキリエ。私がメイドだったら、嘘を言えない性格なのだろう。


「・・・そんなことはない・・・ですよ?」


「お返しするわ。なんで、そんな疑問形なのよ」


「すいません」


 うーん、これはもしかしたら、悪役令嬢に転生してしまったようだ。こんなに、可愛らしい見た目なのにキリエはこんなに委縮している。


「まっ、汚名返上はあと、あとっ。ねぇ、キリエ、私、お風呂に入りたい」


「お風呂・・・ですか?」


「今すぐ、準備できる?」


 悪役令嬢なら別にここでワガママを言っても私の評価は変わらないだろう。あとから、評価マイナスを爆上げするから、とりあえず、転生したんだから、よくアニメで見る大浴場で、マーライオンからお湯が出てくる中、メイドさん達に身体を洗ってもらうって言うのをやってもらわないと。


(そうよ、きっとそう。神様が私の願いを聞いてくれたんだわ)


「手なんて組んで・・・わかりました。しばらくお待ちください」


 神様に感謝のお祈りをしていたつもりだったけれど、キリエはいい方向に勘違いしてくれたようだ。


「ありがとう、キリエっ。大好きっ!!!」


「ちょっと、ユーフェミア様っ!?」


 抱きしめると、柔らかいキリエの身体が私を包み込んでくれて、石鹸の香りがした。


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