大浴場がないってどういうことです? 悪役令嬢は婚約破棄して、僻地でドワーフと温泉を発掘します。

西東友一

第1話

「ふふふんっ」


 あぁ、冬のお風呂は最高だ。

 私はお風呂に入り、お風呂の蓋の上でスマホを弄る。時々水滴が落ちてくるけど、それを拭くフェイスタオルもしっかり完備している。


「ちょっと、咲菜っ。まだ入ってるのっ?」


 あっ、ママだ。

 脱衣所にママのシルエットが映る。

 さすがにママといえど、お風呂のドアは開けないと思うけど、私の快適な空間を邪魔しないで欲しい。


「ちょっと、入ってこないでよ」


「何時間入ってるのよ」


 私はスマホの画面を見る。


「まだ、1時間過ぎただけじゃん」


「1時間も、でしょ。あと10分で出なさい」


「えーっ」


「えーっ、じゃない。いいわね?」


 ママが脱衣所のドアを力強く締める。

 私は「はぁっ」とため息をついて、お風呂の蓋の上に置いてあったペットボトルの蓋を開ける。中にはお茶が入っていて、汗を掻き過ぎたら水分補給も完璧なのだ。


「あーあっ、自由にお風呂が入れる世界だったらいいのに・・・」


 私はスマホの画面を消して、お風呂の蓋の上に置いた腕の上に顔を埋める。すると、なんだか今日は眠くなってしまった。


(あぁ、ヤバイ・・・・・・さすがにお風呂で寝ちゃったら・・・・・・)


 けれど、睡魔に勝てなかった。

 私の意識は途絶えてしまった。

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