第16話 ご隠居と町会長
「そういうことで麻里子さん、頼むわ…」
ドスの効いた声で麻里子を見下ろした禿頭で、かなりの老人が月光館のテーブル席を立った。そのすぐ隣に座っていた初老の男性も無言で腰を上げる。振舞われた超高級ブルマンは手付かずのままに残されていた。
麻里子もほぼ同時に席を立ち、二人に先立って店の扉を開いた。
「ご隠居、町会長。今回だけは私に免じて事なきように重ねてお願いします」
いつになく冷静な声でそう言うと、麻里子は深々と頭を下げた。
「それはよくわかっとる。いろは組はあんたらがいなくては成り立たない。しかし度が過ぎれば噂が噂で済まなくなってしまう。まあ、こんなこと今さら言わなくてもわかっていることだと思うが」
禿頭の老人、麻里子がご隠居と呼ぶ男が言った。
「はい。それは十分に」
あくまでも従順に麻里子は答えた。
「麻里子さん。いくらいろは組でも限度はある。時代が移って人も変わった。あまり大きな揉め事は勘弁してもらいたいのが本音だよ」
町会長と呼ばれる初老の男はずばりと言い放つ。口調は控えめでもいい迷惑だという意味が垣間見えなくもない。
「万事、波風は控えてな…」
そう言い残して二人を乗せた黒塗りのベンツは月光館の前から走り去って行った。
それを見届け、車が路地を曲がったところで麻里子は大きなため息をつき、それから地面をバンバンと蹴った。
「ああもう、悔しい悔しい」と叫びさらに二度三度。子供が駄々をこねているように見えなくもないが、恐らく大差はないだろう。
「ま、麻里子さん、大丈夫」
麻里子のあまりの大声に驚いたそのみが店の外に出てきて声をかけた。
「フーーーーーン」と鼻息荒く深呼吸した麻里子はそのみに顔を向けてニカッと笑う。
「大丈夫、多分。あと、おそのさんのカレー食べて、一杯やれば平気」
しゃきっと背を伸ばし麻里子は答えた。
外の騒ぎが気になった燐と志野が店の奥から姿を見せた。麻里子の言いつけで隠れていろと言われていたが、この大声で気になって出てきたのである。
「ま、麻里子さん、あの…」
燐はその次の言葉をつなげようとしたが出てこない。
「いいのよ燐、気にしないで」と麻里子は優しく言った。「志野もね」と付け加える。
「さ、おそのさんのカレー食べよう!こういうときはおいしいもの食べるっ!」
顔を伏せて立ち尽くす燐の肩を抱いて麻里子は一緒に月光館の中に入った。
「それにしても青龍のやつ、どうして志野の呼びかけに答えなかったんだろう」
テーブル席にカレー皿を四枚積み上げた横で食後のコーヒーを飲みながら麻里子は言った。ちなみに燐と志野は一皿づつである。
「そのお陰であの場に一瞬の隙が出来たのは確かなんですけど」
ティーカップを持ち上げた燐は紅茶である。
「主従関係としてモウリョウとは契るんですよね。なのに青龍の奴ってばもう職務怠慢ですよ」
鼻息荒く言い放つ志野はカフェオレだった。
「うーん、そんな計算までして出てこないなんて考えられないんだけどなあ」
苦笑する麻里子はそれ以上笑うのを抑えるのに必死だった。先にその話を志野から聞いたときは耳を疑ったし、モウリョウ側から三行半を突きつけられたのではないとすれば、前代未聞の出来事であったからだ。
「まあ、それにしても派手にやったわねぇ…」と麻里子は言うが、その口調には非難する意図は微塵もなく、起きたことに対する率直な感想を述べたというものだった。
「すみません、ほ、本当にすみません、麻里子さん」
今日、十回は下らないであろう謝罪の言葉を燐は口にした。
「あーもう、謝らないで燐。あなたが悪いわけじゃないわ。突然に仕掛けてきた我邪が悪い」
この件に関する麻里子の答えはそう決まっていた。
「でも、もう少しやりようもあったかなと考えると…」
燐の声はかすれて聞こえなくなってしまいそうになるほど小さい。
「そんな心配、その時に出来るわけないわ。相手は一般人の被害はまるで無視の連中よ。さっさと逃げ出さなかったら月島一帯全滅していたかもしれないわ」
「え、そんなことになるかもしれなかったのですか、麻里子さん」
驚く志野が尋ねる。
「モウリョウが歯止めもないまま暴走したら、破壊の限りを尽くすでしょうね。とにかく連中は基本相手を倒すことしか眼中にないから」
「え、じゃあもし青龍が出てきて、蟷螂とマジで戦ったら…」と志野は考え「あ、」と声を漏らす。
「まさか自分が出て行ったらさらに騒ぎが大きくなって、もっと大変なことになると思ったからやめた、とか」と言ってから志野はプスと笑う。ありえるのかそんなこと。
「まさかねぇ…」と志野の答えを聞いた麻里子は苦笑する。
「でも青龍は仮にも四神瑞獣です。あの時の状況を冷静に見ていたと思えばあるいは」
燐は冷静に分析した考えを言ってみるが、必ずしも納得しているわけではない。
「うーん、時に人よりも冷静な判断をしていると、思える節がないとは言わないけどねぇ。志野、直接、青龍に聞いてみたら?」
「えええ、そんなこと訊ねて答えてくれるんですか」
まったく麻里子は何をいいだすのやらと志野は思う。
「わかんないけど、機嫌がよければ答えてくれるんじゃないの」
返す麻里子の答えは無責任この上ない。
「それにしても、先ほど月光館にやって来たおじいちゃんとおじさんは、どういう関係なんですか」
そんな志野の質問に、歯切れのいい受け答えを続けていた麻里子の口もはたと止まる。
「まあ、志野にはまだ紹介していなかったものね」
意味有りげな言葉を漏らす麻里子の口調は軽くはない。
「何ていうか、人間側の、普通の人の代表というか、まあねぇ」と言って麻里子は椅子に横向きに座っていた自分の姿勢を直し、志野に相対する。
「いろは組というのは本来、キズキビトである私たちをバックアップする組織なわけ。この人たちは組が結成されて以来、裏方として人間社会での世話役を代々引き継いで活動しているのだけど」
「え、じゃ、さきほどのおじいちゃんたちのご先祖のそのまたご先祖もいろは組として麻里子さんたちの活動を支えてきたということですか」
「うん、そう。私らが半ば不老不死で超常的な能力を持つといっても、前提として人であることに変わりはないわ。そうなると日常を生きていくためにいろいろ必要となるわけよ。例えばこの月光館もそう」麻里子は左手の人差し指くるくる回しながら答えた。
「あ、そか。衣食住や当座のお金、動くための車とか」
「そうよ、志野。別に私らは仙人じゃないし、かすみ食べて生きていけるわけないからね」
答えた麻里子は苦笑する。
「だから、いろいろ揉め事が起きたりした時の後始末も彼らの仕事の一部になる。キズキビトが出て行って交渉できる問題ではないし。こうしたことが起きた場合には、大昔から長い時間をかけて世間のいろいろな場所に張り巡らされた人脈がモノを言う話になるわけ」
「じゃ、そういうことで夕方のニュースには、謎の爆発事故、テロか、なんて感じでしか報道されていないわけですね」
「そそ、志野たちや蟷螂姉妹、ましてやモウリョウなんて公共の電波に乗せるわけ行かないからね、すべてなかったことになる。それでも昨今のこのネット社会じゃ全部は消せないけど、そっちは嘘と本当がごちゃまぜでしょ。またひとつ都市伝説が増えました、てことで流されて、ちょっと時間がたてばすぐにみんな忘れるしね」
「うーん、そうなんですか、何だかなあ…」
麻里子の答えに志野はうめき声しか出せないが、考えてみればそうやって世間からモウリョウ事件を隠蔽することで世界が無事平穏に回っていると思えば必要悪なのだろうかと思えても、全部納得するには何となくこの麻里子の解説では不十分に思えた。
「あ、不服そうだね、志野」と察したように麻里子は尋ねる。
「あ、いえそういう訳じゃないですけど」
間尺があわないと志野は言わないことにする。
「フフン、当たり前の十七歳の娘としては真っ当な反応だね。むしろ安心した」
志野の目を見据え麻里子はニヤリと笑って答えた。
「えええ、そうなのですか」と答える志野は首を振る。
「こんな話聞いて、あ、世間て怖いですねーとか適当に答えられて流されたら、事なかれの日和見主義者かっ!とか思っちゃうというか、そんな若さで世間に自分合わせて動くなよとか説教するわよ、多分」
麻里子は少々鼻息荒く答える。
「あはは、説教されるところでした私」
志野は苦笑いするが、麻里子なら「そこに直れ、修正してやるー」とか言ってマジでやりそうだとも思う。
「ま、こんな裏部分な話。本当は面と向かって話さずにいられるならば越したことないのだろうけど、これからもまた絡んでくる問題だろうしね。特に今の町会長は先代の、ご隠居より保守的で、これまでだって何度もモウリョウの事件を収めているのに、本音ではこんな厄介ごとには関わりたくないと思っている。そんなことがいつの日か大事を招かないとよいのだけどね」
そう言う麻里子の口調にはこの問題を重要視しているのだという気持ちが込められていた。時代が移り、いろいろと世間が変わることで人が傲慢になっていることと関係がないといえない現実がある限り、不安は減ることはないということであろう。
「複雑なんですね、いろは組とか私たちの存在とか」
志野にはこれがいわゆる大人社会の都合というやつなのかと思うが、実際にその一片を聞いただけで何となく不快になるのは、麻里子の言うとおり自分が若いからだと思うしかない。良くも悪くもまだ知らないことが多すぎるのだ。
「ま、そっちの話は当面いいわ。問題はその蟷螂姉妹と巨蟹のほうね」
話題を切り替え、麻里子は燐と志野の顔を交互に見た。
「二条瞳子が送り込んできた。もしくはそれ以前から活動していた我邪ということか」
「はい、そうだと思います」と燐が答える。
「明らかに私と志野さんを狙って、勝鬨橋を襲撃場所にして待っていたのだと」
「みたいだね。蔵前高校の一件でまたもや煮え湯を飲まされた瞳子としては、子飼いの手下を使って何としても二人を倒したいわけだ」
「もう、嫌になります瞳子の性格には」
燐は大きなため息をついて麻里子を見た。
「まあ、あんたたちの因縁はかなり深いものねぇ…」と麻里子は答え苦笑する。
「そんなに何かあるんですか、ええと、四凶の二条瞳子と燐さん」
事情を知らない志野が尋ねた。
「まあね、大正時代からもう頻繁にね。何時も沈着冷静な燐の行動が一枚上手という感じかな。それで瞳子の怨み辛みが山積する」
「ああ、なるほど」
それで蔵前高校の時もあんなに激しくぶつかっていたということなのだろうと、志野なりに考えてみる。
「蟷螂姉妹が次にどんな風にして仕掛けてくるかだけど、今日みたいに不意をつかれると場所によってはまた大きな被害を招くかもしれないから厄介だな」
麻里子は少し不機嫌そうに話す。犠牲を問わない我邪のやり方はいつでも腹が立つが、今回もまたとんでもない刺客を送り込んできたものだと呆れているのが本心だった。
「下校途中に一人でいるところを二人がかりで来られると大変ですね」
「そうだね志野。連中は神出鬼没だし、こちらの居場所は把握しているだろうから待ち伏せしやすいと思う」
「取り敢えずうまくやり過ごして月光館まで逃げられればいいのですけど」
答えた燐は手にしていたティーカップを皿に戻す。
「一度二人を捕り逃している以上、次に下手は打たないだろうね。つまるところ次がマジでガチ勝負になると考えておかないと遅れを取りかねないわ」
やれやれという感じでため息をつく麻里子は浮かない表情で二人を見る。
「こうなると巨蟹との関連も有りそうだし、蟷螂姉妹の手駒にされていると考えないといけないだろうね」と言ってさらに表情を厳しくした。
「じゃ、カマキリモウリョウ二匹にプラス巨蟹と戦うということですか」
「そうかも知れないわね志野。今わかっているのはそれだけだけど、他にも何か考えているかもしれないしね」
「それって、都内にある色々な置塚や石碑は意図的に壊されていることと関係あるんでしょうか」と言った燐に麻里子は頷く。
「うん、数で当たろうと考えているならば、そういう事態も想定しておかないと」
麻里子が譲之介から報告を受けた中には、かなりヤバいモウリョウが封印されていた塚や石碑もあった。ならば人に悪意を持って積極的に襲いかかる奴がいてもおかしくない。そんなのがついでに暴れ回ったりしたら、もはやいろは組の力だけでは手に負えなくなるのは間違いなかった。
そんな状況を考えながら何となく三人の会話が中断した時だった。
ばたんと大きな音と共に月光館の扉が開け放たれ、手に矢文を握り締めて血相を変えた譲之介が飛び込んで来た。
「どうしたの譲之介」と麻里子が尋ね、燐、志野、そのみが彼を見た。普段、滅多なことでは表情を変えない譲之介にしては珍しいことだった。
「巨蟹が出たぞ、月島に上陸して暴れているみたいだ」
「な、何ですって」
答えた麻里子は、そんな気配など微塵もなかったと記憶をたどる。あれだけのモウリョウならばすぐにその覇力を感じられても何の不思議もない。そう思ってから燐と志野を見た。
「わ、私も何も感じませんでした」頷いて燐は答える。
「巨蟹が出たというなら、覇力に何か感じるのですか。妙義みたいに」
「そうよ志野。自分の周りに強い覇力を持つモウリョウが出るとピリピリするでしょ。それのこと」
「ああ、あれですね。なら私も何も感じませんでしたよ」
志野は麻里子に答えた。
「それとこれが、月光館の門に突き刺さっていた。巨蟹の覇力を感じなかったのはこいつと関係あるかもしれん。矢全体が短冊に代わるものとして作用したならばな」
そう言って譲之介が差し出す矢を受け取った麻里子は、それを隅々まで観察して、譲之介の目星で間違いないと考えた。
「覇魔矢か。一体いつの間に…」
麻里子はため息をついて矢をへし折り効力を消し、伝聞が書かれていると思しき紙切れを矢から抜き取った。広げて目を通しその内容を一読して露骨に表情を変える。
「どうしたのですか、麻里子さん」
尋ねる燐に麻里子はその手紙を渡す。志野は思わず横からのぞき込んだ。
「坂東江戸いろは組に告ぐ、子狐は預かった。命大事ならば我らと決着をつけよ。今宵零時、上野不忍池弁天島にて待つ、蟷螂姉妹…って麻里子さん、これ」
その内容に燐は思わず叫んだ。
「休む間もなくたたみかけて来るわね、この蟷螂姉妹は…」
麻里子の声は冷静さを装ってはいても明らかに怒っていた。夕方に燐と志野を襲い、よもや今日は何もなかろうと考えるであろうところで、こんな展開になるとは麻里子も考えなかったところである。
「コタローが人質じゃない、獣質?にされたってことですか」と志野は思わず叫ぶ。
「文面どおりならばそういうことになるわね」
そういえば夜になってからからコタローの姿は見ていないと麻里子は思った。もっとも何時も何時も月光館にいるわけでもないし、二、三日姿を見せないことはざらなので別段気にしてなかったといえばその通りなのだが、こんな事態は想像していなかった。
「今、午後九時か…零時まであと三時間」
月光館の大きな柱時計を見た麻里子が呟く。巨蟹の出現に蟷螂姉妹の脅迫状とすべてはつながっているということか。コタローの安否は重要だが月島で暴れている巨蟹の始末を先につけるのが筋だろう。手の内がこれだけとは思えないが今は判っていることから対処していかないと進まないと考える。
「麻里子さん、どうするんですか」志野は聞かずにいられない。
「どっちも対処する。それだけは変わらない。安心なさい、別にコタローを見捨てたりしないわよ」
麻里子は恐らく志野が一番気にしていることに答えた。
「しかしまずは月島を何とかしないとな。それと不忍池だか、たしかあそこにはもうひとつ蟹塚がある」
「そうね、譲之介。あんたの話じゃそこは何故か無事なのでしょ。あ、おそのさん、テレビつけてくれる」
麻里子に言われそのみは液晶テレビのスイッチを入れニュース番組を探すが、月島で事件という話はどこにも流されていなかった。どこからか話を聞くや否やもういろは組が手を回しているということなのかもしれない。
「ネットでは月島に蟹の怪獣が出たって騒いでいるとこありますけど」
燐は自分のスマートフォンをいじり、ざっと関連ありそうなサイトを見回していた。
「さすがネット時代ねぇ。そっちは防げないか」
「感心している場合じゃないだろう麻里子殿。月島は放置は出来ないぞ」
「もちろんよ譲之介。あんたと燐で月島に当たって。蟹相手なら、槍や三八のほうが有効だと思う。出来たらその場で退治して欲しい」
「そうだな心得た。燐殿よいな」
譲之介は麻里子を見て、それから頷く燐を見る。
「志野はあたしと不忍池だよ」と麻里子は顔を志野に向け言った。
「あ、はい」と答える志野は一気に緊張する。
そうだと分かっていてもいざ聞けば志野の心臓の鼓動がさらに増す。出向いてどうなるかは予想がつかないにしても、蔵前や勝鬨橋以上にきわどいことになりそうなことくらいはわかる。今の立場で言うならば知らない故に蛮勇と言われても納得できるということだろうか。
「志野、分かっているだろうけどこれは今までのような小競り合いじゃ終わらない。正真正銘命がけの戦いになる。場合によってはその手で得物を振るって相手を倒さなければならないこともあると思う」
麻里子は志野の顔を正面から見据え、その視線を外すことなく言い切った。
「だから生半可な気持ちじゃ必ず負ける。遅かれ早かれこうなることは覚悟していたと思うけど、ここまで来た以上は性根を据えて踏ん張ってほしい」
志野は麻里子がもう一度、キズキビトとモウリョウの争いに向き合えるのか否か、そういう気持ちを確認したいのだと思った。倒すべき敵がいるということは、最悪その相手を殺すということを意味する。それがどんな意味を持つのかはいうまでもないだろう。今の時代に生きる志野にとって、自分の手で人の生き死を直に感じることなど皆無に等しい。
しかし、どのような成り行きにせよ、自分の意思でいろは組に加わって行動を共にすると決めた以上は、出来るだけ足手まといにならないようにして頑張るしかない。
「わ、私はもちろんこんな風にしてモウリョウとの戦いに正面切って向かうのは初めてですけど、自分がやれるだけのことの全てをやるだけだと思ってます。今はそうとしか言えません」
志野もまた麻里子の視線を一㍉も外さず言い切った。
「うん、そうだね」
数秒の沈黙を置いて麻里子はニヤリと笑いそう答えた。
「もちろん期待はしているけど、気張ってこけるよりも自分に出来そうなことだけすればいい。それでいいのさ今の志野には」
そう付け加えた麻里子は少し嬉しそうに口元を緩める。志野の不安はよく分かるし、どう気張って答えてみたところで現実を目の当たりにすれば気持ちも動く。それは仕方がないことではあるが、そこは志野を信じるより他にない。
「じゃ、今晩、全部かたをつける。みんな抜かりなく行こう」
麻里子は一同の顔を見回して各々の気持ちを確かめ、自らにも気合を入れて決意を引き締めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます