百話 新拠点のメンバー

「うははは! スッゲェ! 何だここは! 芝生がヤベェ! 全然チクチクしねぇ! フッカフカの毛布みてー!」

「上からの見晴らしもやべーぞ! 森の向こう側になんかでっけぇ滝みたいなんかが見える!」

「……あー、出入りする時、梯子を登る時はスカートはダメね。ジャージにしとかないと」

「洞窟の時よりも明るいし、いいんじゃない?」

「木の匂いが凄いね。でも、全然イヤな匂いじゃない。身体も心も凄く癒される」

 新拠点が完成してからやってきた生徒たちは大興奮だった。

 コツコツと運搬して完成させた面子は、それを見て「そうだろうそうだろう」と感慨深く頷いていた。

 新拠点に滞在するメンバーだが、再び校舎組と半々に別れることになった。この場所が快適だからと言っても、設備などは校舎の方が整っているし、手放すのは早計だった。

 メンバーをわかりやすくする為に、今回も部屋の前に看板を立てて編成表を貼り付けてある。

 今回の巨大樹組の編成は、三年の矢吹を筆頭に、同じく三年の片桐、山田、友坂。二年の神矢、雪野、上原、宍戸、鮫島、小山、田川。一年の黒河とその他含めた二十二名。残りが校舎組となっている。

 九条と鮎川が主に校舎組を仕切ることになり、そこに林や宮木たちが補佐に入った。

 保険医の早瀬は身重だから当然校舎だ。

 生物教師の桑田は、校舎内でジャングルの生物の研究をし続けている。地底生物たちの生態を知ることは、生徒たちがここで生き抜く術を知ることと同義だからだ。

 他、植物博士の河野や手芸部の富永、機械工作部のメンバーも校舎組だった。

 雪野たちは当然のように、神矢と同じ場所を強く希望した。三人の強い視線に、編成を考えていた矢吹と九条をたじろがせていたのを見て、神矢は苦笑した。

「……お前、雪野たちに何言ったんだ?」

 矢吹がげんなりした顔で訊ねてきたが、神矢は「別に。特別なことは言ってませんよ」と誤魔化しておいた。

「神矢! なんでも言ってくれ! 俺たちはお前に協力することを惜しまないからよ!」

 鼻息荒くして、鮫島、田川、小山の三人がやる気をアピールしてきたのには参った。神矢は少しヒキながら「……俺は今のところ何もないから、矢吹さんに聞いてくれ」と矢吹に押しつけた。

「いやぁー、やっぱり俺は神矢先輩がいねーとつまんねーから同じグループで良かったっすわ」

 黒河に関しては、神矢は心を無にすることにした。コイツは、正直、一番一緒にいたくなかったが仕方がなかった。今現在、最も厄介者でクセ者の黒河を扱えるのは、神矢と矢吹だけだったからだ。九条の言うことも聞かないわけではないが、やる気の目盛りの針が極端に低くなる。神矢の近くにいることで、その目盛り針が上昇するのであれば、コッチに置いておけばいいと判断した。

 矢吹もいることだし、何とかなるだろう。とにかく、黒河が余計なことをしないように目を光らせておく必要はあった。

 不安要素は無くならないが、しばらくは、このメンバーでの活動することになりそうだ。

 早く地上に脱出したいが、焦りは禁物である。

 多少の無茶はやむを得ないだろうが、とにかく慎重に行動しないと、一気に全滅という結果だけは避けなければならない。

 地底生活60日目。

 地上への光は未だ見えてはこない。


                 第二部 了 

         

                 第三部に続く

 

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