「影」との対話

@takonomakura

第1夜 

【職場の会議室】

 「登場人物はこの5人ですね。イラストも出来上がりました。どうでしょう?」

 テーブルの向かい側で資料を説明しているのは同僚の谷川さんだ。

 見慣れた場所、見慣れた相手。しかし、テーブルの上の資料は見慣れないものだ。

小説のプロット(らしきもの)、登場人物の設定、そしてイラストがA4の用紙にまとめられている。

 「なるほど。イラストがあると各キャラクターのイメージがつかめるね。」

 状況を理解できないまま、僕は回答する。違和感は口にしなかった。できなかったのだ。

 「そうですよね。でもどうします? 2人のどちらかが執筆を担当することになっていますが、結構きつそうですよ。」

 栗色の髪をいじりながら谷川さんは言った。

 「改めて分担を相談しよう。登場人物ごとに執筆できればいいかもね。無理をしないのが一番だよ。」

 「ありがとうございます。そうしていただけると助かります。」

 どのような状況なのか、仕事の進め方がこれで良いかはわからないまま、会議は終了した。


【郊外の大型書店】

 昼休み、僕はこの書店で時間をつぶしていた。

 ふと、平積みにされているある本が目に入った。統計分析についての本で、計算機のような付録が付いていた。仕事にはまったく関係ないものだが、単純に興味が沸き、購入した。

 書店を出ると、空腹を感じたので飲食店を探す。

 ふと、土手の上にハンバーガーショップが見えた。周囲に飲食店もなく、時間もないのでそこに向かうことにした。

 しかし、この土手がひどく急斜面で、上るのに苦労した。階段も見当たらない。悪戦苦闘していると、店員らしき人が手を貸してくれた。

 「助かりました。」

 店に入り、注文しようと改めて先ほどの店員を見ると、外国の方のようだった。聞いたことのない国の言葉で話しかけられ、僕は動揺する。メニューを見てもアルファベットですらない謎の文字が並んでいる。

 片言の英語で注文できるだろうか、昼休みの残り時間も少ない中、僕は考え込んでしまった。


【コメント】

 これはある晩に私が見た夢の記録である。

 私は心理学や精神医学の専門家ではないため、この夢が何を意味しているものなのかは分からない。しかし、夢のなかの自分が小説を書こうとしていたことがどうも気になった。これから毎晩、見た夢を記録していくと、何か見えてくるものがあるのかも知れない。

 現実の私が仕事で小説を書くことはないし(イラストがあるということはライトノベルだろうか)、職場の近くに書店はない。大型書店は学生時代に通っていた自動車教習所の近くにあった書店に似ている気がするが、現在は閉店している。

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