ミス・テリアスの華麗な事件

らいらtea

1

「疫病神よ。もしくは貧乏クジ」

 幼なじみの少女、吉田清(キヨ)は、黒髪ぱっつん前髪の下で黒い瞳を微動もせず、的確に述べる。

 少年探偵に付き物の「美少女の幼なじみ」――ではない。吉田の容貌は並で、平見に密かにいじらしい想いを寄せてもいない。なんの含みも持たない、ただの幼なじみである。

「それを言うなら、近所で育って保育園から高校まで同じクラスの吉田だって、原因の一端あるだろーが!」

「ないわよ」

 吉田は冷静に返した。

「平見が事件に遭遇したのは、記憶の限り、五歳から数えて今回で500件目くらい。確かに多くの現場では私も居合わせている。でも平見は、お盆とお正月の帰省や夏休みの家族旅行でも事件が起こる。私の家族旅行は徹頭徹尾平和そのもの。以上を踏まえると」

「があああ!」

 平見は力なくその場にひざを突いた。ガラスの破片が箒できれいに掃かれたあとの、絨毯の床に。

「なぜ俺の行く先々にこうも、しょうもない事件ばっかりが起こるんだ……?」

 そう。彼が出会うのは、殺傷事件でもなければ、刑事事件でもない。「しょうもない事件」である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る