1月12日 「新生座というのは、…(山本周五郎)
「新生座というのは、ずいぶん苦闘して来た劇団だ」官舎を出ると、署長は溜息をつくような調子でこう云いました、「新劇界ではくさわけとも云えるし、時流に媚びず、正しい演劇精神を守る点では稀な存在だった、本当に価値あるものが栄える時代なら、第一流として注目もされ、酬われもしただろう、然し悲しいことに日本では観客も批評家も新規を追うことに急で、がっちりと正道を歩く、じみな仕事には飽き易い、経営は楽にならないし、仕事はどこまでも研究的だ、そこで若い者はちょっと踊れるようになり人気がつくと、あきたりなくなってとびだしてしまう、もっとみいりがよくて、世評にのぼる派手な劇団へね、……よくけちがついた、悪い興行師に食われたのも度たびだ、不入り続きで半年も休んだり、幾たびも主役女優を抜かれたり、……然しは初めからの幹部たちはよく頑張ったよ、まったく悪戦苦闘というやつだったがね」
『寝ぼけ署長』新生座事件、山本周五郎
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