第8話 死亡フラグ

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 砦を攻める側と守る側。

 戦場。

 他地域より流れてきたオーガ氏族を中心にした不埒者共が、ルーサム家の砦を襲撃した。

 不意を突かれたのは砦側ではあったが、襲撃それ自体は予想していた。通常警戒の内だ。相手が誰であろうと、ナニであろうと同じこと。

 そしてルーサム領では領民りょうみんかい戦士せんし。砦に詰めていた私兵団はもとより、非戦闘員も当然のように即応する。


 アルとヴェーラは戦場を駆けるが、実のところ、彼らが砦に到着した時点で、既に戦の大勢は決していたと言っても過言ではない。砦側が襲撃者を撃退するのはほぼ確定していた。


 だが、そのことは攻め手であるギラル達も当然に理解していた。彼らの目的は砦に痛撃を与えることであり、砦を打ち滅ぼす気はそもそもない。大峡谷の道なき道を征き、少数で砦に一撃を与え、混乱の中でさっさと引く段取りだった。


 想定外。


 攻め手であるギラル達は砦の兵力と気質を見誤った。その為、引くに引けなくなり、泥沼の削り合いとなってしまう。オーガの勇者ギラルは今の状況を決して望んではいなかった。こうなっては、敵側の非戦闘員の犠牲が増えることもさることながら、自分達の全滅の可能性もチラつく。


 そして、自分達が撃退されることを理解しつつも、ギラルは戦いを止めることはない。こうなっては死中に活を見出すのみ。更に勇者ギラルは、己一人であればどうとでもなるという自信もあった。何なら自身が殿を務め、氏族の未来ある戦士を逃がすことすら考えた。


 当然のことながら、オーガ氏族の戦士達が、彼の提案を受け入れる筈もない。アルともまた少し違う……オーガ戦士には、正しく狂戦士の気質があるのだ。命令や指示だけで止まるものではない。


「(ふム。全滅は避けたかったガ、こうなっては致し方あるまイ。見誤った俺が悪イ。せめテ、氏族の戦士の最期を見届けるまでダ。……そしテ、この黒きマナが“敵”と判断する奴は、この俺が始末すル……ッ!)」


 オーガの戦士は勝つことしか考えない。だが、それは自信の表れや相手を侮っている訳ではない。思考としてそうなっているだけ。


 ギラルの顔は血塗れ。既に手傷を負っている。“敵”が手強いこと、自身が不利なことも理解しているのだ。


 実力に差があろうが、半身が千切れていようが、戦うとなれば勝つことしか考えない。負けることなど考えない。それがオーガ戦士の思考。


 ほんの少し前。つい先ほど。


 激戦区である砦の上から、彼は“敵”を確認した。アルを。


 刹那。


 ギラルは自身の顔に熱い痛みを感じる。


 片耳と頬の一部が削がれた。纏っていたマナを穿かれた。


 狙撃。


 オーガの勇者が特別に迂闊だった訳ではない。アルとヴェーラが先に彼を捕捉していたというだけのこと。


 そもそも、ヴェーラという観測手スポッターを擁しながらの『狙撃弾』を、死なずにギラルの方を讃えるべきだろう。


 そして、攻撃を受けたことを認識するやいなや、ギラルは単身で遮蔽物に紛れて動く。“敵”を認識した。もう間違いないと。己の中に巡る黒きマナの導きのままに駆ける。駆ける。


『アレは総帥の敵。敵は斃す』


 ギラルの中の優先順位が確定した。



 ……

 …………

 ………………



 アルがヴェーラを後ろから抱きしめるような姿勢で、真っ直ぐに指を標的に向けて差していた。


 狙撃手と観測手。


 流石にヴェーラは動揺していた。


 相手の動きを読み、周囲の影響なども考慮した上で彼女は狙いを定めた……が、結果は外した。外された。認識できるか否かというところで、相手のオーガは回避行動を取ったのだ。有り得ない反応。


「事前に察知してどうとかじゃなくて、まさか『狙撃弾』を“視て”から躱すとはね。思ったよりも化け物連中は厄介だな。狙いさえちゃんとすれば通じると思ってたんだけど……黒いマナもやたらと濃いし、王都で出くわしたあの気持ち悪いゴーレム使いとは桁違いか……」


 アルも驚いた。

 確かに敵との距離はお互いに目視できるほどであり、他の魔法でも『もしかすると届くのでは?』と思わせる距離だ。本来の『狙撃弾』の性能を十全に発揮できる距離ではなかったのは確か。


 事前にこちらの姿を確認されれば、完全に不意を突くことができない可能性も理解していたが、それらを踏まえた上で、ヴェーラの狙いはほぼ完璧。敵が遮蔽物から出てきた瞬間に着弾するように計算していた。狙い撃った。それでも殺しきれなかった。


「アル様。あのオーガを近付けさせないというのは私では無理です。時間稼ぎが関の山ですが……如何いたしましょう?」

「とりあえず、こっちも動き回りながら、まずはクレア殿の“眼”を潰そうか……連中に覗き見されてちゃ“戦えない”相手だ」

「承知いたしました」


 アルに対しては淡々と語っているが、ヴェーラは内心で、沸々と強敵への対抗心が芽生えている。


「(……一矢報いる)」


 それほどに彼女の感情は揺れた。悔しいと。主の信頼を受けての役割。それを果たせなかったことが悔しいのだ。これまでには無かった想い。感情の揺れ。

 さりとて、彼我の戦力差は彼女も十二分に理解もしている。敵の身体能力、反応速度はアル以上だと。ヴェーラがまともに戦って勝てる相手ではない。


「さて、追いつかれるのが先か、クレア殿の“眼”を潰せるのが先か……」


 一方のアルも昂ぶっている。度し難い悪癖の歯止めはもうない。マナはともかく、その感情は狂喜に震える。


 生きるか死ぬかの戦い。それを望んでいる。蛙の子は蛙。こちらも正しく狂戦士だった。


 

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 ……

 …………

 ………………



「クレア様。このままで良いのですか? 連中はルーサム家を本気にさせる気ですよ? あのネストリバカも神子に捕らえられ、既に前線付近まで来ているとも聞きました。後手後手では?」


 ダリルを連れ、“準備”のために魔族領との境……最前線付近にまで出張ってきたクレアだったが、ここに来てアテが外れている。


「くは……。まったく、最後の詰めに差し掛かったというのに、思わぬ所で蹴躓くとはな。だからこそ面白いとも言える。運命を相手取る戦いとはこうでなくてはな。くくく」


 人外の美しき化性。エルフもどき。古き者の成れの果て。


「笑いごとではないのですが……」


 ネストリと同様、クレアがただのエルフだった頃から付き従う、元・エルフのレアーナが憂う。の悪癖を。


 クレアは困難さを感じるほどにやる気を出す。順風満帆の計画通りをどこかで望んではいない。研究者気質。それをレアーナは知っている。いや、もはやソレだけが、クレアに遺された“クレアらしさ”とも言える。他は塗り潰されてしまった。彼女自身が望んだことではあるが。


 レアーナはかつての姉の面影に複雑な思いを抱く。在りし日の面影に出逢えたことは、妹としては嬉しいのだが……それは今じゃないだろと。計画の詰めに予定外のことなど要らないというのが、レアーナの正直な感想だ。


「ネストリは良い仕事をしている。神子を連れてくるのに違いはない。まぁ、あのやられっぷりには笑ったがなぁ」


 にやにやと厭らしく嗤う化性。

 手の者としては上位であるネストリ。その彼が手も足も出なかった、神子セシリーの暴虐を知っても彼女の余裕は崩れない。


「……ルーサム家と総帥達が今以上にぶつかれば不味いのでは? そちらは?」

「どちらかと言えば、そちらの方が厄介だが…………ふむ。なるほどな。ルーサム家を本気にさせる前に終わりそうだ。報復に出るにしても、多少の時間はあるだろう」


 一瞬、何処かに意識を逸したクレア。

 眷属からの情報の吸い上げ。大体は自動的に集積されていくモノを後に確認という流れだが、意識を集中すれば、ほぼリアルタイムでの状況把握も出来る。


 クレアが情報を確認したことをレアーナも気付く。


「……既に手の者を配していたのですか?」

「ふん。念の為にな。最前線以外で戦闘が起こるとすればあの砦だからな。あくまで情報収集のためだけだっただが……潰されたわ。くくく」


 またしても悪癖だ。想定外のことが起こったのだと……レアーナはそちらにも気付く。


「潰されたとは……? 眼として配置した者が全滅するほどの激戦だと?」

「違う。ファルコナーの小僧だ。こちらの手の者を正確に認識して排除しおった。深く潜ませていた者もだ。既に大勢は決していたから、別に構いはしないがな」


 クレアはアルの意図を認識している。こちらが“視ている”ということを知っているのだと。その事はネストリからの情報で……迂闊な神子セシリーポンコツが知らせてくれていた。


「くは。涙ぐましい努力だ。小僧はもはや遠当ての魔法を隠していない。恐らく、ワタシが視ていることを知り、印象付けるつもりなのだろうさ」

「……遠当てに注意を向けるためだと? つまりはそれ以外の切り札がある?」

「確かに奴の遠当ての魔法は脅威だ。その成り立ちや仕組みも興味深い。是非ともくわしく教示願いたいものだ。だが、ここ最近はあからさまに見せ過ぎている。くく。ファルコナーの本領は、オーガをも凌ぐあの馬鹿げた身体強化だ。真正面から不意を突くための撒き餌……といったところか」


 せっせとそんな仕込みをしているアルのことを想うと、クレアには微笑ましいものが込み上げてくる。それはいつもの厭らしい嗤いではなく、子供が頑張って背伸びをするのを見守る親心のようなモノ。


 しかし、妹の想いは違う。

 果たしてそうだろうか? レアーナの疑問。

 アルバート・ファルコナーの情報は彼女も得ている。戦いについては決して侮れない相手。それほどの者が、そこまで単純な撒き餌行動をするだろうかと。


「……クレア様。念のためにファルコナーの者に専属の眼を付けるべきかと……」

「くくく。相変わらず心配性だな。しかし却下だ。小僧に気取られぬほどの者を見張りで浪費はできん」

「では、奴を始末する許可を。“外”の理を知る者として、クレア様が奴との対話を望んでいるのは知っていますが……もう良いのでは? 神殺しが成った際には、もう“外”の世界との接点も無くなる筈です。神を殺したい……その上で、神の差配によって得られる“外”の理も知りたいというのは、強欲に過ぎるのでは?」


 神殺しを望む恨みつらみの集合意識は、神殺しがなった後の世界に興味などはない。しかし、集合意識の憑代よりしろたるクレアは違う。この世界の理に飽いている魔道の研究者。別の世界、理に興味を抱いている。それが僅かに遺った“クレアの残照”。


 本音では、レアーナはクレアの興味を優先させてやりたい。しかし、神子という異常個体が揃うこの機会を逃すと、神殺しなど夢のまた夢だ。それはすなわち、クレアがこの先も憑代から解放されることがないということ。


「くははッ! 言うじゃないかレアーナ。くく。確かにな。アレもコレもは欲張り過ぎか。まずは神殺しを優先させるとしようか」

「では……?」

「よかろう。そうまで言うなら、小僧を始末する許可を出す。お主に任せる。だが気を付けろよ? ビクターを殺した際の小僧は、紛れもない強者だった。遠当て……外の世界で言う“銃”とやらを模したあの魔法よりも、近接戦闘こそが奴の本領。迂闊に近付くことも、大幅に距離を取ることも厄介な奴だ」


 クレアの探求は外の世界に及ぶ。

 はじまりは純粋な疑問。エルフの集落を飛び出し、世界を放浪しながら、伝承の矛盾などを追うだけだった。外法にまで手を出し、冥府のザカライアの眷属となった後は、彼女は多くの記憶持ち……女神が外から喚んだという、アルの同類たる使徒であったり、無理矢理に“物語”の記憶を植え付けられ、強制的に現世を彷徨う羽目となった冥府の王側の使徒などを取り込んで来た。


 その中で、彼女はの外の世界を知る。元々は神殺しなど大層なことを考えてはいなかった。ただただ、特異な個体の話を聞き、時には契約により記憶を共有し、己の知識欲を満たしていただけのこと。


 いつの頃から、取り込んだ者達の意識に引っ張られて、神殺しや託宣を引っ繰り返すことに傾倒していったのだが、それでもどこかで“クレア”としての探求心が遺っている。深いところで燻り続けている。


 外の理とこの世界の理を融合させた魔法。


 そんなモノを編み出したアルに興味を惹かれるのは、かつてのクレアであれば当然のこととも言える。


 外の世界の記憶や知識を得たのは確かだが、クレアではこの世界の理に落とし込むことが難しかった。外の理のいくつかをこの世界の魔法で再現することも出来たが、それらは実用には遠いモノ。この世界の魔法の代用にすらならなかった。


「……承知いたしました。もし、可能であれば眷属化して引き摺ってきますが……あまり期待はしないで下さい」

「まぁ期待はしないさ。お主が慎重なのは承知している。小僧は稀有な例ではあるが、他にも特異な個体は居る。神の居なくなった世界の行く末を見守りながら、そんな奴らを訪ねていくのも一興よ」

「……ふふ。昔のように、ただ興味の赴くままの探求の旅をするのも良いでしょうね」


 クレアはレアーナがしくじるとは思っていない。

 それはこれまでに集積した情報の分析による比較。

 そもそもレアーナは契約で縛られたままのクレアに匹敵する程の実力者。流石にネストリを完封したタガの外れた暴力装置神子セシリーに真正面から挑むのは厳しいだろうが、絡め手を使えば十分にやりようもあるほど。手も足も出ないという訳でもない


「ふっ。ファルコナーの小僧の魔法は油断ならぬが、お主なら正面から防ぐことすら可能であろう」

「……決して油断はしません」


 レアーナには人外としての傲慢さは然程ない。強大ではあるが、あくまでもクレアほどではないという自覚があるが故に、慎重さを残していると言える。


 ただ、彼女は前提条件を見誤っていた。神殺しという目的に注力するなら、確実性を取るなら、アルのことなど放置しておけばよかったのだ。それに、クレアの手元には札が幾つもある。レアーナ自分という札を無理に切る必要はなかった。


 アルバート・ファルコナーという鬼札相手に、まともな手持ちの札を切るのがそもそもの間違い。


 そして、何よりもクレアとレアーナは致命的なミスをした。この世界の多数には理解できないことではあるが、アルであればしたり顔でツッコんでいたことだろう。


『この戦争が終わったら……』


 そんな事を口にした。外の理では、それは死亡フラグだ。



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 ……

 …………

 ………………



 瞬間的にナニかが弾かれる。


「ガァァァッ!!」


 巨躯のオーガ戦士。ギラン。

 その両手には大振りな両刃の斧。柄も長く、両手で構えて振るうのが当然のモノを片手で悠々と振り回す。


 彼がその凶悪な斧を振り回す度に、『銃弾』と『縛鎖』のマナの構成が壊される。


 クレアの“眼”を潰してから……とアルは考えていたが、途中経過であっさりとギラルに追い縋られる。『銃弾アル』と『縛鎖ヴェーラ』の連携によってある程度の距離を保てているが、それも時間の問題というところ。


「(まったく。まだ三つほどクレア殿の“眼”が残ってるのに……)」


 アルはクレアの不意を突くための仕込みとして、“いま”の本気を見せたくない。恐らく、本気でやれば、真正面からでもクレアの不意を突けると考えているのだが、あくまでも思い付きのようなもの。いきなり“覚醒”するなど、アル自身も思ってもみなかった時からの仕込み。


「(うーん……思い付きだったけど、オルコットの領都へ着く前からだし、割と前から仕込んでたからな。今さらなしにするのも……そろそろ殿だろうし……勿体ないよな)」


 ぼんやりとそんな考え事をするアルだったが、ヴェーラにはそんな余裕はない。


 大斧だけではなく、その体捌きも『縛鎖』の反応を余裕で凌駕している。手数を持って、三次元的に囲い込むような攻撃でないと、敵に防御や退避行動を取らせることも出来ない。ヴェーラだけであれば、とっくに踏み込まれている。


「ア、アル様ッ! 眼を潰すのか、オーガを相手にするのかをッ!!」


 適宜『銃弾』を相手が嫌がる箇所に正確無比に放ってはいるが、主たるアルの余裕な態度にヴェーラはイラっとしてしまう。以前ならその泰然自若とした姿に頼もしさを感じたのだが……彼女は知っている。分かってしまったのだ。


「(いまのアル様は……何か……子供じみた拘りについて悩んでいるッ!)」


 そう。流石にその内容までは分からずとも、アルが真剣に悩むほどでもないことを悩んでいることが、ヴェーラには筒抜けだった。以心伝心の悪い面が出た。


「ん……そうだな。とりあえず眼を潰す。ヴェーラ、きっかけは作るから距離を取るよ。その間に“眼”を狙撃する」

「し、承知しましたッ!」


 方針が決まった。


 その瞬間、放たれるのは『銃弾』の雨。


「ぐぅおッッッ!!!」


 躱すのは下策と看破したギラルは、足を止めて耐えるという選択を取る。

 凝集された黒きマナがその身を守る鎧と化す。


 ギラルが足を止めたのを確認する前に、アルとヴェーラは一気に離脱して距離を取る。


「……ぐうぅ……また距離を取られたカ……」


 荒れ狂う『銃弾』の雨はそう長い時間ではなかったが、敵を見失うには十分なほどに足を止められ、距離を離されたギラルは辟易する。『銃弾』を受けきった後も彼に致命傷はない。


 マナの鎧を貫いた『銃弾』は数えるほどであり、それすらもかすり傷程度。ギラルはそのほとんどを完全に防いだ。真正面から。


 オーガ種族のその肉体は頑健であり、魔法については、ほぼ身体強化に全振りしているという事が多い。それを踏まえた上でも、ギラルはオーガ戦士の中でもモノが違う。総帥に与えられた黒きマナによる増強もあるが、仮にその増強がない素の状態であっても、アルの『銃弾』の雨を凌ぐことが出来たほどだ。


「奴らには他に標的がいるようだガ……そちらを優先しているということカ。ふっ。馬鹿にされたものダ」


 流石にギラルにも敵の動き、その意図は理解できていた。だが、目の前に居る自身よりも他を優先されるなど……オーガ戦士としては許せることではない。


「……必ず仕留めル。待っていロ! ……ガッ!!?」


 オーガの勇者ギラルが決意を新たに、アル達の追撃に出ようと一気に動き出したその時、足が引っ掛かっていきなり前のめりにつんのめる。そして、そのまま勢い余って派手に建物に突っ込むという醜態を晒す。


「ぐ……!? な、なにガッ!?」


 それは『縛鎖』の『視えざる鎖』。『銃弾』の雨に紛れてヴェーラがそっと足元に設置した置き土産。


 アルの態度にイラっとしつつも、一矢報いる好機だと彼女が仕掛けた。その結果を直接確認することは出来なかったが、ヴェーラの目論見は値千金の仕事をした。


「グ……ッ! クソガァァァァッッッ!!!!」


 もっとも、その置き土産によって、ギラルから羞恥と怒りを引き出すことになったが。



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次回は5月20日 午前7時です。

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