第150話 まだやるのー!?

 記憶をまさぐる私。もちろん、人から注意を受けたことなど数えきれないほどある。軍にいた頃は、教官から理不尽な注意を受け続けた。大通りで商売をしていた頃は、警察やお客さんに何度も説教をされた。だが、生活のこととなると話は別。最後に注意されたのは、確か孤児院にいた頃だったはず。


 言いようのない不思議な感覚。その正体がわからず、私は困惑していた。


「……さん。……魔……さん。魔女さん!」


「へ!?」


「僕の話、ちゃんと聞いてますか?」


「あ、ご、ごめん。ボーっとしてた。で、何だっけ?」


 私の反応に、彼はむうっと軽く頬を膨らせた。


 ……可愛い。


「とりあえず、今から掃除しますよ。シチューを作るのはその後です」


「……え?」







 うう……掃除って面倒。


「魔女さん。ほうきはもっと丁寧に扱ってください。ほうきが傷んじゃいますから」


「……はーい」


 どうして、私は、初対面かつ年下の男の子に掃除の指南を受けているのだろうか。最初はシチューを作ってもらいたかっただけなのに。


「ふんふんふーん。あ、魔女さん。床掃除が終わったら、次は壁も掃除しましょう。結構汚れが染みついちゃってますし」


「えええ!? まだやるのー!?」


「もちろんです」


 ニコニコ笑顔で私にそう告げる彼。


 どうやら、とんでもない子を家に連れてきてしまったらしい。

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